41話 野戦(2)
俺はどこから攻め込むか考えながら遠藤からもらってきた煙幕用の火薬を取り出した。普段は金もかかるし遠藤が作るのが大変であるという理由であまり渡してくれないが今回は無理を言ってかなりの量をもらってきた。というのもこれから大きな戦は幾度となく起こるのはわかっているのに兵の集まりが悪くなってきているのだ。そもそもの人口が少ないのだから仕事に就けずに困っている人口なんて言うのはそこまでいない。さらに戦争が各地で起こることから混乱は多く起こっているがそれと同時に武器商人や鍛冶屋に多くの金が流れ、好景気になっているところも多くある。そんなことで兵の募集に応募する人数が減ってきているのだ。そもそもこんな因果な職に就きたい人は多くない。だから俺が少し交渉しただけで遠藤が仕方なく多めに持たせることにしてくれた。思ったよりも多く渡されたのでそんなに金があるのかと少し心配したがそこは俺が煙幕用の火薬をもらいに来ることを見越して鍛冶屋や武器商人にかける税を増やし帳簿のつじつまを合わせたらしい。その界隈から抵抗はあったものの遠藤が新たに支払わせる税を差し引いても今までよりも儲けているらしくすぐに静かになったという。そのことはおいておくとして俺は敵の城に向かい歩く。今回は敵にばれても構わないのでいつもよりも多く偵察を出す。いつもだったら敵にばれずに城の近くまで行き城の壊れかけている部分をついて落とすと考えるが今回はそれはしない。一つ今回はそのことを罠に利用されている気がする。それから理由としてはこちらのほうが多いがこの後に松本に頼まれている遊撃軍と戦うことになる。その際に今までのように城攻めにはなるわけがない。だから少し野戦の練習がしたい。俺が最後に野戦をおこなったのは皇道派と統制派との戦いが最後で、そのあとは偵察のための小人数の敵と戦ったや敵に遊ばれてただけで実際には戦っていないという展開しかない。ということで誘きだす意味を込めて今回は堂々とした進軍をしている。しかし一向に敵は現れることはない。ついに俺の軍は敵の城が見える位置まで来てしまった。これはもしや気が付かれていないのかもしれないと思ったのだがそんなことはなく敵はしっかりと弓矢を使い俺の軍ことを狙っていた。しかも敵の弓はこちらよりも射程が長いものだ。まずいな。多少の犠牲を気にしないで攻め込むという手はあるものの前に述べた理由でそんなことはできない。仕方ない。時間はかかるがこの方法で行こう。
「今この中にいる兵の中で大工から来たものはいるか。いたらこい。」
すると中から5人ほどが出てきた。兵の数は全部で50人くらいなのだからこの数はかなり多いだろう。俺は兵に指示を出す。
「ここから少し後ろに下がった場所から坑道を掘って敵の城門の近くまでほれ。」
「わかりました。しかし我々だけではとても数が足りません。」
兵が言ってきたので俺はこう返した。
「工期はできるだけ早くとしか言わないしほかの兵も使ってかまわないから頼む。」
「木材などはどのようにすればよいでしょうか」
坑道を掘っるだけでもいろいろ必要なのだな。
「遠藤に行って取り寄せる。必要なことはほかにもあるなら何でも言え。何とか取りそろえる。」
俺はこんな感じで兵との話を進めた。そして兵の必要だというものを取りそろえるための手配を済ませると工事の完成を待っていた。
問題はそれから20日程して起きた。俺は兵からそろそろ完成すると聞いて坑道から出た後どのようにして攻めようかと考えていた時だった。ものすごい大きな音がした。それからしばらくするとびっちょりに濡れた兵が報告に来た。
「大野様申し訳ございません。坑道が敵に見つかり水を中に流され破壊されてしまいました。」
俺は驚いた。それから少しの間何も言えなかった。どうやらさっきの大きな音は坑道が壊れ地面が抜け落ちた際になった音らしい。しかし兵の前でいつまでも黙っているのも気まずいので必要なことを聞き始めた。
「中で作業していたものに怪我はなかったか。」
「けが人はいませんが多くの者が混乱状態です。」
「よく陥没した地面から抜け出せたな。」
「中にいたものは水によって押し流されてから陥没が始まったので奇跡的に助かりました。」
「そうか。それはよかった。ところで坑道を修復することはできるか。」
「できません。一からやり直しです。」
「そうか。わかったよ。」
ここまで来てまた一からやり直しか。他の方法を考えないといけないな、これは。




