125話 再会
俺は自分の城に遠藤に会うために戻る。城に着くと石井によって遠藤の持っている部屋を教えてもらい、向かう。部屋に入ると俺は遠藤に向かい言った。久しぶり見る遠藤は特に大きな怪我を負っていたりするわけでもなく少し安心する。
「久しぶりだな。うまくやってたか。」
遠藤が答える。
「問題なくやってるつもりだったが身元がばれてしまった。」
自分の顔が少しこわばるっているのを感じる。俺は言った。
「まあ、そうでもなきゃ帰ってくることはないよな。追い出されたのか。」
「いや、身元はばれたが間者として潜り込んでいることまではばれていない。」
「誤魔化せたのか。」
「誤魔化すことができるくらいならここには戻ってきていない。」
「それもそうだな。」
遠藤は俺との受け答えを淡々と行う。前よりも表情の動きが少なくなった。どうやら表情から遠藤が帰ってきた理由を推察するのは不可能だと悟った俺は言った。
「戻ってきた理由は。」
遠藤は少し間をおいてから答えた。
「七ヶ国同盟諸国との同盟を結ぶための使者として戻ってきた。」
なるほどね。試されているという訳か。適切な間をおいて結ぶことができなければ遠藤は間者として処刑されるだろう。すこし考えてから言った。
「遠藤は内部事情を見てきてどう思う。」
「結んでいいんじゃないかな。」
「じゃあ結ぶとするか。」
遠藤が驚いたような顔をする。
「いいのか。まだ内容だって言ってないぞ。それに僕が寝返っている可能性だってあるぞ。もう少し慎重にやるべきだろ。」
そういわれて俺は驚く。
「お前なら大丈夫だろ。なんでわざわざ疑わないとならない。」
遠藤は一瞬固まった後、笑っていった。
「それもそうか。しかしこんなに早く話がつくと疑われてしまう。」
「他の国を説得しなくてはいけないからまだ時間はかかるぞ。」
「なるほど、とりあえず今日は情報が伝わっただけということね。」
「まあな。俺はこの段階では情報を得ただけで賛成派ではないということに。」
「なるほどね。」
ここからはお互いの近況報告を交えつつ、これまでのことをお互いに詳細に話し、情勢についての情報交換もおこなった。あらかた話を聞き終わり、伝え終わった後、遠藤が言った。
「松島家と同盟を結びつつ、南の皇帝とも同盟を結ぼうというのはさすがに問題にならないのか。」
「さすがにこの小国相手にそこまで気を張らないだろう。」
「しかし、小国とは言っても、七ヶ国まとまるとかなりの規模だし怪しいと思うぞ。」
「松島家との同盟は同盟といっても不戦協定程度のものであるし、宗教反乱のほうは遠藤のほうで何とかしてくれ。できれば俺はここで漁夫の利を得たい。」
「なるほど。しかしある程度、有利な状態で話をまとめないと僕が向こうに戻ったときに立場がない。」
「確かにな。その辺は明日全体に伝えるときに俺がうまいことしておこう。」
「分かった。」
私は市川家の内部に軍を進める。小坂の仕事をできるだけ減らせるように軍をまとめ、また要求をできるだけ少なくできるように工夫しながら軍を進める。主要な敵もいなくなった今はこの戦の大きな問題は兵站に大きな負担をかけないようにすることである。決戦で勝利したことにより松島一族が完全に戦に賛成をするようになったおかげで占領地の統治は文官が派遣されるようになり気にしなくてよくなった。市川家の主要な都市はあと二つ。首都と市川家の富の源泉である貿易港をもつ都市だ。私はこの二つをできるだけさけるようにしつつ、しかし反対側から攻めてくる小国に貿易港を奪われないように東海林の情報を参考に軍を進める。