66話 仕上げ(2)
私は中野と黒田と作戦の最後の部分である人選の話を進める。私は言った。
「先鋒は誰に努めさせる気だ。」
中野が答える。
「先鋒は自警団と新兵とわが軍の古参を混ぜながら戦わせるつもりです。」
「なぜだ。もう一つの勢力、元盗賊たちはどうして起用しない。」
「それは裏切りの恐れがあるからです。三つの勢力を混ぜるのも同じ理由です。」
「なるほど。しかし他勢力との連携はうまくいかないものだ。だからどこか一つの勢力から選べ。」
そこで黒田が口をはさむ。
「盗賊たちの裏切りは考えなくてもよいと思います。」
私はそれを聞いて少し疑問に思い聞いた。
「なぜそう考えたのか。」
「盗賊たちは傭兵崩れのものが多く自分たちの名誉を気にします。だから武家の誉れである先鋒に命じられているのに裏切りを行えば敵を恐れたとほかの傭兵や軍に思われると考えます。あの者たちはそれを嫌うので裏切ることはないと思います。」
「本当にそうか。私は傭兵崩れの盗賊どもにそのような羞恥心があると思えない。」
「そうとも言えません。実は盗賊の多くは王家が逃げ出した後、この街の覇権を握りに来たものが多くいます。しかし補給などが持たず盗賊や強盗になったもが多く、いざ戦いになったらちゃんと戦働きを行ってくれると思います。」
「なるほど。中野この意見を踏まえて意見を述べてみろ。」
「分かりました。ならば先鋒は盗賊の出のものに任せようと思います。その後ろは自警団につかせればよいと思います。」
「待て。なぜそうしようと思った。」
「あちこちに古参の兵を作戦の予備兵にしておけば不測の事態に最大限に備えることができるからと思ったからです。」
「だめだ。先鋒の者たちが裏切った場合はどうなるか考えたか。」
「すいません。考えていませんでした。」
「なら考えろ。先鋒が崩れると軍が崩れる。万が一のこともあるからそのこともしっかりと考えてから答えろ。」
中野がしばらく考えてから答えた。
「分かりました。わが軍の古参をつけようと思います。」
「どのくらいの数だ。」
「全軍をつけるのよいと考えます。」
「だめだ。半数だ。もう半数は先鋒の裏切り以外の不測の事態に備え、手元に置いて置け。」
「しかしそれでは現場の兵力が不足しませんか。」
「ここらで手に入れた新兵や盗賊以外でもわが軍に降伏してきた勢力があるだろ。そいつらの配置すればよい。」
「分からいました。」
「黒田、何か意見はあるか。」
「今のところありません。」
「なら良い。この後は詳細な部隊配置を決める。」
このようにしてさらに詳細な部隊配置を決めていった。それからすべてが決まり、さらにはそれを全軍に伝達し準備が完了するまでに三日がかかった。わが軍の総勢は600人。しかし戦力として期待できる者は300人ほど。さらにその中で特に信用できるものは100人ほど。烏合の衆といってもよい。それでもそれに対応できるように作戦は練ってある。指揮官は前回同様、私と中野と黒田だ。しかし前回と違い黒田は完全に中野とは別の部隊の指揮をしている。いい加減、黒田のことを信用してもいい気がしてきたからである。もちろん、二人の前では言っていないが黒田が裏切った場合と中野がしくじった場合に備えた策も用意はしてある。
最近、会話シーン書いてないなという気がして無性に書きたくなって予定外の軍議の場面を入れてしまいました。自分で読み返してみたのですがなんか軍議が中途半端なところで終わってて気持ち悪いですね。次話は今週中にもう一話のつもりです。無理だったら来週の金曜あたりになると思います。




