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愛を誓いますか?

最近、小説を更新していないので更新しました。良かったら読んでください。

「リリス・ディア・ドール。お前との婚約を破棄………っ?!」

「まあ、どうしてしまわれたの? クリス様!」


 私の婚約者で第2王子殿下のクリス様が皆の前で何か叫ぼうして、いきなりその場にしゃがみ込んだ。

 慌てて駆け寄る。令嬢が走るのははしたないけれど、そんな事はどうでもいい。

 皆から注目の的だけれど、それもどうでもいい。


 私の大事なクリス様。

 何故か私の婚約者の腕を何故か掴んでいる女が居たけれど、


「下がって下さる?」


 と断って押しのける。

 更に女は王子の護衛にやんわりと下がらせられていた。

 女は『私は王子妃になるのよ』とかなんとか叫びながら遠ざかっていく。

 不敬にも程があると思う。クリス様はお優しいからなかなか振り払えなかったのかしら。


「クリス様! いかがなさいました?」


 私が声をかけるとしゃがんでいたクリス様が急に立ち上がった。


「きゃっ」


 とっさの事に驚いてよろめくと、クリス様がしっかりと私の腰を支えてくれた。

 急な接近がちょっと恥ずかしい。

 最近はクリス様がつれなくて、婚約者なのに放っておかれていたから。


「驚いた? 驚かせてごめんね。僕のサプライズだよ。皆の者! 驚かせてすまなかった! 僕とリリスの仲を深めるちょっとした余興だ。詫びに個人所蔵のワインを振舞おう!」


 クリス様が朗らかな顔で皆に宣言する。

 子供のような無邪気さだった。

 第2王子であるクリス様のそんな気さくな言葉に、貴族たちは腑に落ちない顔をしながらも再び歓談に戻った。


 私もクリス様の急なサプライズで混乱している。


「最近、忙しくてリリスにあまり構えなかっただろう? だからちょっと驚かせて刺激をね?」

「ま、まあ、そうでしたの。大事なクリス様に何かあったのかと私とても驚きましたわ」

「驚かせて本当にごめんね。お詫びにネックレスを贈らせてくれないかな?」


 そう言って、クリス様は侍従に持ってこさせた箱を目の前で開ける。

 少し古びた箱に入っていたがそれは今は関係ない。

 そこにはクリス様の目の色の青い宝石でできたネックレスが入っていた。


 でも、それよりも嬉しいのはクリス様の笑顔だった。

 小さい頃のように自分を愛してくれていると確信できる温かい笑顔だ。


「………っ嬉しいです」


 幸せで幸せで胸が詰まって、喜びの言葉しか出てこない。

 最近は、あまり会ってくれないし、最初のころのようにプレゼントや手紙もないしクリス様に嫌われてしまったのかと心配だった。

 クリス様の愛を信じてはいるけれど、それでも不安な時はあった。

 でも、やっぱり私の杞憂だった。


 涙が出てきそうになるけれど、ぐっとこらえて笑って見せる。


「ありがとうございます。大事にします」

「うん。愛してるよ。リリス」


 いつまでもクリス様と私の愛が続きますように、私はそっと神に祈った。




 ---親視点---



 王宮主催の舞踏会の片隅で起こったちょっとした騒動が無事収まった。


 その様子を見て、この国デーモニウム王国の王と宰相は顔を見合わせてほほ笑んだ。

 王はクリスの父親、宰相はリリスの父親だ。




 そもそも事の始まりはこんな話だった。


 王が、


「第2王子とドール侯爵の娘を結婚させたい」


 と言い出した。


 何故か?

 理由は簡単だ。


 現宰相であるドール侯爵にちょうど第2王子と同時期に娘が生まれた。

 若くして有能なドール侯爵は国を魔物から防衛する結界魔法にも長けている。

 身分的にも申し分ないし、ドール侯爵の結界魔法の力を王家に加えることができる。


 対して、ドール侯爵は溺愛する娘であるリリスには王妃となって無理はしてほしくはない。

 が、娘には嫁ぎ先でも何一つ不自由のない生活を送って欲しい。

 それには、王家であれば自分が娘が幸せであるか監視もできる。

 娘の支援もしやすい。


 王からはこの申し出を受けてくれたらの礼として、魔石がとれる鉱山の内、ドール侯爵家に接している一つを侯爵に譲渡する事を提案していた。


 幸い第2王子であるクリスとドール侯爵の娘リリスを6歳の時に会わせた所、お互いが気に入ったようだった。

 大人を真似て無邪気に愛を囁きあっている。

 まあ、もしかしたらそれは子供の無邪気さゆえに仲良くなったように見えただけかもしれなかったが。


 何も問題はないように見えた結婚話だったが、王妃とドール侯爵夫人から申し出があった。


「最近、外国で王族と貴族の婚約破棄が頻繁に起こっているようですが、二人にももしもの事があったらどうするおつもりですか?」


 と。


 心は不確定なものだ。

 妻たちが不安に思うのも男親たちには分かった。


 かと言って、子供に魅了魔法をかけてお互いを好きでいるようにするにも違う気もする。

 洗脳魔法もだめ、行動を制限する操作系の魔法も一国の王子と侯爵令嬢にかけていいものでもない。


 ある日の、子供達のお茶会を眺めながら、親たちはふと気づいた。


 リリスはお茶会の途中で、まだまだ拙い字で書いた恋文を第2王子に書いて持ってきていた。

 それを受け取った第2王子は、リリスの手を握り、


「リリス、愛しているよ」


 と笑顔で大人びたことを言っている。


「私もです、クリス様」


 とリリスは幸せそうな笑顔だった。


 第2王子クリスもリリスも小さいながらも純粋に好きあっている。

 それは見守る親たちの胸を突く、美しくも感動する光景だった。


 二人の親たちは思った。

 このころの気持ちを保存すればいいのではないのかと。

 そうすれば、洗脳でも魅了でもなく、本人たちの気持ちで二人はずっと政略結婚でありながらも愛し合う事ができるのではないかと思ったのだった。


 そうして親たちは互いに顔を見合わせて頷きあった。

 王家の膨大な魔力とドール侯爵家の強力な結界魔法の力を出し合って、人の気持ちを結界の中に保存する魔法が開発された。

 親たちは子供たちの幸せの為ならどんな労力も厭わない。


 じきに気持ちを保存する魔法が完成された。

 愛し合う気持ちを保存する魔法だ。

 その気持ちは本人たちの気持ちだから強制ではない。



 ……そして、お互いの繋がりを切ろうとすれば結界に保存された愛の気持ちが何度でも蘇るように。




 そうして、親たちは6歳の子供たちクリスとリリスの盛大な婚約式を開いた。


「綺麗だよ、リリス」

「クリス様もいつにもましてかっこいいです」


 子供たちはお互いの白い婚約式の衣装を褒めあい、喜びに頬を染めている。


 親から子供達には、


『いつまでも二人がお互いを好きでいられるようにおまじないをかけるからね』


 と言ってある。


 司祭が、祭壇の前に辿りついた二人に問いかけた。

 子供たちに親の仕掛けた気持ちを保存する魔法の魔法陣が発動し始めて淡くきらめく。


「神の名において永遠の愛を誓いますか?」

「「はい、誓います」」


 リリスとクリスは二人声を揃えて答え、顔を見合わせて無邪気に微笑みあった。

アクセサリーの箱が古びてたのはだいぶ前に買っておいたものだから。

親は子供の頃の純愛を保存するのは良いけれど、結婚したのちの夜の事とかは考えていない。

分かりづらいかったかな、と思って付け加えますが、最初に婚約破棄しようと思った後、王子が「最近構えなかった云々」言ってるのは、自分の心の変化を自分の中で矛盾なくつなぎ合わせて自分を納得させてるのです。純愛の保存魔法が発動すると、リリスの事を自分は愛してるはずで、他を愛してるはずはないので。


読んで下さってありがとうございました。

もし良かったら評価やいいねをよろしくお願いします。

また、私の他の小説も読んでいただけたら嬉しいです。

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↓代表作です。良かったら読んでくださると嬉しいです。

「大好きだった花売りのNPCを利用する事にした」

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