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俺の戦記  作者: かな河
73/132

73話 藤田 悠希

 僕は吉田の部屋に行く。そこでは吉田が黒いマントと白い、眼の位置に穴が開いているだけの仮面を持って待っていた。吉田が言った。

 「とりあえずこれを着てみてくれ。」

 「分かった。」

 僕が上に羽織ると長さを調節し始めた。

 「そのまま、動かないで。時間がもったいないから今日の儀式についての説明をしながらやるぞ。」

 「分かった。」

 「俺たちは今から国を作る。もちろんそのためには政治などいろいろと準備がいる。ただ一番大事なのは武力だ。武力がなければどんなに良い制度があっても外圧によって一瞬で滅びる。だからこそ軍隊の整備を行った。だけど人数をごまかすことはできない。金の少ない我々が巨大な常備軍を持つことは不可能だ。だから皇室信仰を利用して農民を戦力として利用することにした。そのためには信仰心を深くする必要がある。だから毎月のように大規模な儀式を行ってみたり、我々が地方にまわり農民の生活を向上させてきた。ただ今回はそういった儀式の一つをやるわけではない。今回は決起集会だ。我々は挙兵する。本当ならもう少しお前のことを見極めてから行いたかったのだが農民たちの要望をこれ以上先延ばしできない。」

 ここまで吉田は言い切ると僕の顔を見る。吉田は一つ呼吸を置いてからいった。

 「ここから先、お前は我々を裏切るということはできない。お前の命を人質にこういっているのではない。お前の正気を人質に取っている。狂いたくなかったらお前は裏切れない。」

 少しの間、無言の状態が続く。「パチン」というはさみの音がしてマントの調節が終わる。その音と同時に僕は思考の世界から現実に引き戻される。僕は言った。

 「分かった。」

 吉田はその言葉を聞いて少し安心したような表情をする。それから今日の儀式の僕の行動についての説明を受けることになった。

 日が暮れた後、儀式は始まった。場所は町の市場である。この市場は決まった店があるわけではなく、売りたい人が商品を持ってきて地面に置き、それを客が買うという場所だから、市が開かれていないときは何もない広場になる。ここには1000人近くの信者が集まっている。あちこちで篝火がたかれている。僕、藤田、吉田、野村、塚田は舞台のようなところの上に並んで立っている。全員、白い仮面、黒い仮面をかぶっている。中心に立っている藤田がゆっくりと前に出る。周りにいる信者は何一つ音を立てない。藤田は仮面を静かにとる。そして抑揚がない低くよく通る声で言った。

 「時は満ちた。今は我々が先祖のもとに向かう時だ。子に安住の地を残すために」

 藤田はそれだけ言うと落ち着いた足取りで舞台を降り信者のほうに向かう。僕たちは藤田の後ろを歩く。信者は藤田が前に来ると二つに割れ藤田に道を開ける。その中を藤田は通り抜けると道に出る。僕たちの後ろに信者たちがついてくる。歩いていくとどんどん人が増えていく。ほとんどのものは武装も何もせずについてくるが中には鎧から刀までしっかりと持っているものもいる。町の中を歩き続ける。そしてここらの領主の居城の近くに来る。どうやらこの軍勢の情報を手に入れたらしい。軍を引き連れてまっていた。藤田が足を止める.向こうの軍と向かい合う。向こうは鬨の声などをあげこちらを威嚇する。藤田が小さい声で何かを唱え始める。それを聞いて後ろにいる農民も同じことを唱えだす。藤田が手を上にあげる。そして手を振り下ろす。すると農民が前に動き出す。敵は構える。静かに敵に農民たちはぶつかった。何も勢いをつけずに、無策に突っ込んでいく。もちろん農民は切り殺されていく。しかし気にする様子もなく、後ろから突撃を続ける。ついに何人かの敵が崩れる。そのままそこから敵の軍は崩れる。あれは大野の軍でも崩れるだろう。なにせどこも同じ圧力をかけ続けるから援軍を回せないのだ。さらに死ぬことを恐れない兵だから押し下げることもできないでいる。ついに敵兵を破る。そして戦は終わった。

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