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ルルイエ浮上前の大正に転生しました、帰りたいです  作者: kaichi
第十一話:ノシエス/ノマエ
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Scene-02 スムースクリミナル

 チクタク チクタク チクタク


「……」


 ほー、へー?

 唇に指一本をあてると双子が頷く。

 ――あ、通じた!?

 自分でやっておいてなんだけど、「しーっ」のゼスチャーって大正でも通じるのか。


 次に服の上から、ホルスターに入れてるゴツい軍用拳銃をポンポン。

 さっきのジェスチャーと合わせ、景貴と清華は何を言いたいか察してくれたようだ。

 景貴は頷いてから外へ、清華は耳元にグーを当ててから兄の後を追う。

 二人は全力で駆けていった。


「……」

『首をかしげるな、瑛音。二人は援軍を呼びにいったのだ、事務所の電話は止まっている』

「――ああ!」


 そうか、清華のグーは固定電話のゼスチャーか。

 電話も止まってると言っていたから、外に公衆電話を探しに行ったと……不便だぞ、大正時代!

 ニュートがやれやれと溜息。


『それより、何がどうした?』

「カタギには見えない変な三人組がこっそり入ってる。いま二階。ただし鍵は持ってた」

『双子を行かせてよかったのか?』

「神話使いの気配はなかったし、いーんじゃないかな」


 一階に誰もいないことは知ってるので、そっと二階へ。

 階段を上がると煙草くさい休息所がある。

 登り切る直前、肩から顔を出したニュートが鼻を突き出して、ぴすぴす。


『瑛音、変な匂いがするぞ。何だこれは……?』

「君でも分からないのか。だったら景貴と清華が戻るまで待つべきかなあ」


 うーんと悩む。

 相変わらず音はない。――なさ過ぎた。

 息を潜めているな。


「――ま、別にいいか」

『うむ、行くか。頼んたぞ、瑛音』


 りょ!

 ニュートと一緒に音もなく走り出すと、一番奥の扉を問答無用で蹴りあけた。

 元は書庫だったようだけど、大半の本は床にブチまけられている。ニュートが怒りそう……というか、後ろで間違いなく怒ってるな。


 部屋には三人の男たちがいた。

 まず快晴の冬なのに厚いゴム引きのレインコートを着た男。こいつだけ開け放った窓の前にいる。

 扉の両脇には奇襲しようとしていたらしい元軍人っぽい二人組がいた。立派なモミアゲの人と、丸刈りの人。

 二人は入ってきた僕を見て、露骨な溜息をついた。


「ちっ、面倒くせえな、ガキかよ。――おい、扉押さとけ」

「おお」


 モミアゲがニヤつきながら扉を閉める。

 丸刈りは、ゴッツい手でをこっちの口を塞ごうとしてきた。


「けけっ、運がなかった嬢ちゃん。悲鳴はあげ……んっぎょー!?」


 掴まれる寸前に丸刈りの指を一本掴み、ゴキンと捻りあげてやる。

 指を捻られた丸刈りが悲鳴を上げて体勢を崩したので、すかさず足払い。

 身体が宙に浮く――けど、指は握ったまま。けけ。


「ぎょおおおっ――ぐぼっ!」


 痛みで背筋ピーンのまま落下し、ドカッと頭を強打して沈黙する。

 生きてる? 生きて――るね。ならばよし!

 ぽいと指から手を離しつつ、扉を押さえてたモミアゲへ今度はお前だのゼスチャー。

 あっさり挑発に乗ってきた。


「ガキ相手に……ちっ、間抜けが!」


 モミアゲは本気を出す気になったらしい。

 腰を落として腕をくの字に曲げ、両拳を口の前ぐらいに構えた。

 おや、ボクシングだ?


「へー、もうあったんだ」

『既にプロもいる。ただ……グランドやローのない格闘技で何をしたいのだ』


 ですねー

 モミアゲは自分の強さをアピールするかのように、シュシュとシャドー

 おーい、せめてこっち向いてやれー


「へへ、遊んでやるよクソガ――ギガッ!?」


 シャドーのジャブが引っ込むタイミングで懐に飛び込み、無防備に突き出した向こう脛へブーツの先端を叩き込む。

 痛みでモミアゲの顔が爆発した……って、おまツバ飛ばすな。閉じてて。

 真下へ飛び込むと、掌底でアゴへ思い切り打ち上げる。


「――ぶごっ!!」


 上顎と下顎がバチーンと閉じられ、衝撃が脳天を直撃する。モミアゲの目がグリンと裏返った。

 舌噛んでない? 噛んで……ないね。ならばよし。

 なーむー

 二人をあっさり倒した僕を見たレインコートの男は、旅行鞄を大事そうに引き寄せながらボソリと呟く。


「お……お前、まさかイーフレイム・エフォーか?」


 おやおやおや、おーやー?

 にっこり。

 あと意外と声が若いな、レインコート男。


『瑛音、いまの一言は聞き捨てならん。可能なら生かして捉えてくれ』


 りょー

 とりあえずイーフレイムについてはトボケておこう。


「――イーフレイムって誰です? 僕は通りすがりのケチな探偵ですよ、変わったの専門のね」

「お前みたいな探偵がいるか!」


 ここにいるよ……というツッコミより早く、レインコート男が分厚い本を持ち上げた。

 ええ、まさかブラックブック!?

 慌てて神話に警戒する――警戒した瞬間、投げつけられた本の角がゴスッと顔に直撃した。

 ハードカバーァァーのカドがーっ!


「うががが……おま、そーゆーのアリかー!?」

『瑛音、何をやってるか!』


 レインコートは本格的に本を投げつけ始めた。

 分厚いのを何冊も、何冊も。

 たちまち足元がハードカバーの本だらけになるけど、まー、そんだけ?

 流石に二度もくらったりはしない。

 イーフレイムの名前を出しててコレかい……ん?


 最後にロープを投げてきた。

 先端にはフックがある。

 足元が本だらけで動き難いとはいえ、そんなものに掴まるわけないだろう――うっ、ひえぇ!?


 ゾクゾクッ!


 ロープに気を取られた隙に、足元を何かが撫でた。

 神経に障る衝撃が足から腰を通り、背筋と首筋をピリつかせつつ脳天を直撃する。

 なななな、なんか細長いモノが足を撫で――って、おま、まさか性的に撫でてやがりますか!?


 きっしょぉぉぉー!!


 とか思った瞬間にパッと感触が消えた。

 嫌な汗が噴き出る。

 一瞬のことだったけど、集中が乱れるには充分過ぎた。――ロープを腕に引っかけられる。


『おい、どうした瑛音!?』

「……」


 たぶん、こっちは顔真っ赤だな。

 ――ごほん!

 絡まったロープをグイグイと引かれる。

 ほ、ほー、僕にロープファイトを挑もうと……ふふん、軽いと見て侮ったな。

 そう思った瞬間、フードがニヤリと笑う。

 ――そして窓から飛び降りた。当然のようにロープは持ったままで!


「えー、そういのありかーっ!?」


 ロープがピンと張り、そのままドタンと床に引き倒された。

 ズルズルと引っ張られる!

 さっきの影響もあってか、下半身にも微妙に力が入らない。上手く踏ん張れないー


「軽い体重を侮るかと思ったら、侮ってなかったー」

『瑛音、解説はいいから――あ、本を踏むな!』


 ニュート、相棒への愛がなーい!

 ロープを外そうにも、引っ張られてる最中では無理だ。

 このままだと壁にぶつかるな。

 そこできっと引っかかり、レインコート男が安全に降りるためのフック代わりに使われるんだろう。

 窓枠はどんどん近づいてくる。どうする――


「まー、いつもの手でいいか」


 まず前転して立ち上がる。

 くるん。

 高いところから安全に着地するときによくやってる、パルクールロールの要領だ。

 そのまま走って、窓枠から――ダイブ!

 自分で窓から飛び降りてやった。

 先に飛び降りていてたレインコート男は窓から飛び出した僕を見て、本気で驚いてるようだ。けけ。


『瑛音!?』

「たった二階程度、だいじょぶ。でも念の為ニュートは降りてて!」


 ニュートを部屋に投げ戻す。

 華麗にキャット着地!

 レインコート男はそのままグシャリと落ちたので、こっちはその上に着地してやる!


 ――ドスン!

 見事キレイに着地し……ん!?

 即座バッと離れた。

 二階の窓からニュートが顔を出す。


『瑛音!?』

「なんだ今の感触、衝撃が全然伝わってこない……あ、だいしょぶ!」


 こっちにダメージないけど、多分アイツにもダメージはない。

 あれなら銃も駄目かも知れない。

 ならば魔剣プラトーを抜くべきか――そう考え、首を振った。


 今は駄目だ。


 そういう事情がある。あるったら、ある!

 がるるる!!

 消去法でステゴロを覚悟しつつ、ロープを外しながら男の元へ駆け寄った。


「話を聞かせて貰おう、その場から動くな!」


 威勢よく叫んではみたものの、うう、ちょっとコレ……

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