5話 石井 亘
俺は道をあるきながら石井 亘について遠藤にきいた。遠藤の話をまとえると石井は第二管理地区の管理主である。管理地区とは年貢の管理や小さな揉め事の解決する政治的な地区のことで管理地区内での警察権と司法権が管理主には与えられておりうちの領土内には3つある。管理主には管理区内で1番大きな農家の当主がなる。第二地区は他の管理地区に比らべ大規模な盗賊の対処といった大きな問題が起きた際に領主に直接、救援を求めることになっているがその数が少ないことや年貢の額が多いことからから遠藤が盗賊とつながっている可能性や圧政を敷いている可能性を感じ調査したらしい。そしたら新しい土地の開墾や盗賊対策の軍事訓練を行っていたそうだ。盗賊対策の軍事訓練はかなり効果的なもののようでその結果盗賊に煩わされることなく開墾を進めることに成功したらしい。しかし戦いを見たところ戦術はかなり悪かったらしい。俺は疑問に思ったことを聞く。
「遠藤。石井亘を部下に加えることについて軍の養成以外の目的はないのか。それだけなら今急ぐ必要なくないか?」
「いや急ぐべきなんだ。なにせ石井の養成は本当に必要だ。確かに大野がやったとしても同じレベルの兵を同じ期間で作ることはできる。しかし俺が用意できた兵はそれほど根性があるわけじゃなさそうだしたぶん大野のやり方だと逃げ出される。だから石井に指導してもらう必要がある。」
遠藤と俺はそんなことを話ながら第二管理地区にある石井家に来た。遠藤が門の近くにいた使用人のような格好をした人に声をかけた。
「すみません。石井亘さんはご在宅ですか?」
不審に思ったのか使用人らしき人はこう返してきた。
「どなたでしょうか?面会の予定などはしていますか?」
遠藤はこう返した。
「していません。しかし大野家に使えている遠藤と大野祐也が来たといえば会うと言っていただけると思います。」
「わかりました。今確認してきます。」
そう言って不思議そうな顔をして使用人は門をくぐり中に入っていった。一般的に領地内でも俺の名前を知っている人は少ないので不思議そうな顔をするのは仕方ない。しかし遠藤にこれは言わなければならない。
「大野の名前をあんまり使うなよ。これから交渉するというのに悪い印象も与えかねないし、そうじゃなくてもあんまりつかうなよ。」
「気にすることはない。なぜなら大野は一度盗賊に暗殺者を送り込まれてからというもの初対面のものや付き合いの浅いものとはできるだけ合わないようにしているらしい。どうしても合わないといけないときには武装するようにしているんだ。だけど付き合いが浅くても信頼しているものには会うときに合言葉のようなものを作って使用人をかえしてそれを伝えるようにいわれてるんだ。それが俺の場合大野家に使えている遠藤だということなんだ。」
なんと。そういうことだったのか。石井亘についてなにも知らなかったし救援依頼が少ないことにも気づかなくなんとなく少しくらい遠藤のことを叱ってウサを晴らしてやろうと思ったのにこれでは失敗だ。それからしてしばらくすると使用人がでてきた。中に入るように言われた。奥の部屋までとおされたそこでは背の高い少し痩せた男が待っていた。そしてその男が言った。
「お久しぶりです、遠藤さん。ところでもうひとりの男の方は信頼できる人なのですか?」
遠藤がいった。
「大丈です。彼は領主の大野祐也です。」
「そうでしたか。今回はどのようなご要件でいらしたのですか。」
「今回は石井さん登用したくそのことについて大野祐也とともに参りました。」
「私をですか。一体どのような理由で農家である私にそのようなことを言うのですか」
「あなたの盗賊退治の様子をみたことがあります。その際に兵の練度がとても高く調べてみました。そしたら石井さん自ら調練したと知り我が主に兵の調練役とした紹介させていただいたからです。」
「なぜ今の時期ですか。遠藤さんが私の兵の練度について知ったのはかなり前のことになると思うのですが。そのあたりについて大野様本人から伺いたいのですが。」
ここで俺はようやく話に混ざることができるようになった。
「この間中央の揉め事に巻き込まれ出兵したのだがその際に兵がほとんど全滅してしまいその補充で育成が必要になったからだ。」
「全滅したとしてもほとんど使われていない兵だったので補充を急ぐ必要はないでしょう。」
「気づいていないかもしれないが今まで防衛を依頼していたところは中央の揉め事で力を失い頼んでも来てもらえない状況だ。そしてこの地は半年のうちに攻められる可能性がかなり高い。」
「しかし我々農民にはあまり関わりのない話でしょう。」
「いやそうでもない。ここらで戦争が起きれば農地は崩壊的になるだろう。さらに敵軍はここらの住民を虐殺するだろう。それを阻止するためにここらの住民は一時的に城の中に避難してもらう。」
「小さな領主なのに内政もろくにせずに中央の政治に首突っ込むからそうなるのでしょう。我々農民は今からでもその侵略者に寝返ることができないか調べさせていただきます。」
さすがは農民である。彼らは、自らが受け継いだ土地を守ることを第一に考えるため領主がかわろうと気にすることわない。だからといってここで説得を諦めるわけには俺も行かないので話を続ける。
「内政をろくにしていないという言葉は必ずしも当てはまるわけではない。確かに遠藤が全面にでてやることが多いが盗賊退治などといったことなどはかなり積極的に参加している。さらに中央の政治に首を突っ込むという言い方は少しまちがっている。防衛のために結んだ同盟は双方支援型だから向こうから求められたら断ることのできない事になっているんだ。だから断れば結局攻められていた」
「そうですか。しかしたとえ私があなたについたところで農作物の刈り入れの終わったこの時期なんの得があるというのですか。」
「そうだな。第二管理地区の税率を半分にするというのでどうだ。さらに時間があるときは農作業ができるようにここらに将来的には練兵場を作るとしよう。」
「わかりました。それで良しとしましょう。しかしそれでは予算が持たなくなるのではないですか。」
「第二管理地区は開墾が進んでいるおかげで半分にしても黒字だよ。なにせうちは小規模な管理体制だからね。さらにいえば今まで払っていた防衛費がかなり浮くからかなりかねがあまるよ。まあもっとも来年までもてばの話だけどね。それから今日から働いてもらえるかな。」
「わかりました。ここから半年の間私はそちらにずっといることにしましょう。その間の農作業は父とせがれに任せるとしましょう。」
「本当にそうしてくれるのか。ありがとう。」
こうして石井亘を家臣に率いることに席こうした俺たちはとりあえず練兵場まで石井を連れていき兵たちに紹介しそれからおれは城がある山の方に遠藤は他の貴族との同盟を結ぶための旅へとでかけた。