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俺の戦記  作者: かな河
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74話 戦争と宗教

 僕は人がいないことを確認すると仮面を外し汚物を吐き出す。すると後ろのほうから声をかけられる。

 「どうした。本物の戦場を見て怖気づいたか。」

 振り返ると藤田がいた。僕は返す。

 「あまりの死人の多さに少し、吐き気がしただけです。」

 「そうか。ただ覚えておけ。これはただの戦ではない。宗教戦争だ。こちらの兵は正規兵を除いて全員信者だ。信者たちは死に来ている。」

 「だとしてもこれほどに殺す必要はあったのですか。」

 「ある。この土地の民がどれだけ疲弊しているのかはわかっているのだろう。いくら作物が豊富にとれても貴族の下らぬ戦と趣味のために税を大量に徴収される。小役人どもは腐敗しきっているためその重税の上にさらに賄賂を要求する。そして払えなければ殺される。これが何百年と続き、さらに数年前から頻発する天災でここの土地の民は疲れ切っている。」

 ここで僕は感情が激高し大野からの命令を忘れてしまう。

 「だからってこの農民をわざと大量に殺し、ほとんど無抵抗の農民を殺させることで敵の精神を壊すなんて作戦を立てていい理由にならない。」

 「分かっている。がしかしお前ならどうする。この腐っている国を作り変えるのにはどうする。それともお前は長いことあちこちを見て回り役人の腐敗に気がつかなかったとでもいうのか。」

 僕は何も言い返すことができなくなった。確かに今まで僕はきれいなものしか見てこなかった。いや、見ようともしないでいた。藤田がまた言った。

 「確かに俺は天下を取りたいという自分の野望のために動いている。でもそれでも俺は確実に農民この国を作り変えて見せる自信がある。」

 僕が何も言い返せずにいるとまた藤田が言った。

 「そろそろ皆のところに戻るぞ。仮面をかぶれ。」

 そういうと藤田は去っていった。僕も慌ててそのあとを追う。藤田は占領した城に入る。城の中でも敵は抵抗したのだろう。あちこちに死体が転がっている。敵のもあるが圧倒的に農民のものが多い。一番上まで行くとそこは会議室になっていいて、僕と同じ仮面をつけたものが3人ほど待っていた。藤田と僕が部屋に入ると一人が部屋の戸と鍵を閉める。それを見て藤田が言った。

 「全員、仮面をとれ。このままでは話ができない。」

 全員が一斉に仮面を取る。それを見て藤田がいった。

 「ここから先、当面の間お前たちは民政についてやれ。お前たちの用意は知っている。だからそれを実行して成功させろ。俺はこのまま信者を率いて支配地を増やす。」

 そういうとこの会議は終わった。僕たちは各々、夕食を取ると法律や支配体制の確立に向けての準備に動き出す。その間に藤田の信者が大量にこの城にやってくる様子を僕は見た。そしてこの藤田という人はただの怪しい宗教の教祖ではなくものすごい大物ではないかと思うようになった。




 俺は松本家を呼び戦後処理を行う。といってもほとんど処理の終わった後のような状態だからただ単に捕虜の受け渡しを行うだけである。それがすむと松本がやってきて話しかける。

 「今回でついに全城を攻略したわけですね。あっという間でしたね。」

 俺が返す。

 「この後、俺はどうすればいいでしょうかね。特に野戦軍もいないと城を攻めるしかなくなりますけどそれだと内輪もめになりそうですしね。」

 松本がしばらく考えてから言った。

 「野戦軍はいませんが実は梅田家の担当になっている城に二つの城が連携している城がありまして、ここを手伝ってもらうのはどうでしょう。」

 「梅田家からの援軍要請が来ているのですか。」

 「さすがにそこまでは来ていませんが一度、堅城に着き攻略を諦めるという趣旨の手紙が届きました。なので今回、こちらから援軍の話を持ち掛ければ乗ってくるかもしれません。」

 「そうか。その話を持ち上げておいてくれ。詳しい条件はこちら側で話し合って決める。」

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