38話 占領(9)
私は軍を集め次に2日分の食糧を持たせた。そして隊からはぐれるようなことがあればこの砦に一人で戻るようにと指示を出す。この後の予定は一番最初はここから一番近くに支配地を持つ支配者、それからここと現在持っている飛び地のちょうど中間地点のあたりを治めているところの支配者を殺しに行く。各地で兵を10人ずつ置いていき治安維持に努めさせる。次に軍を二手に分け残りの二人に向けて攻撃を行う。この間、降伏してきた兵やケガから回復してきた兵などを合わせて今回の遠征は合わせて70人ほどになった。この前、私と共に戦った兵のうちかなりの者が今回は戦えなくなってしまったので結果としてそこまでの増加にはならなかった。残念ではあるものの犠牲は戦にはつきものであるから仕方のないことだ。それから今回は黒田を二手に分けたときのもう方側の指揮官とした。これは私の軍の指揮官不足が原因ではあるが少し黒田のことを信用しても問題はないと考えたからでもある。もちろんいざというときは兵たちには自分の判断で動けと命じてある。
次の日私は正午ごろに軍を出した。本来なら夜の闇に紛れ奇襲攻撃するのがわが軍の定法ではあるが今度の敵は警察も兼ねている軍であるため昼間は町に出てるが夜になると戻ってくる。そのため夜のほうが拠点にしている場所に集まっていることが分かったので今回は昼間のうちに攻撃をして拠点と拠点内にいる敵を殲滅。それから治安維持のために残す兵に残りの町の中にいる残党を殺してもらうことにした。とりあえず一人目の敵の支配地に入った。軍の前のほうにいるものだけには刀を抜かせる。そのほかの者には敵襲には気を付けるようにはいったもののまだ刀は抜かせない。敵にはできるだけ遭遇しないようにして拠点をたたきに乗り込みたいものだがそうはいっても先に出会ってしまった。相手は二人だけであったから放っておいても構わないと考えたが前のほうで道案内と偶発的な戦闘に備えて指揮権を持たせている黒田が先に囲い込んで殺すように手際よく指示を出していた。すこし手間がかかりそうなのでその間に隊列を整え私が先頭に立ち軍を進める。黒田が少ししてからやってきてこういった。
「岩田様、申し訳ございません。少し手間取ってしました。また私が前に立ち道案内を続けますのでお戻りいただいても構いません。」
「いやいい。ここからの道順を教えろ。ここからは一気に敵の拠点まで駆け込む。」
「わかりました。」
そして黒田から道を聞き、私の前に少しの兵を置き全兵に抜刀させて駆け足を命じる。そして敵の拠点に向かって動き出した。偵察の報告では敵はもともと民家であった場所を取り上げ、周りの民家も破壊して回りにすべて何もない空間を作っているそうだ。これを逆に利用させてもらい包囲それから突撃ということにした。次に攻撃は中に半数が流れ込みそれからもう半数が外に逃げてくるのを切り殺す。この策を実行するとうまくいき中にいた兵は全滅させることができた。それからあらかじめ決めていた兵に声をかけここに残らせ次の敵の支配地に向かった。しかし今回とは違ってすべてが予想通りにはいかなかった。というのも敵の拠点に向かっている途中に敵の部隊と遭遇したのだ。どうやら私がさっき奪った土地に見張りの者が常駐していたのだろう。そして私の軍を見て次に自分のところに軍が来ると思いその対策としてきたのか、それとも火事場泥棒的に支配地の拡大を狙ったのかはわからないがぶつかることになった。狭い町の一角での戦闘なのだからどうしても軍が通れる道は限られてくるので不思議はない。敵の数は10人ほどであったためすぐに潰走を始めた。私は大人数だと機動力が落ちるので前のほうにいる兵10名のみを率いて追撃に入った。首尾よく敵の大部分をうち取り本体のほうに戻る。そのあとは兵を10人、治安維持のために残し計画通り2つの隊に分け次の場所に向かう。ここまで来ると隊を二つに分けたり負傷者の数の関係で一隊20人までに減っていた。最後の戦いに向かっい次の支配者の支配地に入っていく。すると前から一部隊がやってくる。数はこちらと同じくらいの20人ほどである。ここにも私の行動はばれていたのか。しかし同数の部隊ならこちらのほうが一番最初から従ってきてくれた兵がかなりの練度を誇る兵であるから有利である。まずぶつかると予想通りこちらが圧倒的に優勢になる。そして追撃の形になる。しかし敵の逃げ方が少しおかしい。あまりにも整然としすぎる退却だ。わが軍の撤退でも実践ではここまできれいにはいかないだろう。そう感じると迷わず追撃に停止をかける。最初から軍にいたものはすぐに動きを止めたもののこの間、同盟を結んだものから来た兵はそのまま追撃を続ける。仕方がないのでここは先に行かせて囮として利用しよう。そう判断すると指示に従った者をまとめ、追撃を行っている者たちからすこし離れたところにつき追いかける。予想通り少し行ったところに敵の伏兵が建物の陰から10人ほど現れる。出発前に聞いた4家合わせて60人ほどは間違った情報だったらしい。しかし今はそれでもかまわない。さすがにこれ以上伏兵は現れないとみて攻撃をする。敵の伏兵として現れた兵は虚を突かれた感じになったがもともといた退却中の兵は気が付いていたのですぐに対応してくる。ぶつかってすぐに私は敵の中に囲まれている指示を聞かなかった兵の救出に向かう。今はどんなクズの兵であっても戦力が必要である。それから囲まれないようにすぐに外に出る。そこまでは軍として指揮をとれる状態にあったがその後は混戦になってしまい指揮は取れなくなってしまった。仕方なく近くにいた二人の兵を捕まえ三人で戦場中を駆け回り負けそうになっている場所の加勢をしたりして軍が崩れないように動き回った。狭い道の中での戦闘だ。どこか少しでも崩れると逃げる間もなく全滅する。戦闘はかなり激しく途中で何回もともに動く兵を入れ替えなければならなかった。そうするうちに何とか敵兵を追い払うことができた。
今回はだいぶ長くなってしまいました。本当は今回も大野と岩田の二人を合わせて書く予定だったのですが岩田の部分で終わってしまっただけでなく相当長くなってしまいました。




