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俺の戦記  作者: かな河
63/132

63話 あと一つ(4)

 俺は敵との戦闘をうまく切り上げ城門をはさむ形でのにらみ合いをおこなう。そしてにらみ合いだけで一日がおあわった。しかし城門の前で野営の準備を始める。本当なら下に今すぐ戻って安全な場所で野営をしたいのだがこの状況は捨てるのにはもったいない。したがって兵には無理を強いることになるが敵のすぐ前で野営をおこなう。兵は半分ずつ入れ替えで休ませる。今回は日が沈む前から休ませることにした。なぜなら夜襲をかけるために一晩おこし続けたのだから相当に疲労がたまっているからだ。その晩は何も起きなかった。たぶん前方の盾兵を下手に動かすと城内に我々の侵入を許すことになるから向こうも動かせないのだろう。このままでは我慢勝負になってしまい、こちらが負ける。向こうは城がすぐそこにあり城壁に守られているわけだから警戒するべき場所が少なく済むがこちらはまともな遮蔽物がないので全方位を気にし続けなければならず疲れがたまりやすい。こちらから早いこと何か動きださなければならない。とりあえず火矢を敵の城に向かって打ち込み続ける。さらに手元にある小石を盾兵に向かってひたすら投げ込む。城門が壊れているおかげで敵の城の中の様子がわかりやすい。投石に関してはあまり効果はなく、火矢に関しては中で大量の水を使い鎮火作業がうまくいっているようだ。水源をうまく見つけて何か工作ができれば良かったと深く後悔する。しかも敵の弓兵が出てきて城壁の上からこちらに向けて撃ってくる。人数はそこまで多くないのでこちらからも弓を敵に向け撃たせ対抗する。しかし向こうは高所の利を持っているためこちらの弓は満足な威力を持たず、さらに向こうの力強い弓をこちらは受け続けた。俺はたまらず軍の位置を五十歩ほど下げる。ここまで来ると簡単には敵の攻撃が届かない。しかしここにいるのでは不利な位置であるのには変わらない。しかしゴロゴロと大きな石は転がっているし太い木も大量に生えている。これは幸い。これを利用しない手はない。山のふもとで練習してきてよかった。さらに五十歩退却すると俺はすぐに兵士に命じて木を切らせ、でかい石を集める。そしてその日の午後には投石機を2台ほど完成させる。日が暮れないうちに俺は兵に命じてそれをもともと城門のあった場所の近くにまでもっていく。城門はまだ修理が終わっておらず盾兵がそこで待ち構えていた。さらに弓兵までも一緒にいる。しかし関係ない。城壁ごと岩を使って破壊して中に突入すればいい。そうすればあとは山岳戦のようなものであろう。

 「城壁の上の部分に向けて撃て。」

 俺は兵に命令を出す。まずは弓兵と城壁を一緒に破壊してやろうという魂胆だ。しかし問題が起きた。

 「大野様、岩を撃つのが山の斜面では難しく城壁にぶつけるのが精一杯です。どうか命令の出し直しをお願いします。」

と兵に泣きつかれてしまったのだ。けっしてそこまで急な坂ではないのだがてこの原理を使い飛ばしているだけなので着地点の調整はもともと難しく、さらに坂になると少し動かしただけで着地点が大きく変わってしまい狙いを定めることはできないようだ。仕方ない。俺は多少の犠牲覚悟で今度は城壁に当てるようにだけいう。すると今度は何とかできるようになったらしくひたすら当てまくる。徐々に城壁にひびが入りだす。しかしそれを見た敵はついにこちらに向けて攻撃を仕掛けだす。俺は慌てて手の空いている兵士に向かって指示を出す。

 「投石機を絶対に守れ。投石の邪魔をされるな。」

 敵とぶつかり合う。しかしこちらに盾兵がいない以上明確な前線というものを作ることができない。俺は投石機の周りを囲うように三重の兵士の層を作らせる。一番前の兵士は自由に前に出て、二番目の兵士は投石機に近づいてくる兵士を切らせる。そして最後の兵には二番目がうち漏らした兵を切らせる。何とか時間をそうやって稼いでいるとついに城壁の一部が崩壊する。それを見て俺は兵にこういっった。

 「投石機を守るのはやめろ。目の前の敵をひたすら殺せ」

 徐々に敵の数が少なくなっていく。城の中から敵兵が出てくることもなくなってきた。

 「城の中に入れ。一気に城を奪うぞ。」

 俺は大きい声で兵に向けて伝える。兵からは「おう。」という声が帰ってくる。そして俺たちはついに城の中に流れ込んでいった。

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