117話 西と東
私は入念に最終部隊配置を確認する。問題はない。今までと違い、私は前に出て戦闘するのでなく後ろで作戦の統括と兵站を行うため実際に部隊の配置が正確に行われているかが心配になるのだ。外を確認するとまだ日は出ていない。ゆっくりと伸びる。小坂が部屋に入ってきて言った。
「岩田殿、もう来られていたのですか。作戦の開始まではゆっくりと休んでいてもらってよかったのに。」
「心配になりまして早く目が覚めてしまったので配置の最終確認を行っていたのですよ。小坂殿が来られたということはもうすぐ日の出ですか。」
「あと数分もすれば出てくると思いますよ。」
私はうなずくと窓に目をやる。この一つだけ小さな窓があるこの部屋は今後、対市川家戦で命令の発信地になる軍務部総指令室となずけられた部屋である。部屋の大きさは三十畳ほどである。すこし、手狭な感じもするが上層部の派閥の中にはこの戦争に反対しているところもあるらしく、その結果小さな部屋になってしまったらしい。詳しい政治の話は分からないし、直接の軍事行動には戦争が始まってしまえば関わることはできないのだから気にする必要はない。窓の外は少し明るくなっているがまだ日は出ていない。日の出とともに作戦を開始しろと前線の部隊には命令を出している。小坂が言った。
「前線はここから少し東に行ったところにありますし、気の早い部隊はそろそろ攻撃を仕掛け始めてところですかね。」
「そうかもしれませんね」
私は一応程度の相槌を入れる。自分が素性の知れない新参者でここに来るまでの実績も首都での戦果しかなく、ここで指揮を執っていることがおかしい存在であることくらいはわかっている。せめてこの初陣で大きな戦果を挙げ、使えることを示しておかなければすぐさま講和を結ばれ、戦犯として処刑される。そのことを考えると落ち着いて話をすることなどできやしない。ついに太陽が完全に姿を見せる。さすがにまだどこからも戦況の知らせは届かない。あたりが明るくなってきたとき、ついに第一報が来た。
「報告。第五部隊、敵城を陥落。死者は3。重傷者は12。軽傷者の数は現在集計中。」
どうやら第五部隊は成功したのだろう。その後も続々と戦勝の連絡が入ってくる。その日の午後には市川家との緩衝地帯にある小国をすべて落とすことに成功した。その夜には部隊の再編成を済ませ、市川家との戦争にそのまま移行した。
俺は補給線の安全を確保し、次の補給係である野村家と交代する。交代のための話し合いが終わると、前線に行く。前線に着くとすぐに軍議が始まる。中心となる吉岡が言った。
「今回は野村殿が補給にまわり、代わりに大野殿が前線に上がってこられたので大野殿に前線の説明、それから小林殿が持ってきた案の検討のために集まってもらった。」
そういうと吉岡が中心になりながら俺に前線の説明をしてくる。軽くまとめると小規模な砦や町を中心に攻撃をかけ敵の野戦軍をおびき出しているということである。しかし前線の説明などされなくても兵站を前線まで当しているのだからなんとなく想像はついていたので目新しいことはなかった。それよりも気になるのは小林からの提案というものだ。ようやく説明が終わると(ちゃんと聞いてはいた。間違いがあると後々大きな問題になるため。)小林家の提案について吉岡が話し始めた。
「市川家の西側にいる大国、松島家が同盟を結ばないか小林家を当して提案してきたというのだ。」
これは思っていたよりも話が大きくなりそうだ。松本が言った。
「本当なのか。もし本当だとしたらこのことは野村家なしで話していいことではない。」
「落ち着いてくれ。すでに野村殿には伝えてある。それに細かい話は小林殿が直接言ってくれる。」
吉岡がそういって小林のほうを見る。小林はうなずくと話始める。
「現在、松島家も市川家と戦争をする準備を進めている。今後もし戦争が進み市川家の内部深くまで進んだときに両軍が鉢合わせても戦わず協力してことに当たりたい、できれば情報共有なども行いたいというものですぐに結論を出さなければならないものではありません。」
「そういうことなので次回の会議までに各々ゆっくりと考えてきてもらいたい。」
吉岡が言葉を言い終わると会議が解散になる。みんな衝撃は受けているが大国、松島家と同盟が組めるのは悪い話ではない。あとは条件次第である。
お久しぶりです。最近忙しくて投稿できてませんが生きてます。頑張ります。今後も俺の戦記よろしくお願いします!