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俺の戦記  作者: かな河
105/131

105話 戦いへ(2)

 俺はゆっくりと陣を崩さぬように気を付けながら山を登る。頂上まであと半分というところで見張りに行っていた兵が俺のもとに駆け戻ってきた。

 「報告。敵軍は頂上を占拠。陣形を一度整えなおしている模様。」

 「分かった。お前は俺の近くで待機していろ。」

 どうやら山の上からこちらに向かって突撃を仕掛けてくるのだろう。ここまでは想定通り。定石通りの動きを向こうはしてきているわけだ。他の偵察に出た兵は帰ってこない。つまりは別動隊はないということだろう。ならばこのままゆっくりと上に向かって動いていくだけだ。山の上からの攻撃は勢いがつくのでできるだけ高低差をなくしておきたい。しばらくすると上のほうで人が動く気配を感じる。

 「行軍停止。進軍方向に向かい盾、用意。飛び具を使えるものは盾兵の後ろから狙え。」

 そう命じると俺は陣形を一度、確認し微調整を命じる。すぐに用意が終わり、兵たちの間に緊張が走る。演習とは言え、気を抜けば死ぬ可能性もあるし敵の武器に当たればかなり痛い。そしてついに上からやってくる敵の姿をしっかりととらえる。向こうは飛び具を使ってくる。だいたいは盾によって防いだものの一部がすり抜け、味方の兵にあたりそいつらが離脱する。敵はさらに近づいてくる。飛び具を持つ兵士を一度睨む。しかしそんなことをしなくても命令違反をするものはいなかったようで少し驚く。敵はついに飛び具の使用をやめ、演習用の槍を構える。

 「撃て」

 俺が命じるとすぐさま兵士が打ち始める。敵兵にあたる。しかしこれだけでは勢いが止まらず敵の先頭が味方の盾兵にあたる。そしてすぐに押し合いが始まる。押し合いはこちら側の劣勢。向こうが地の利を得ているからだろう。少しづつ兵に右にずれるように指示を出す。押し合いをしながら右に行くことで真っ向からの勝負を避けられるようにしたい。ここからが俺の腕の見せ所。少しづつ敵と自分の位置を入れ替えていく。押し込まれてきた部分に余っている兵を送り込み押し負けしないように気を付けながら、動いていかなくてはならないため気が抜けない。しかし萩原も俺の意図に気が付いたのか対策を取ろうとしていたが時すでに遅し。萩原の陣は一部が前に出すぎた形になっている。俺は自陣の左手側の兵士に後ろに下がり味方の後ろに回るように指示を出す。後ろにまわろうとした兵の半分ほどが犠牲になりはしたが何とか移動を終える。敵陣は右半分がやたら前に出た形になってしまい指揮がいきわたらなくなったはずだ。俺は急いで自分たちから見て右斜め前に向かい一気に動き出すように指示を出す。いくらかの盾兵を置いてきぼりにしてしまったが大部分の兵の移動が完了する。そのまま反転し突撃する。驚いたことに萩原は指示が通る範囲の兵を連れてこちらに向かってぶつかってくる。しかし今度はこちら側が高所にいるだけでなく人数の差もあるため押し合いにもならず蹴散らかせる。そう思ったが意外に向こうが奮戦する。こちらの兵は先ほどの押し合いの疲労だろうか動きが鈍い。くそ、ここを抜ければ相手の無防備な塊に突っ込むことができるのに。ここで時間をかけているうちに向こうは散らばった兵士を小さく集め終える。すると目の前にいた兵士がばらばらに逃げ出す。なるほど、俺が今戦っていた相手はうちで長いこと練兵した後の先鋭という訳か。そのまま俺たちの軍は下にいた敵のまとまりにぶつかる。お互いにちゃんとした陣は組んでいないためすぐに乱戦に陥る。俺は近くに待機している古参の兵に軍をまとめ上げるように命じる。俺も演習用の刀を抜きながら軍を集めることに奔走する。しかし最初の押し合いで坂の下で戦っていたことが災いになったのか味方の動きが鈍く思うように集まらない。そうこうしている間に俺の周りに敵兵が集まった。周りにいる味方とともに戦ったもののついに俺は地面に組み伏せられてしまった。こうして決着がついてしまったのだ。俺は捕らえられたまま萩原の前にもっていかれる。俺は言った。

 「お前、思っていた数倍やるな。」

 萩原が返した。

 「大野様が手を抜いていたからですよ。」

 「いや、あんまり他国に人間に手の内を見せたくなかったかがいつもとは基本方針を変えて作戦を立てはしたが手を抜いていない。最後の最後まで自分でも負けるとは思っていなかった。戦術的にはお前のほうが上だ。」

 「そうですか。」

 「次の戦では期待しているぞ。」

 そんなことを話していると向こうから審判の梅田の爺さんがやってくる。梅田が言った。

 「思っていた結果とは違いましたがいい戦いが見られました。城で見ていてもわかる迫力でしたよ。」

 俺は言った。

 「それならよかった。梅田殿、悪いが先にしたの俺の家に行っていてはもらえぬか。私はこの後城にいる客人にいろいろと話したいことがありましてな。」

 「なるほど。では先に下に降りていよう。話足りないことは夜にするとしよう。」

 「そうしてもらえるとありがたい。今夜は止まって行かれるのですから急ぐこともないですしね」

 そういって俺は梅田に兵のうち気が利くものを一人付け梅田を下まで案内するように命令する。その後俺と萩原は山の上にある城に入りまだ帰属してきていないものたちに七ヶ国同盟の体制の話や現在の七ヶ国合わせた領土の大きさや兵力について語り、その後各自の領地に返した。その夜俺は梅田と酒を飲みながら今日の演習について反省会を開く。萩原も誘ったが

 「内政の仕事で相談を受けているので」

といわれ断られた。夜が更けるまで梅田と話し続けた。二日後には何か国かの国から帰属することを誓う使者がきて、その場で帰属が決まった。

明けましておめでとうございます。今年も俺の戦記を楽しんでしただけたら幸いです!

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