33話 占領(4)
まだ何とか間にあいそうだ。今のところ行く手から特に大きな物音などは聞こえてこない。この分なら何とか戦が始まる前につけそうだ。万が一すでに占拠されていることを考えて陣形を整えておきたいところではあるがその間に攻め込まれたのではここまで急いできた意味がないのでここはそのまま一気に本拠地の城代わりに使っている建物の前に行く。見張りの兵が緊張した面持ちで寄ってきてこういった。
「戻ってきていただけましたか。状況を説明します。留守番隊隊長の指示でここらの偵察を行っていたのですがもう少しで敵の軍が来る可能性が高いと報告がありました。敵の人数は50人ほどと聞いています。」
「わかった。今すぐ隊長に合わせろ。」
「わかりました。」
思っていたよりも少ないな。話は少しそれるが今、隊長を務めさせている男は今まで私の近くで伝令兵を務めさせていたものだ。別動隊を動かさなければならないこともあるだろうと思い伝令兵として私の近くに置きどのように兵を動かせばよいか見せ続けたつもりだ。向こうにはそのことを知らせていないから今回、期待通りに働いてくれるか心配ではあったがもともと頭の良いやつであったし長いこと私の近くで指揮の取り方を見ていたのだからうまく対応してやってくれたようだ。話を戻そう。私はすぐさま話を聞く。
「今集まっている情報を言ってくれ。私は急いでここまで来たものだから何も情報を持っていない。」
「わかりました。ここの町の中心部のほうから来た3部隊が合わせて50人が向かってきています。しかしそれはあくまでも見つけられる範囲でのことでほかにもどこかにいると考えられます。」
「わかった。ここから先の指揮は私がとる。ここまでの事の実績はのちにじっくりと検分したのち褒美は取らせる。とりあえずは伝令の兵としての仕事を果たせ。」
「わかりました。」
「そのまま伝令内容を言うぞ。すぐに留守番の兵をすべて集めろ。怪我をしているものを含めだ。支配地の警備任務はすべて捨てさせろ。そして砦にこもるように指示しろ。そしてそこを死守するようにいえ。」
「わかりました。」
次に私は自分が連れてきた20人の兵を集める。そしてすぐに敵部隊を発見したという道の合流地点に向かうすでに合流した後かもしれないが野戦にて敵の数を減らさなければ強力な援軍がすぐに来る見込みが薄いわが軍は戦況が絶望的になる。そもそも砦といっても前にどこかで行ったと思うが町の中心から攻め込まれることを想定されていないものなのだからそこまでよい防御施設とはいえない。とにかく敵の合流地点と思われる場所に向かう。
私の予想地点は当たっていた。しかし問題は到着が少し遅かったことである。これから敵を攻撃しに行くと一つ目の敵と交戦中に後ろからほかの部隊に攻撃されてしまう可能性が高い。かといって戻るわけにはいかない。少し後ろに下がり部隊が合流して隊列を組みなおしているところを突くのが一番混乱を生み出し損害を少なくすることがだろう。もちろんこちらの動きにきずかれていないことが前提ではある。しかしそこは偵察の兵を信頼しよう。300歩ほどが攻撃のために必要な勢いをつけるためと敵にばれないための距離としては適切だろう。そう判断するとすぐに300歩ほど撤退する。それから陣を整えなおしてすぐに兵とともに敵に向かい突撃を仕掛ける。少し遅かった感じはあったもののまだ敵の隊列が完成しきる前であり敵が応戦できていない間に敵の中に入ることができた。敵の総数は把握するほどの余裕はなく50人ほどなのかそれよりも多いのかは全くわからない。敵の混乱が収まりかけてきたのを見て兵に大声で敵の陣の中を通り抜けるように指示をする。これは最初の衝突で敵の後ろのほうまでこれたのでたやすいことであった。そのまま敵が今通ってきた道を逆走する。敵の気が利く一部の兵が追ってきたので近くにいた兵5人に切り伏せるように指示する。敵の数も少なく10人ほどでさらにたいした訓練を受けていないようであっという間に私の軍の兵が切り伏せ帰ってきた。もうしばらくいった所で軍を反転させもう一度突撃する。今度は簡単にはいかないだろうがおいてきた兵もいるだろうからその回収もしなければならないのでやらないわけにはいかない。




