25話 同盟、懐柔、裏切り工作
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少し押され気味かな。敵はどうやらかなりの先鋭だ。当たり前といえば当たり前だ。なにせ向こうの奥のほうには将軍級と思わしき人がいる。さらにその近くには重役っぽいのもいる。その護衛たちと来たのだから強いに決まっている。対してこちらは石井の下で徹底的にしごかれた兵とは言えまだまだ兵になってから二年もたっていないものばかりだ。最初から前にいた兵たちはもう疲れから動きが鈍くなっているこのままいくと中央部分は破られてしまう。中央の兵が破られると左右に送った兵たちが孤立することになる。かといって手元には予備の兵力はない。だから中央の兵の厚みを増すために兵を出すことはできないこと。こんなややこしいことしないで一気に突撃したほうがよかったかな。普通こんな少人数の戦いで戦術を練ることはないのだから下手にいろいろと考えないほうがよかったか。かといって今から混戦に変えろと言っても混乱して帰って損害が増えるだろう。どうすればいいんだ、これ。ああ、もういい。ぐずぐず考えるのはやめよう。いつも通り敵の指揮官の首を狙おう。指揮官というか将軍様の首を取ることができる数少ない機会だ。ここを逃すわけにはいかない。現在俺が持っている武器は刀と石が5つか。向こうに回るのはかなりきついな。絶望的だな。ここで大声で挑発して決闘に持ち込むという前にどこかで使った気がする手ははたぶん向こうが乗ってこない。あの将軍は軍人として今回の遠征に参加したというより政治的な意味合いでいる気がする。だから腕には自信がないだろうから決闘を受けるような危険は冒さないだろう。すると俺が戦力になり戦って中央の崩壊を止めるのがいいだろう。くそ、将軍の首、切れじゃないか。ただやることは決まったな。俺は兵をすり抜けながら前に行き敵兵に切りかかる。敵兵の反応は良く切ることはできたものの致命傷にはならなかった。俺は敵が切りかかってくるのを受け流しその時にできたすきを突き切る。そして味方が交戦中の敵を後ろから切る。その後もとにかく敵を切りまくった。そのうち俺が出てきたことで味方の士気が上がってきて押し返すほどではないが前線の後退を押しとどめることには成功した。しかしまた少しすると敵の士気が急に盛り上がり始める。どうやら敵の上位の人の中にも腕に自信のあるものはいたらしい。どうやらそいつが前線が停滞していることに腹を立てたのか前に出てきたというところだろう。奥のほうでゆっくりと休んでいればいいものを。とりあえずその敵を殺してしまおう。そのためにはこうするのが手っ取り早い。
「我が名は大野裕也だ。この軍の指揮官だ。そちらの指揮官はどこにいる。臆病風に吹かれているというのなら構わないが決闘を申し込もう。」
さっきとは事情が変わった。ここで出てこないようでは上がってきた向こうの士気は思いっきり下がるだろう。あとはここで俺が負けなければいいのだな。正々堂々と戦わなければならないが。予想通り少しすると少し離れた場所から声が出た。
「私がこの軍の指揮官だ。決闘を申し込んだのはお前か。その申し込み受けてやる。」
おい、これは予想以上にでかいのが出てきたな。というか筋肉隆々じゃねかよ。なんで最初から出てこないんだよ。お前絶対に最初から前線にいるタイプの指揮官だろ。ちなみに俺は標準的なサイズだ。筋肉量は多分軍人としては少ない部類に入る。もちろん刀の腕に自信があるから決闘を挑んだのだけれどなんか不安になるな。そんなことを考えながら俺は敵と向かい合った。




