42話 野戦(3)
ここまでのことを想定するとは敵もなかなかだな。俺も新たなやり方で攻めないとならなくなり次の手が思いつかなくて困る。少し前に遠藤に頼み大きめの弓を何本か届けてもらったのだがどうもこちらの射程距離は敵の射程距離内であるためこれも無理であった。次に敵の飲み水に毒を混ぜることを考えたのだがこれも失敗。敵の使っている水資源は地下の奥深いところからくみ上げている水のため同じ水脈にたどり着くことは不可能と判断した。今度は朝霧に紛れて攻撃を仕掛けに行った。その際に霧だけでは姿が見えてしまうので遠藤からもらった煙幕を利用してさらに視界を悪くした。しかしこれも結論から言って失敗に終わった。どこでばれたのかはまるで分らんかったが大量の投石が行われた。慌てて俺は軍を引き下げたので大きな被害はなかったものの敵に被害を一切与えることなく引きさがることになった。ここの城は大した重要拠点でもないのだからすぐに落として次に行こうと考えていたのだが予定が大きくずれてしまった。しかしここを落とさずに次に行くのは避けたい。一つは俺の軍人としての意地というものもあるし下手にほかの同盟国の軍がここを攻めて大きな損害を出す可能性を考えるととてもほっとけないのである。しかしここまで面倒な城はなかなかない。昔、遠藤とまだ兵法を学んでいたころに一度、問題で出されたことがあるだけだ。それ以来一度もこのような城にはあっていないしまさか現実に存在するとは思ってもいなかった。あの時はまだ、
「大野様。遠藤様からの手紙です。」
おい、珍しく真面目に話を進めて回想シーンに入ろうとしたのに邪魔するのか。しかし遠藤からの手紙なら後回しにするのはまずいかもしれない。俺は兵から手紙を受け取ると読み始める。内容は松本家からの依頼についてのことで小林家が収集している情報が集まってきたそうだ。だから急いで敵の遊撃軍を排除するようにと松本からせかされているらしい。遠藤からも七ヶ国同盟の間の信用問題が産まれかねないから急いで戦いを進めるようにと書かれている。普段は戦について戦っている途中には口を出さない遠藤がせかしてくるということは珍しい。手紙が偽装の可能性はないだろうかと疑ったがそれはないだろう。なにせほかの日は遠藤の筆跡がばれないように「異常なし」としか書かれていない。この長文でこの文字は遠藤の物に間違えないだろう。回想シーンに入っている場合ではないということかもしれない。仕方ない。最初のほうに見つけていた壊れかけている部分から攻撃を仕掛けてみよう。俺はその裏あたりに兵が配備されていて中に入ると襲ってくる。もしくは前にも書いたと通り飛び具を使い守るために設けられている場所なので、その施設の中に強力な弓部隊が配備されている気がしてならないので本当はあまり攻め込みたくない。なにせ城壁は壊れてるもののその施設自体は壊れていない。これは長いこと城を見ていてきずいたことでうかつに攻めなくて助かったというしかない。とりあえず敵に打ち殺されないようにちゃんとに盾を持つ。夜中まで待ち俺含めすべての人間の顔や鎧など外から見えるすべての部分を黒く染める。そして城の俺が目につけていたある部分に向かい動き出す。そこで大きな丸太を取り出し城の壊れかけている部分に向かいぶつける。しかしここで問題が起きる。どうやらばれていたようだ。城壁の上から大量に矢を打ってくる。俺はいそいで兵に盾を上向きに構えさせ被害を抑えようとする。さらに城壁の上に矢に括り付けた火薬をぶち込み何とか煙幕を張ることに成功する。しかしまだ敵の一部がうまいこと煙の外に出て矢を打ってくるので仕方なく地上にも張る。地上で張ると作業の進行が遅くなってしまうので使いたくはなかった。さらに闇夜に紛れるように黒く塗った体が白い煙の中では逆に作用し敵にもよく見えるのか地上に張った煙幕の効果は少し薄れてしまい結局盾を構え続けることになった。しばらくすると城門の破壊に成功し城の中に入る。




