111話 外交と内政
僕は首都の大通りで買い物をする。戦いに負けた後に最初、藤田の命で外交担当の塚田とともに行動した。といっても別に僕は特に何をすることもなくついて回るだけであった。塚田は近くの領主の元を訪れ、我々と同盟を結ぶことで得られる利益を説いて回っていった。法律が専門の僕の仕事はその利益が現状の国内法的にも受けられることを示すためについて回っただけだった。しかし塚田の交渉術は見ていてとても参考になる。塚田が使う交渉材料は関税と信徒による領土に対する攻撃、さらに我々が持っている大規模な市場だ。この三つをうまく組み合わせ、さらに藤田が大清帝国の皇帝だった時代に築かれてきた関係性や塚田の人脈をうまく利用し相手を思い通りにしていく。大清帝国時代の関係性というものはほとんどないも同然なのだがそれがいまだに続いていると錯覚させ、たとえ気がつかれたとしてもその時にはすでに話をまとめ上げている塚田の交渉術はほとんど手品のようなものである。その後は首都に戻り野村と共に内政を行っている。支配地域が急速に拡大したため法律の改正を行わなければならないことや同盟を結んだ相手との貿易のための法律の立法など、内政の担当の野村と顔を突き合わせて話さなければならないことが数多くあったためだ。僕はゆっくりと通りを歩きながら目的の店に向かう。建物の中にこもりっぱなしなので買い物などで外に出るとできるだけのんびりと歩く。昔は何日でも事務作業を続けてできたがここしばらくは外にいる時間が長かったためか今までのようにはいかない。二つほど角を余計に曲がり目的の店に着く。店の戸を開けるとコーヒーの香りが入った煙草の煙が僕を包む。店の奥から店主が言った。
「久しぶりだね、佐藤さん。」
「久しぶり、親父。元気そうで何よりだよ。」
「この職業をやってるけどあんたや野村さんほどは吸ってないから元気だよ。」
「そんなに店に来る頻度は多くないだろ。」
「何を言ってるんだい。あんたは一度にどれだけ自分が買っているのかわかってるんだろうね。」
「そりゃもう。野村と僕でこの店の経営が成り立つくらいには買ってるつもりだよ」
「佐藤さん一人で十分、経営が支えられるよ。」
そういいながら店主は奥に下がっていく。僕はおいてある煙草とその説明をぼんやり読みながら店主が戻ってくるのを待つ。もともと僕は煙草を吸わなかった。主人の一族が大の煙草嫌いだったのも理由だし、僕自身が煙草に興味がなかったというのもある。しかしここにきて野村と一緒に仕事をするようになって進められるようになり、吸うようになった。最初のうちは肺がつかれるので軽めの物を少し吸う程度だったがすぐに煙草のうまさを知り大量に吸うようになった。
「なんか気になるものでもありましたか。」
「これが少し気になる。」
そういって僕は一つの煙草を指さす。店主はうなずいてカウンターの裏にある引き出しから試供品を一本取り出し僕に渡した。僕はもらった煙草に火をつけゆっくりと飲む。僕は言った。
「いい香りだ。でも少し強すぎる。」
「そうですか。ではいつものだけでいいですか。」
「頼む。」
店主は裏からとってきた大量の煙草をカウンターの上に並べる。バニラの香りがする白い箱に入った物、ミントの清涼感の強い徹夜時の眠気覚まし用の物、そして他の物にくらべ安くて濃くて重い、コーヒーに会う煙草を大量に買う。僕は代金を支払うと店を出る。僕は煙草を吸い始めたころに気に入っていたバニラの香りがする煙草を取りすぐに火をつける。初心者向けの軽いものだからあまり吸った気がしない。しかしここに来てからの記憶と深く結びついているからだろうか、少しここらでの思い出に浸りたくなると決まって吸っているのだ。この匂いと結びつかない記憶はない、そういってもいい。
お久しぶりです。最近は本当に忙しくてほとんど書く時間を見つけられずにいます。今後は完全に不定期投稿になると思います。今後も付き合ってください。
ここからは今回の話について。(読まなくていいですよ。)
今回は久しぶりなのでリハビリも兼ねて書きました。(なので話は大きく進めませんでした。)今まで遠藤というキャラクターについて、特に藤田と出会ってからの新しい設定がほとんどなかったので付け加えました。それに内面についても書いていきたかったのでそこへの準備の意味合いもあります。(今回も書きましたけど。)煙草は嫌いなので他の人が書いたのを読んでイメージを膨らませてみました。楽しかった。
最後まで付き合ってくださった方、ありがとうございます。今後は作者の頭の整理の意味合いも込めてこういった後書きが増えると思います。ご了承ください。(久しぶりだと混乱するし、なんでこう書いたかわからなくなった時のためもあります。)最後に毎度の奴ですが今後も俺の戦記をよろしくお願いします!