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俺の戦記  作者: かな河
110/131

110話 対市川家戦(4)

 俺は何も情報を収集せずに軍を集めて出陣したことを後悔しながら萩原から聞いたことを思い出しながら進軍する。念のために斥候は出しているものの敵との距離はそこまでないだろうしどれほどの効果があるかは疑わしい。案の定、斥候の兵が敵の本隊の情報を持って帰ってきたのは接敵寸前の状態であった。俺はこのまま止まって敵に気がつかれるよりはぶつかったほうがましだと思い、兵に突撃を命じる。大将首を狙わずに敵の軍の一番薄いく見えるところに向かってぶつける。兵に足を止めないように命じ、とにかく前に前に進ませる。予想通り、すぐに敵の薄いところをつけたようで何とか敵の中を通り抜けることに成功する。その後はとにかく遠くまで兵にかけさせる。しばらく進み、敵の追撃がないことを確認すると兵の動きを止めさせ休ませる。俺は周りを警備するように兵に命じると突撃の様子を思い浮かべる。今回は危なかった。勢いに任せて突撃したもののまともにぶつかっていたらとんでもない犠牲を出していた可能性が高い。兵たちが戦っているのを見るとどうにも向こうの兵の練度が高い。しかし個人技に特化しているようなのでそこをうまくついて攻撃を仕掛けていけば問題はない。そこまで考えると俺は兵にあたりの偵察をしてくるように命じる。しばらくすると兵が戻ってきて敵の状態について報告してくる。どうやら敵はたいして混乱することなくまた陣を組んでいるということだ。おいおい、個人技に特化しているだけでなくどうやら優秀な指揮官もついているようだな。持っている鞄の中を見る。煙幕用の火薬玉は4発か。この軍が街道を襲ってきたらかなりまずい。防衛のために広く薄く兵を配置しているのですぐに全滅してしまう。ここで敵を全滅させるしかない。俺は腹をくくると兵に陣を組ませる。煙幕をすぐに使えるように準備を整える。あたりは森であるから陣を組んでも気を避けるために兵と兵の間に少し間を持たせている。しかしこれではぶつかり合ったときに強い衝撃は与えられない。だから兵を分散させて周りを囲むのが今回の作戦。煙幕、四発で視界を奪っているすきにできるだけことを進めたい。風はない。俺は兵を進める。しばらく進んだところで兵に散開の合図を出す。兵は少しずつお互いの距離を開けていく。さらに進むと敵を視界にとらえる。兵に戦闘準備をさせると片手に煙幕を持ちながら少しずつ敵との距離を縮めていく。向こうもこちらには気がついているようで防衛陣形を作る。俺はそれを見ると素早く兵に停止を命じる。しかし散開状態だから指示が通りにくい。何とか指示が通ると俺は兵の位置を微調整する。敵とにらみ合いが始まる。向こうは防衛の姿勢を一切崩さない。好機が来ないか日が暮れるまで待つことにして敵をにらみ続ける。兵には臨戦態勢ではなく警戒態勢を取るように伝える。あまり長いこと緊張させすぎると兵がつかれてしまいいざという時に役に立たなくなってしまう。ということで警戒度を一つ下げ、好機を待つ。敵は微塵も動かない。近くにいる兵に命じて敵の陣を調べてもらう。なんとなく状態がわかってくると俺はまた兵の位置を微調整する。日が沈み始めると兵をあちこち動かしこちらの陣がわからないようにする。完全に日が沈みあたりが暗くなると俺は大声で「突撃」といった。兵は動かない。しかし敵陣ではあちこちで兵が身構える気配がする。しばらくたつともう一度「突撃」という。また同じことが起きる。しばらくたちもう一回やる。今度は敵はあまり警戒した様子を見せない。少し俺は後悔する。四回目ではなく三回目と兵に指示してもよかったな。俺はしばらく待ち四度目の「突撃」と指示を出す。その言葉に反応して兵たちが動き出す。敵はあまり警戒していなかったのかすぐに乱戦になる。俺は煙幕を張る。月明かりと松明の灯りを煙が覆い隠しあたりは完全に真っ暗になる。すぐに乱戦は終わる。どうやら俺の軍は陣の第一線を壊しただけに過ぎなかったらしく敵は陣をまた組みなおしている。しかし視界を奪ったことが功を奏してこちらに有利な戦況になっている。俺は少し後ろで戦闘を眺めつつ日頃の訓練はやはり大事だなと一人思う。煙幕が少し薄くなってきたところでもう一発使う。少しずつ敵を殺していく。俺は味方の怪我人を後ろに寄せて応急処置を施したり、怪我人を探しつつ敵の兵にとどめを刺して回る。兵も人の子であるから切りあいで完全に敵を殺せる兵はそこまでいない。だいたい戦闘不能になれば放っておかれる。しかし指揮官としては念を入れたいのでそれらを殺して回る。しばらくすると敵は退却していく。俺は兵を集め、防衛地点の街道に戻る。かなりのものが傷ついている。詳細はまだわからない。もちろん敵をどれだけ討ち取ったかもわからない。何とか街道に戻ると萩原に後のことを任せ俺は自分のテントに入る。無抵抗の者を殺すというのは心理的にとても疲れる。俺は持ってきた酒を浴びるようにしてのみそのまま寝る。

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