50話 暗殺者(2)
「遠藤、別の場所に行ってもらえないか。」
僕は突然、大野に言われた。驚いて何も言えないでいると大野は不思議そうな顔をしてこう言った。
「なんで突然解雇された人みたいな顔してるの。」
「いや今、大野が解雇する的なこと言ったからだよ。」
「ん?」
なんと自分で行っておいて気がついていないらしい。確かに直接は解雇するといっていないけどどこかに行ってほしいなんて明らかに解雇されるときの言い方だ。もしかして直接的にやめろと言えないから自主退職城ということかな。なんて考えていると大野が何かに気がついたような顔をしてこう言った。
「違う。そういうことじゃない。それは勘違いだ。別の場所に行けとは解雇じゃなく今とは違う任務についてくれという意味だ。」
「分かった。そういうことか。」
焦った。紛らわしい言い方をするな。こっちは本当に解雇されるのかと思ったんだぞ。しかし大野はたいして気にする様子もなく話を続ける。僕もいちいち気にしない。大野は時々紛らわしい言い方をする。さすがに今回みたいな重大な場面では大野も気をつけるから少ないけれど。
「遠藤、いってきてほしいのは、大清帝国のというのはおかしいか、もうないからな。この島の南部地域にある漁港なんだ。」
「南部か。でも南部って特に大きな勢力はなかったと思うんだけどな。」
僕がそういうと大野はうなずいた。
「確かにそうなんだ。他の地域と違い大きな勢力はない。だけどというべきかだからというべきか宗教反乱によって大きな勢力ができそうな気がする。」
「分かった。つまりその大きな反乱を止めればいいんだな。」
「違う。そんなことはできない。できたとしても遠藤はその時は生きて帰ってこれない。だからその反乱の内部に食い込み、動きをこちらに牙をむかないように調節してくれ。何ならほかの勢力を潰してもいい。」
「何を言っているんだ、大野。そんなにその宗教反乱が危険なのか。現段階でそんなに大規模な反乱の報告はないぞ。」
「確かに小林家の情報網にまだ宗教反乱としては出ていない。だが元大清帝国の皇帝が自分を教祖とする形の宗教をちゃんとした体制に整えなおし戦争の準備をしている。これが問題なんだ。確かに今までにも皇室信仰はあった。それが引き金となって今の状況が作られているわけだしな。しかしその時に引き金となった貴族内での皇室信仰は統制派に皇道派が負けたことにより信仰していた貴族たちが死ぬか衰えるかしたのは知ってるだろ。」
「確かにな。だからこそもう元皇帝の動きは気にしなくていいんじゃないの。」
「遠藤。お前、今日はなんか鈍いな。まだ民間では残っていてろくな政治が行われず戦争も頻発している今、その宗教は力を待たないわけないと思わないか。」
ここまで言われてようやくわかった。大勢力がなく一度、宗教が勢いずいたら止めることができない南部で宗教が力を持ち始めたのに気がついた大野はそれを止めたいわけだ。確かに反乱の際にもう一つの重要な点である食糧も南部では豊富に生産されているためそれが理由で止まるということもないわけだ。そこを見抜いた大野はさすがとしか言いようがない。それでも一つ疑問がある。
「なんでこの反乱なんだ。他の反乱でも同じような条件を満たしているだろ。」
「ほかのところと比べものすごく慎重に反乱の準備をしている。さらにちゃんとした正規兵をもっているところだ。」
「なるほど。わかった。任務の期限は。」
「反乱が失敗に終わるまでだ。失敗してぼろぼろの状態になれば暗殺することもできる。そしたら暗殺して帰ってきてくれ。」
「分かった。」
こうして僕は大野の命を受け南に向かった。
ついに50話ですね。最初に始めたときはこんなに続くとは思いませんでした。さらに言うと誰もこんなの読まないだろ、くらいの気持ちで書き始めたものがいろいろな方に読んでもらいさらに評価やブックマークまでつけていただくことができ幸せです。今後も俺の戦記を読まれていただけると嬉しいです。長くなってしまいましたがこれからもよろしくお願いします。




