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俺の戦記  作者: かな河
124/131

124話 市川家の滅亡(3)

 私は全軍に指示を出し、味方の損害と敵の損害を確認し、負傷者を後方に輸送させる。包囲は完璧なものでなかったし、いくつかの敵の部隊は包囲を破り逃げ出しているが数は多くないので残党狩りは行わない。詳しい数はわからないが味方の半分ほどは一時的に戦線を離脱することになるだろう。そこからどれだけの兵士が戻ってくることができるかは今の段階ではわからない。しかし手元には3万の軍隊がある。これだけの人数がいれば問題なく次の戦場に向かうことができる。小坂には負担をかけるがこのままこちらに残り主要な城を落としてまわることにしよう。




 俺は吉岡家の城に戻り、兵站の管理に追われている。六カ国の兵站の管理を行うことができる国は限られているが今さら自分で面倒な兵站の管理を行いたくないという各国の考えが一致し、我が国が担当し続けることになった。しかし兵站作業に使う兵は他国から貸してもらえるので残った手勢を戦闘をすることもできる。ただし俺は輸送計画を練りつつ吉岡家の城から前に落とした食糧庫に物資を運ぶ仕事をしているし、萩原だって食糧庫から前線の各隊に物資を送る作業で忙殺されているのだからそれどころではない。それに昨日、小林家から連絡が入ったのだが市川家と松島家の決戦は松島家の圧勝に終わったそうでその影響か、市川家の軍の抵抗が急激に弱まっている。だから俺の出番は特にない。さすがに前線での武功がないからといって土地の配分の時に不利になることはないだろう。勢いよく進んでいるときほど兵站の管理は難しくなるのだから功績もだいぶ大きいはずだ。そんなこんなで仕事に忙殺されている間に領地で留守番をしているが石井から俺宛に来たという遠藤の手紙が送られて来る。手紙には南の農民反乱と手を組まないかという話が書かれている。何があったのかまるで分らないが遠藤から連絡が来るということはよほどのことだろう。俺は自分の城に帰れるようにすぐに喫緊の仕事である松本家への食糧の運搬やらの野村家が大量に使う飛び具の運搬やらに大急ぎで取り掛かる。




 僕は藤田のところを出てすぐに大野に向けて手紙を書く。送るのは吉田の手下なので手紙の監視役の吉田の配下も見ることは確実なので藤田のところと同盟を結ばないかという内容だけを送った。初めに取り決めてあった暗号なども一切使っていない。僕は手紙を送るとゆっくりと歩く。あまり早いと手紙より早くついてしまうからだ。手紙が着かないということはない。吉田の部下は優秀なのでつかないということはないだろう。僕は足を動かしつつ煙草を吸いながら一人、考える。最初は大野の配下として藤田のもとに乗り込んだがその先での出来事があまりに強烈で自分の中で遠藤として物事を考えるのをやめ、佐藤として生きていた気がする。とは言え戦場に出ずに政治に没頭していたのだからどちらでも同じだろう。煙草が短くなってきたので新しい一本を取り出し、吸っているやつから火を移す。

 僕は歩いたり馬車に乗ったりしながら進んでいくと徐々に見覚えのある景色に代わってくる。まだ距離はだいぶあるはずだが家のつくりだとか植物だとかが懐かしいものが増えてきている気がする。ふと師匠の残した言葉を思い出す。

 「僕の持っている弱さは軍人には無用なもの、か」

 僕は果たしてどれだけ捨てられるのだろうか。煙草を手に取ろうとして、やめた。

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