72話 藤田 悠希
僕たちはひたすら話を続ける。おもに担当がいなくて話が進まなかった法律の分野について話し合っているのだが話題が変わりほかの分野に話が及ぶこともあった。しかしそれでも僕たちは二日ほどほとんど寝ずに話し、公布する法案の原案をまとめ上げる。基本的に大清帝国時代の法案と同じだが軍事系の法案と皇帝の権限については大幅に変更をした。本当ならもっと変えなければならないところがたくさんあるのだがとりあえずは本当に必要だと思われるところだけを優先的に議論して原案をまとめた。僕はもっと話したいことがあるし、体力もあるのだが残念ながら塚田たちが明日のほうが大事だといいその場を無理やり切り上げた。
次の日、僕は八時ぐらいに起きる。朝ご飯を食べようと食堂のようなところへと向かう。そこでは藤田が待っていた。
「悪いな。こないだの時伝え忘れていたことがある。今夜集会を開く。大事な集会だから必ず参加しろ。」
「分かりました。」
「場所や詳細については吉田から聞くように。」
それだけ言い残すと藤田は去っていった。どうやら昨日、言っていた大事なことはこのことのようだった。僕は食事を済ませるとこの後について気にかかり吉田たちを探す。しかしどこにもいない。仕方ないので屋敷の中にいる人間にどこにいるかを聞く。誰に聞いても「儀式の準備です」としか言わない。それ以上の情報は知らないといったような感じであった。仕方がないので町に出る。町では異常とも思えるような人が集まっていた。しかし騒ぎの一つも起きない。それどころかほとんど物音もしない。町全体が何か大事な儀式を前にした宗教施設のようになっている。市場の商品を見てもすっぽんなどの薬用の食材を残し、肉、魚といったものはなくなっている。代わりに野菜や穀物といった類のものを前面に出して商売をしている。僕はぐるりと町を一周すると屋敷へと戻る。あのまま町を歩き続けるのにはかなりの勇気が必要だ。僕は自室に戻ると刀を取り出し、庭に出て素振りをする。余所者に対して危害を加えようとする雰囲気ではなかったが少し体を動かさなけばこの不安は取れそうにもなかったからだ。二時間ほどそのまま刀を振り続けると気が静まってきた。そのあと昼食までの短い時間この屋敷で保管されている書物を読む。ここに保管されている書物は藤田が大清帝国時代の宮殿から希少で内容が良い書だけを選び抜き、持ってきているため数自体は少ないものの質は高い。もちろんこちらについてからも書物の収集はしっかりと行っていたようでよく出回っているものので内容のいいものも保管されている。区切りのいいところまで読むと昼食に向かう。食堂に行くと吉田がそこで待っていた。
「よかったよ。町で食事をしてきてしまってここで待っていても会えないかもしれないと焦っていたよ。」
と向こうが切り出してくる。それに対して僕がこう返す。
「よかった。こっちもちょうど探していたところだよ。藤田様に言われて吉田を探したよ。」
「知っている。そのことでこっちも探していたんだから。飯を食べ終わったら俺の部屋に来い。」
私は残党狩りが終わった後、私の支配下にある兵力のうち生き残った者の中で自警団や志願兵といった者の中の一部を警察力として利用して、ほかを軍として私が鍛えなおすことにした。法律は今までの盗み、殺人、の二つのみを取り締まるものではなく、大清帝国時代のものを基本的に流用することにした。ただし禁固刑はなく変わりに私の支配下の地域からの追放とすることにした。次に行ったことは食糧不足に対する対応で食糧はすべて配給制として配給以外の食糧の売買に関わったのものは全員、
追放処分とした。配給で配る食糧の出どころは私たちが同盟を結んだ国との条約により輸入したものを使う。金の出どころは新たにとることにした所有している土地ごとにかかる税金をもとにしている。足りない分は宮廷内にあった装飾品を売り払い得た金で補う。基本的な支配体制はこんなものであとは私がこの土地を支配していることをほかに伝え、名を広めていくだけである。




