107話 対市川家戦
俺は兵を率いて吉岡の城のもとに着く。城は山城で狭いため全軍が中に入り切ることはできないため、基本的に野営となる。吉岡に連れられて野営地まで来る。野営地に着くとすぐに萩原に命じ野営の準備をさせる。その間に俺は吉岡の城、さらにこのあたりの地形を調べて回る。もちろん吉岡から地形図などは渡されているがいつものことながら自分の目で地形をよく確認しておきたいのだ。とにかくあちこち歩き回り、地形を確認して回り、城の弱点や補給路を考えて回る。もしこの戦で市川家に負けるようなことがあればこの城は最初の防衛拠点になる。よく調べておくに越したことはない。丸一日かけてその作業を済ませる。次の日にはほかの軍も到着し、いよいよ戦争となる。
真夜中になると俺はわが軍の先鋭部隊を率いて大きな街道にいる、国境警備の部隊に夜襲をかける。向こうもこちらの動きを察知してのことか小林から聞いていたよりも多くの兵がいる。しかし敵の練度はそこまで高くなく、それに国境の各地に散らばっているため結局のところ人数もそこまで多くない。少し遅れて同盟軍の本隊が到着する。本隊から萩原が我が家の軍を連れて分離する。そのまま本隊は街道を直進してこの先にある街に向かっていった。俺は萩原にこの街道の守護を任せるとすぐにほかの地点にいる国境警備隊のもとに襲撃に行く。街道からはすぐに外れ、道なき道をひたすらかける。少し行くと小林家の地図が示す場所に敵軍の詰め所を発見。少し周り道をし市川家の領内の方から攻撃を仕掛ける。予期せぬ方角からの攻撃によりあっというまに敵軍は崩れる。大方の敵が逃げ去ったり戦闘不能になるのを確認するとすぐに次の部隊めがけて駆けだす。俺たちの軍に課された役割は本隊の補給路と逃げ道にあたる街道の守護と近くにいる敵の小隊の撃破だ。本隊のほうは街道を通じ吉岡家の城とつながっている城の攻略にあたる。城の攻略が簡単にいくとは思っていない。だから早いうちに敵の小隊を叩き、街道の守護を脅かす可能性を潰す。どんどん前に行く。小林家が偵察を済ませてあるところにいる敵軍を潰し終わるころには日が昇っていた。
俺は軍を連れ、萩原が待っている街道沿いに戻ると兵たちを休ませる。それから萩原を呼んだ。
「大野様、敵はどのくらい討ち取れましたか。」
「悪い。半分くらいはうち漏らした。しかしうち漏らしたうちの半分はけが人のはずだ。」
「小林家の情報はどのくらい正確でしたか」
「小林家の情報よりも二割くらい多くの敵兵がいたと考えていい。しかしその二割はたぶん新兵だ。」
「増援がいたということですね。」
「たぶんそうだ。見たところ練兵はたいして行われていない。だから新兵はほとんどその場で討ち取っている。逃げたのは訓練を受けている兵のほうだ。」
「とするとこの街道への攻撃はかなり激しいものになりますね。」
少し萩原が考えるそぶりを見せる。たぶん兵の配置をやり直しているのだろう。俺は言った。
「先鋭部隊を防衛にまわしてもいいぞ」
「その必要はないです。」
「そうか。なら俺はこの後の動きを本隊のほうに相談してくる。」
「分かりました。」
俺は本隊のもとに合流すると吉岡がすぐにほかの家の領主を呼んできてくれた。そしてすぐに軍議が始まる。吉岡が言った。
「まずは大野殿から報告をお願いする。」
俺は言った。
「小林家の偵察で補足していた敵の小隊は壊滅に追い込みました。しかし敵のうちの半数をうち漏らしました。それからすでに気がつかれているかもしれませんが敵は増援を迎えています。」
浜野が言った。
「半数も逃がしたのか」
俺が言った。
「すまない。敵の増援がいたせいで思うように敵の奥に入って追撃をするのが困難で戦果を挙げるのが難しかったのだ。」
吉岡が言った。
「浜野殿、そこまで怒るな。我々の戦果も報告し、それからどうするか決めよう。大野殿、我々のほうは敵の城のうち堀のところまでは落とした。残るところは城壁である。しかしこれは思いのほか今日中に落とすことができそうだ。」
「そんなに早く事が進んだのか。」
俺が驚いていうと吉岡が続けていった。
「敵の対応が遅かったおかげで城が簡単に落ちそうなんだよ」
「そうですか。とすると次の作戦目標はこの先に行ったところにある城郭都市ですか。」
俺がいうと吉岡が頷いた。俺は言った。
「であるならすぐに残党狩りを行います。それと同時に街道の警備と物資の運搬も残党狩りが終わるまでは我々が担当しましょうか。」
どの家からも異論は出ない。物資の運搬係は作戦会議中に案が出て承認されたもののどうやって行えばいいか先例が出るまでもどの家もやりたがらなかったので結局話が進んでいなかったのでこの場で俺が引き受けることになった。
先週分です。今週中にもう一話書きます。