18話 攻撃(4)
向こうが俺の作戦を読んでいたとするならこれは今まで思っていたよりもはるかに質が悪い。もしかすると同数の軍で挑んでしまってはかなりの痛手を負うことになるかもしれない。しかしここで討ち取っておけば後々手を焼かされずに済むであろう。そのことを考えるとここは多少無理をしてでも攻めるべきであるとみるべきだろうか。しかしここで大きな損害を負ってしまってはまずい。しかしここは迷っていても仕方ない。軍によく考えもせずに停止をかけてしまったのだからここは腹をくくって敵を攻撃するのが良い手だということにしておこう。そうだここでうじうじしていてもどうしようもない。ここはとりあえず攻撃だ。向こうは今、こちらに向かいながらのどんどん勢いを増している。対してこちらは0から速度をつけて戦うわけだから今正面からぶつかれば速度的に押し負けてしまう。ここは平野でありさらにお互い予備の兵力もないのだからあまり複雑な作戦をとることはできない。だから考えられることは最初に敵にぶつかる瞬間に部隊を二つに分け敵の左右に入る。そして敵の側面から切りかかるというものだ。たぶん向こうもこの策を読んで前方の兵を左右に広げてくるだろうがそこは早いうちにぶつかれば簡単に強行突破することができる。急いで現在副官の代わりを務めている兵に作戦を伝えすぐに攻撃態勢に入る。この動きは石井にお願いして兵に覚えさせた動きの一つであるから何も問題はない。
突撃のために勢いをつけながら動き出した。敵もその動きを見て速度をあげながらこちらに向かってくる。あれ?思っていたよりも速度が速いな。予想外であるものの対応しきれないものではない。俺はタイミングを見計らい合図を出し部隊を二つに分け敵の側面に攻撃を仕掛けようとする。しかし敵は俺が軍を分けたとたん今までよりもさらに速い速度を出しそれを避ける。くそ、どうなってやがる。もちろん敵も完全に避けられたわけではなく10人ほどの兵を俺たちに仕留められていた。しかしほとんどの兵たちはあっという間に逃げ去ってしまった。これは俺の負けである。なぜなら攻撃を仕掛けた際に敵の軍の内側が見えたのだがそこにいた兵は外側にいる完全武装の兵たちと違い短剣を一本腰に下げているだけで鎧もしていない戦力にほとんどならない兵たちであった。こんなのに気を取られていて何日も無駄にしてしまい国境警備隊の戦力を削りながら俺の部隊の戦力を大きく見せるという仕事ができなかったのだから敵兵10人の戦略的価値の損害を与えたくらいではこちらが受けた戦略的価値の損失とはとても釣り合わない。どこか俺は油断していたのかもしれない。用心のためこのことは遠藤にも報告しておこう。できればこの指揮官の名前くらい聞きだしたいものだけれど仕留めた10人くらいのうち2人は生きていたらしいがつかまってすぐに舌を噛み切り自殺したというから情報の収取も不可能だ。あの指揮官にこの忠誠心の兵だ。かなり厄介なことになるかもしれない。
今日中の二話目の投稿ができました。次は明日、投稿できるかどうか。できなかったら来週の土曜日以降になるかと思います。