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俺の戦記  作者: かな河
108/131

108話 対市川家戦

 俺は会議の後すぐに萩原の元に戻って会議の内容を伝える。萩原は言った。

 「では大野殿はすぐに残党の討伐にまわったほうがいいのではないでしょうか」

 俺も最初はそう思った。しかしここは俺は残ったほうがいい。

 「いや、お前がいけ。今回の残党討伐はお前の傭兵時代の経験が生きる気がする。」

 「そういわれるのなら私が行きましょう。」

 「兵はお前の好きなものを好きなだけ連れていけ。」

 「分かりました。今すぐ編成にかかります。」

 萩原はそういうと俺の前から下がり編成に行く。今回のようなどこに敵が潜んでいるのかわからない、さらに地形もよくわかっていない土地での戦いとなれば各地で連戦をし、経験も豊富な萩原のほうが俺よりもこういう仕事は向いている。俺は萩原が編成をしている間に萩原が作った陣を確認する。ありがたいことに萩原はわかりやすく陣の様子を地図にまとめておいてくれているので一目で陣の概要がわかる。俺だったどう配置するだろうか、そしてどっちの配置のほうがいいのかを考えてみる。萩原の配置は俺の考えるものと違って危なげがない。しかし同時にそれは俺の考えるものと比べどこかに大きな圧力がかかった場合に簡単に壊れてしまうものだ。俺は息を吐いた。なるほど、今回は確かに大人数の敵と戦うことは少ないだろう。それよりも散発的な少人数の敵を倒す萩原の陣のほうが賢いと言える。では、前線の他家の者たちが負け、ここも安全地帯といえなくなったらどうだ。いや、その際はここにいる兵では対抗しきれない人数の軍が攻めてくるということだ。ここには砦もないのだからその場合はどのような策を弄しても勝つことはできない。陣はいじらない方がよさそうである。もうしばらくの間あれこれ考えていたが残念ながら萩原の配置に口出しする場所は見つけられなかった。そうこうしているうちに萩原がやってきて言った。

 「これらの兵を連れて残党狩りに行こうと思うのですがかまいませんか。」

 俺が渡された紙を見る。元傭兵と最初の大戦の生き残りの3人を徴用か。

 「人数としてはこれだけでいいのか。」

 「かまいません。途中で兵の数を増やしに来ることもあるかもしれませんがひとまずこれで様子見します。」

 「別にお前らのことは疑っていないから気ごころの知れた師匠の部下だけを連れて戦いに出てもいいぞ。」

 「それでいいのならそうさせてもらいます。」

 「もう行っていいぞ。」

 「では行ってきます。」

 そういって萩原は去っていった。俺は後方に下げる負傷者の数と後方から持ってくるべきものを書き込める表を作り、伝令用の小林家の兵に渡し前線にいる他家の領主に渡すように伝える。その後、街道警備の兵士の人数を調整する。それをやっている途中に敵の城の陥落を伝える手紙を持った伝令の兵がやってくる。手紙には捕虜の輸送の依頼も書かれている。そのほかのことについては書かれていないから先ほど俺から出した伝令とは行き違いになったのだろう。書かれている捕虜の数はそこまで多くはないので予備の兵力をすべて使う必要もないがほかにも輸送するものがあったときに備え、使うことにする。

 戦が終わった後の城に着くとそこではすでに手際よく捕虜が並べられている。俺はいくつか兵に指示を出し捕虜を輸送しやすい状態に並ばせる。それから吉岡のもとに行き負傷者を引き取り、吉岡が集めておいてくれた各家の補充品の一覧をもらう。そして最後に吉岡が言った。

 「このままの編成で次の城を攻める。次の城はすでに我々が攻めていることを知っているからすぐには落ちないと思う。それに今度の城はただの城ではなく城の中に都市が入っているという大規模なものだ。我々はこのような城と戦ったことはないから次の軍議に参加してもらいたい。」

 「とすると輸送と街道警護の任務は誰が引き継ぐのですか。」

 「いや、軍のほうは参加しなくていい。ただ大野殿の頭脳をお借りしたいのだ。」

 「そういうことなら。わかりました。この輸送の任務が終わり次第、軍議に参加しましょう。わが軍は指揮官が常に不足している状態にありまして、輸送隊を指揮できる人間が今、俺しかいないので。」

 「分かった。できるだけ早く戻ってきてくれ。」

 俺は負傷者と捕虜を連れ、吉岡の城のほうに戻っていく。その後、何事もなく城で物資を補給し前線まで届けた。

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