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ルルイエ浮上前の大正に転生しました、帰りたいです  作者: kaichi
第十二話:まといまとわれ
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Scene‐06 かぜのめ

 ニュートの警告に、慌てて視界の端だけで後ろを……え?


 ザババッ――


 幾つもの顔が――平べったいにも程がある顔が、嵐の海を次々と裂く。

 うえ、枢戸村や丹後丸にいた連中だ。

 イプティックだっけ?


「いくつの神話を行使してるんだろ……」

『ああ、まるで魔女の釜だ。――だが、それでいて奇妙に安定している』

「鎌倉の事件と同じ、ゲートを基点にした《神話大系》って奴か……ん?」


 一番でかいイプティックと目が合った。

 アビサルでホラーチックな顔がぽっと頬を赤らめ――すごい露骨に舌舐めずりされる。

 発情きっしょー!

 そのアビサルな深海魚フェイスは、神話覚醒中のカルネに勝るとも劣らない不味さで――


(ははは……は? お、お前いま失礼なことを考えたな!?)


 うん、まあ。

 だって怪奇蛇人間なんだしさ。鏡を見て。

 旧支配者と《接触》して神話回路を開くと、身体が変異するんだよね。

 遺伝はしない筈だけど……


「そーいや、カルネのメスって卵産むのかな?」

『イグの女性接触者と言いたいなら、人間辞めたレベルの個体は産む』


(な……何をいきなり言い出すか、この糞女が!?)


 あ、すごい目でこっち見てる。

 だってさー

 あと、僕は女じゃありませー……ん?


「ひえっ……!?」


 おや、イプティックを前にした荒士さんが珍しく乙女チックに怯えている。

 あー、初見だったっけ。

 初見ではない井手上さんがフォローしてくれる。


「荒士さんは山育ちだから、海のに慣れてないのかな」

『瑛音、育ちは関係ないと思う。――というより、お前が動じなさすぎだ』


 まあ、そうかも?

 僕にとって神話や旧支配者は『恐怖』なんだよね。

 対象がハッキリしてるからさ。

 だっているしー。そことか、そことか、()()とかさ!


 そんな僕らを余所に、イプティックたちは――海中から千代松を引っ張り上げた。

 あらま律儀?


「げほっ、がほっ……うげろぉぉぉ……な、何だコレは……な、何がどう……げぶぅぅぅ」


 イレズミの暴走は収まってるようだ。

 持ち上げられた当人は、したこま飲んだ海水をデローっと口や鼻から吐き出している。

 あー、頭にかけられたイプティックが凄い目で睨んでるな。


 さてどうしよう……ううん、まず?

 考えてる間にカチン、パララ、パチパチパチ……パチンと、ウェブリーのリロードを済ます。

 作戦というか、方針は――チラチラ、キョロキョロ。

 うん、ソレでいこう。

 後は……ん?

 ニュートが鼻をピスピス。


『――ほう? 瑛音、荒士が変な爆弾を持ってるようだぞ』

「あら。荒士さん……もしかして爆弾とか持ってない?」

「え?」


 突然言われて、荒士さんびっくり。

 どうやら隠しポケットがあるらしい部分に、軽く触れる。


「え、ええ。代官山の唐辛子弾を改良した物が。――ただ、海中にいる連中には効き難い。この場では役には立たないかと」


 え、アレを自作したの!?

 それはいいかもー


 荒士さんにチラ――と、アイコンタクト。

 さらにウェブリーを軽くポン。

 サイレントな提案を受けた荒士さんは少し考えてから、コクと頷いた。どうやら僕が想定したメインターゲットを理解してくれたらしい。


『ふむ……』

「えと、ええと……はい!」


 特に役割は振ってないけどニュートも頷き、井手上さんは荒士さんの微妙な変化で察したっぽい。

 皆、即席の作戦をくみ取ってくれたようだ。

 双子もそうだけど、僕とこういうコミュニケーションが取れるからこそ選ばれてる面もあるんだろうな。


(……)


 千代松の手にあるイレズミ目も、何故かニマっと笑った。

 あー、向こうは向こうでなんか?

 それを見たカルネも何かを察したらしく、ゲートの向こうで頷いてからドヤりまくる。

 へー、アイツが承認するのか。


(くかかか……小娘、地上では幾ら強くとも空……や、海では手足も出まい。さあさ、お手並み拝見といこうか!)


『ふむ……海を慌てて追加したところから見て、攻撃は空か。やはりイプティックの役目は千代松への支援のみだな』

「ふふん、空なら望むところだ。――皆、いくよ!」


 最初に荒士さんの手元でカチカチ、シュウ……と音が響き、続いて小さな白煙が上がる。

 あ、これ少し待たないと駄目かな?


 次にイプティックたちによって千代松がブンと放り出された。

 空中で両手を下に向けてピンと伸ばす。

 燕尾服と合わせて、ペンギンみたいに見えるな。


「おい、勝手に動くな! なんだこれ……うおっ!?」


 バシュシューッ!

 空中でイレズミの目が怪光線を出し――うわっ、飛んだ!?

 千代松は怪光線を推進力にして飛翔を始める。アメコミの赤い強化服ヒーローかーい!


 最初こそは本当にペンギン状態だったけど、やがてスライダーみたいに軽快になる。

 驚いていた千代松もすぐ慣れたようで、満面の笑みを浮かべているな。


「お……おほほほーっ! こりゃいい――むぅん!!」


 掛け声と共に、手のビームがディスク状になって飛行が少し安定する。

 そのまま、楽しそうに空を飛び始めた。

 こっちは見てもいない。

 ちょっと楽しそうかも――とか考えつつ、チクタク感覚を蹴飛ばす。


 チク タク チク タク チク タク


 第三――加速のチクタク感覚で主観時間を引き伸ばしつつ、ウェブリーのグリップに手を掛ける。

 狙うのは――カルネに決まってんだろう!!

 皆に合図してたし、承認もしてそうだったし、そもそも()()にいるし!

 つまり奴がリーダーだ。

 頭は真っ先に潰すのが定石――だけど、ちょっとタイミング調整。いいかな? いいね!


 ズドン!


 重い軍用銃(ウェブリー)を、世界最速クラスの抜き打ちで撃つ!

 ゲートは双方向だから素通りだ。

 銃声と共に、ホラーの怪物みたいなカルネの顔へ455弾が突き刺さった。


 命中するけど……ふむ?

 ゲートの双方向部分って何処までなんだろうな……


 銃弾のダメージは――駄目か、カルネの硬いウロコで弾かれた。

 伊達に気色悪いワケじゃない。

 それでも一瞬怯み、こっちから目線を逸らす。


(かっ、かかかかか、この程度でオ――れぶバッ!?)


 パーン!

 カルネの顔面スレスレで、荒士さんの投擲した唐辛子弾・改が破裂した。

 あの距離を投げて当てるかー

 やっぱり忍者だよね、荒士さん!


「がぎゃああああっ! 目がー、目があぁぁ!! 口が、鼻もおおおっ!」


 そーねー、あの唐辛子弾は辛いよねー

 経験者の余裕でニコニコしつつ、唐辛子の拡散をジーッと見る。

 ふーん……よし、やれそう!


 ズドン! ズドン!


 ウェブリー・リボルバーを連射した。

 狙ったのは――ゲート本体!

 向こう側とは繋がってない部分、フレームの縁部分を狙って撃った。

 案の定、ゲート本体に致命的っぽそうなヒビが入った――のーでっ!


 ズドン! ズドン!


 さらに追撃の二発!

 それがトドメとなり、ゲートその物がバキバキと崩壊を始めていく。

 ふふん!


 崩壊に気付いたカルネは――あら、神性覚醒が解けた?

 素の白細い文学青年に戻ってる。

 父親のクラリネットを壊してしまった子供みたいに動揺しまくった顔になって、ナントカしようとアタフタ。

 そんな?


 子供みたいな顔でキャッキャと空中飛行を満喫していた千代松も気付き、泣き顔のカルネを鼻で笑う。

 こいつら仲悪そうだなー

 別に説教するつもりはないけど、もうちょっと相手へ敬意を持った方が。


「はっ、カルネの阿呆が。――やはり私が出るしかあるまい。この降魔院バルゼルが! はっはは、ガキどもは私が始末してくれ――らるろおっ!?」


 ズドン!


 くるっと振り返ると、空のかなり高いところで鼻高々にドヤってた千代松へ最後の455弾を叩き込む。

 お前も逃がすわけないだろー!


「――なんの!」


 おお、耐えた!

 さらに推進力に使っていたイレズミ目から、怪光線をこっちへ放つ。

 ただ射ち難そうだ。

 そーね、推進力にも使ってるから!


 さっと切り替えてズバッ、高度が落ちてサッと戻す。

 さっと切り替えてズバッ、高度が落ちてサッと戻す――


 よけやすいな!


『千代松、降りればいいと思うのだが』

「飛びたいって気持ちはわかるよ、うん。――格好いいしね」


 チラとマントを見る。

 こっちも飛ぶか――いや、僕も空中戦には慣れてない。


 それにプラトーを抜いたときも問題だった。

 今回はその……心の準備的なものが。

 ちょっと後ろ髪を引かれはするけれど――今回は飛ばずに防御だけしとこう。うん。

 マントをポン。


「よろ! ――あ、ちょ!?」


 マントへ防御を頼んだつもりだったけど……わっ! わわ、わー

 困惑した瞬間、高度を落としていた千代松の顔面でパーンと赤い爆発が!


「んっぎゃぁぁぁ!」


 唐辛子弾・改、再び。

 いつの間に!

 千代松は推進器たる目が手の平にあるから、自前の目を拭えない。

 それでもシパシパ頑張って何とか薄目を開けた。

 船を見下ろしつつつ、恐らく怪光線を僕の頭へ叩き込もうとし――必死に目をしばしば。


「くく、見えん……何処だ?」

「――ここだよ!」


 バッチーン!!

 奴よりさらに高空から、マントの尻尾でバルゼルの頭頂を引っ叩いた。

 打たれた箇所から電流火花が奔る。


「な……お、おほほほほっ、あひゃひゃひゃっ――うごゲガッ!?」


 ナイトゴーントのくすぐり攻撃だ。

 唐辛子弾との二段攻撃に、奴が反射的に手を動かし――完全にバランスを崩した。

 手に推進器があるのは不便だよねー

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