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俺の戦記  作者: かな河
55/132

55話 潜入(2)

 ぼくは次の日、少し早めに起きる。とはいっても領土にいた時期と比べてという意味であり最近ではいつものことである。やることは主に剣術の練習である。旅を始めたときからやるようにしてきた。途中で賊に襲われても逃げれるようにするためだ。事務作業が中心で体が鈍ってしまい最初は素振りをするのもやっとであった。しかしそれでも半年かけてなんとか昔と同じ感覚に戻った。一通り型の練習をするとそのまま刀を鞘にしまい市場のほうに向かう。朝の少し早い時間帯である今ならちょうど入荷作業が終わりほとんど売れてもいないから物流の全体量を把握するのが容易になる。僕は市場のあちこちを見て回る。やはり戦火の影響か物流の量は少ない。しかし農業の盛んな南部であるだけあって食糧はかなり豊富である。しばらく見て回った後屋敷に帰る。屋敷では使用人と屋敷の主人が待っていて話しかけてきた。

 「遠藤殿朝は早くから調査とは研究熱心なことだ。」

 僕はこう返した。

 「そのための旅ですから、当然ですよ。」

 「もしかしてすでに朝食はとられてしまったかな。」 

 「まだですよ。しかしお気になさらないでください。自分で用意して今から食べますから。」

 「いえ、遠慮せずに。私はあなたからいろいろな話を聞きたい。だからこれから朝食をご一緒させてもらえればと思う。部屋に戻って待っていてくれ。市場で新鮮な食材を買ってくる。」

 そういうと市場のほうに向かっていった。僕はそれを確認すると僕のために用意された部屋には向かわず、屋敷の中を調べ始める。屋敷の構造はただの大きな特徴のない平屋である。こんなところに元皇帝を匿っているとは思えない。ただしほとんどの男の使用人が武術をやっているように感じる。20分ほど建物の中を見て回ると僕は自分の部屋へと戻った。部屋に戻ってしばらくすると外から人の戻ってきた気配がする。僕の部屋は玄関の近くにあり外から中に人が入ってくるとまるわかりなのである。それから10分ほどすると朝食の準備ができたという知らせを使用人が伝えに来た。そのまま使用人についていき食卓に行く。そこではこの屋敷の主人である吉田耕司と吉田と昨日、一緒にいた男とはまた別の男がいる。吉田が話しかけてくる。

 「ようやく佐藤殿がきた。では朝食にするか。」

 そういうと吉田は朝食を食べながら質問をしてくる。例えば

 「諸国を回っているときに見た中でどこの領主の法が一番良いものであったか。」

 「経済を回すにはどのような施策が一番か」

 といったものである。しかもこのような質問を休みなく続け、質問に対する回答が満足いかなければさらに掘り下げて聞く。少し専門用語を使おうというものなら

 「私は専門家ではない。あんまりわかりずらい表現をしないでくれ」

 といい言い直させる。そんなことを続けついに日が暮れるまでおこなった。そしてふと気がついたような顔をして

 「もう一日立ってしまったか。長い時間、拘束してしまいすまないね」

 といってようやく解放された。僕はふらふらとしながら自分の部屋へと戻る。こんなに疲れたのは大野が城を守るために山を焼きそのせいで大洪水が起きその後処理に追われた時以来である。僕はすぐさま布団を用意して寝る。その日の夜遅く、いや日付はもう変わってしまったかもしれない。何者かが玄関を開け、中に入ってくるのを感じた。しかし僕はあまりの疲れにそのまま寝てしまった。このことが僕の任務の、いやこの国の行方を決める一方であるとも知れず。

ごめんなさい、遅くなりました。次の投稿もどうなることだか怪しいですがまた次の木曜日にお会いできると信じていてください。たぶん何とかします。

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