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ルルイエ浮上前の大正に転生しました、帰りたいです  作者: kaichi
第七話:フライト・ナインティーン(2)
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Scene-05 アンパラレルド

『瑛音、さっきから気になっていたがコイツ誰だ?』


 ああ、そっち?

 そういえばビヤーキーに襲われた時が最後だから、説明してないか……

 双子も桂を知らないから、不信バリバリの目だ。

 そーね、急に出てきた桂を信じる要素が何処にもないよねー


「皆、紹介しておくね。コレはダゴン四銃士のカイトー・ケイ。彼女は井手上さんの回復に役立つから、帰還まで協力関係」


 景貴が頷く。()()呼ばわりで大体察したらしい。

 清華は動かない――銃に手をかけるタイミング見計らってますね、この娘。

 物騒な育て方されてるなー


「瑛音さま、こいつが裏切った場合は……?」

「僕を裏切ったら撃って。判断は任せるけど、撃つときは急所に最低二発」

「うむ、妥当だろうな」


 僕に、蔵人さんの了承付き。

 双子たちの目に納得の光がパッと灯った。


「はい、瑛音さま、お爺さま!」

「あうう……」


 現実の厳しさを味わってる桂の学生用マントをくいっと引っ張り、双子に相対させる。

 ついでに、引っ張ったときの桂の体幹も確認。

 やっぱりかなり鍛えられてる。


「桂、こっちの双子は伯爵の孫で景貴(かげたか)清華(さやか)。僕のフードにいる黒猫は相棒ニュート」

「よ、よろしくお願いいたします。ネコちゃんも、よろしくねぇ……え?」

『……』


 ニュートの猫目に睨まれた桂が、蒼ざめながらそーっと手を引いた。

 うん、分かるようならヨシ。


「桂、僕たちをアラート号へ案内して」

「か、構いませんが……伯爵様、無事にご帰還されましたら『水の起源』を一目でも閲覧させていただけないでしょうか!」


 学生服にマント姿の桂がピシっと動く。

 流れるような――土下座!

 大正時代の人は姿勢の良い人が多いけど、彼女は特にいい。

 蔵人さんもそう思ったらしく、鷹揚に頷いた。


「全身全霊を込めて瑛音さまのお役に立て、次第によっては考えてやろう」

「はいっ!」

「うむ――では瑛音さま、ご無事の帰還を祈りますぞ!」


 井手上さんを乗せた車が全力で去って行く。

 そこで、ようやく旧支配者二柱がもっさりと離れた。

 うぷ、砂と大波が飛び散る!

 桂はそんな惨状の中でガバッと立ち上がると、物欲と知識欲でキラキラと輝く瞳で覗き込んできた。


「瑛音さま、何なりとご命じ下さい!」

「アラート号を取り戻す。あと帰ったら『水の起源』は燃やす」

『にゃにい!?』

「お慈悲を! あ、父の情報とか要りませんか? 教団や四銃士の内情とかも……!」


 桂が両肩に縋り付いてくる。近い。

 ニュートは血相を抱え、フードから肩に駆け上ってきた。

 前脚で頬をムニムニと突かれる。


『水の起源とはどーゆーことか、説明を求めるぞ!』

「蔵人さんが()()やらかしたっぽい。問い詰めるのは帰ってからの予定」

『おおお……旧支配者が奪い合った寝所《無名都市》や《カルコサ》を幻視したブラックブックを! ――あの男、有能で忠誠心メガ盛りの分だけタチ悪いな!』


 ニュートが僕の肩で頭を抱えてる。

 桂はそっちを見て、僕の顔を見て――そのまま視線を固定した。

 ん? どしたん?


 喋らなければ凛々しい彼女の顔が、みるみる沸騰していく。

 えーと……僕の顔に見惚れた?

 毎日見てるけど、そんなにいい顔かなあ……イーフレイムを知ってる井手上さんなんて、たまに飛び上がるときもあるんだけど。


「でで、ではアラート号へご案内いたします、瑛音さま!」


 アラート号は丹後丸とは反対側にあるらしく、桂が逆方向を指した。

 ――ああ、確かにずっと先に船があるな。


「皆、荷物を持って」

「重い物はお持ちます!」


 桂がすっ飛んできて景貴の大型背嚢を背負った。

 景貴が持ち運べるギリのサイズなので、高校生くらいの桂でも十分持てる。

 清華の荷物は僕が持ってあげた。

 こっちは転生して得たチート持ち肉体なので、清華の持てる程度の荷物は苦でもない。

 ついでにウェブリーに弾を補充しておく。


「瑛音さま、旧支配者がこちらに!」

「よし、走れーっ!」


 来るっていうか、転がって……ぎゃー、わーっ!

 全員で全力!



 ぜー、ぜー!

 しばらく走ると、どうにかアラート号に辿り着いた。

 僕の感覚だと小さめ船だけど、大正時代からすると結構な大型船だろうな。

 帆はないので動力船か。

 船腹には桂の使ったらしい縄梯子がかけられている。

 

「桂、中には何かいる?」

「潜水服の怪人たちが、船内に入ろうとする翼の怪物と激しく戦っていました」

「どっちか君の味方になる?」

「なりませんー、どっちからも攻撃されましたあ!」


 とか言ってる間に、甲板から歯車のタップダンスが響いてくる。

 潜水服怪人が出たか。


「行く!」


 右手にプラトー、左手にウェブリー・リボルバー・マークⅥを構える。

 そこへ光弾の雨が降り注いだ。

 散々撃たれたせいで筒の収束が甘いのは分かっている。分かっているんだけど……心臓には悪いっ!


 チク タク チク タク


 チクタク感覚のネジを、なるべくゆっくりと巻き戻す。

 そのまま加速した。


 風景が溶け合って後ろに流れ――ない! させない!

 加速チートは光弾を避けるための方向転換と、そこからトップスピードまでの再加速に限定。

 そうやって僕に制御できて、身体が耐えられる加速を維持する。


 光弾を避けつ、縄梯子を駆け登った。

 登り切る寸前ガキン、ゴシャっとギア音を響かせながら、潜水服怪人がこっちを覗き込んできた。


 ギャリ……ギリギリ


 出足が遅いぞ、金魚鉢頭!

 甲板に顔が出た瞬間には既に左手の銃を構えている。狙いは――潜水服ヘルメットにある、のぞき窓の一つ!


 パパパパ――パキン!


 銃声四つに、厚いガラスから上がった火花が重なる。

 その横をかすめて甲板に走り込んだ。

 周囲確認、他の潜水服は――いないね、よし!


 振り替えると、追加でトドメ二発!

 命中した金属製のヘルメットが鐘みたいにブレ、それがトドメになった。

 のぞき窓が割れ、レンズの隙間から――え、水!?


「もしかして、中は水が詰まってるのか――うえ、触手ぅ!?」


 潜水服怪人は生臭い水を垂れ流しながら、甲板に倒れ伏してジタバタと痙攣を始めている。

 レンズに空いた穴からは、触手がにゅるんとはみ出して――ああ、そっか! コイツら蛸的な《深きもの》だ。

 《深きもの》って、魚とか蛸とかバリエーションがあるんだ。別に知りたくなかったけど!


「ええええ!?」

「桂?」


 昇ってきた桂が、甲板で悲鳴を上げている。

 何に驚いてるんだ?


『瑛音、もしかしてだが……あの女、神性を浴びた人間がどうなるか知らないのか?』

「まっさかー!」


 うーん、まあ……いいか。

 後、後!

 ウェブリーをリロードしている横で、景貴と清華が昇ってきた。


「瑛音さま、それでここからどのように」

「桂、エルダーサインをこの船のどこかに描いて。まるべく真ん中がいい。僕らはそこを死守!」

「と、父さんは、アレと――あ!? しょ、承知いたしました、瑛音さま! 貴重品を収める船室がございますので、そこへ……!」


 ご家庭の諍いを愚痴りつつ、荷物を持って桂が走り始めた。

 走り方に動揺の影響が出ている。


『瑛音、そういえば何であいつはお前を「さま」付けするのだ?』

「さあ?」


 ごめん、本当に知らなくて。

 船室へ続く階段室に飛び込むと、下に潜水服怪人の新手がいた。

 こっちに筒を向けようと――


「だから遅いんだよ、お前たち!」


 チク タク チク タク チク タク


 ウェブリー二発で筒を弾く。

 そのままダッシュで階段を降りて怪人の懐へ入り込むと、回し蹴りで筒を吹っ飛ばした。


 そして腹へプラトー!


 だけど水平に薙ぎ払った刃がガキンと止まった。

 ちい、この潜水服は意外に硬い!

 ――って、そっか。中にタコ入れてるんだから、硬くて当然か!


 潜水服怪人が拳を耳の後ろへ惹いた。

 テレフォンパンチ?

 こんなドン亀の攻撃、怖くもなんとない――そう余裕ぶっこいた瞬間、蒸気音が階梯を駆け上る。


 ガッシュ――シュオオオオオオオッ!


「へ? なん……うわっ!?」


 バシューッ!

 解放された圧縮蒸気の力が潜水服の脚部、膝、腰部、そして肩へと伝わり、最後の腕で右ストレートに変換される。


「じょ、蒸気機関って――あー、こいつら《水のもの》か!」


 確かに水のモノなんだから、水を使った技術くらいあってもいいだろうけどさ!

 不味い……攻撃がマジに早い。

 マトモに避けられるような速度じゃないぞ!?

 なので――


 チク タク チク タク チク タク


 咄嗟に蹴飛ばした意識のスイッチが入り、チートが発動する。

 間に合うか……ええい!


 プラトーが間に合った。

 ベラボーな速度のストレートを辛うじて弾き、その勢いを利用して後ろに下がる――いや、懐へ入るっ!

 

 瞬間的に二択の一つを選んだ。

 突きで仕留めてやる!

 弾いた勢いから回転し、ポジションシフト。背面から正面を向く回転の頂点で、逆手の両手持ち替えたプラトーを――


 ボッ!


 ほんの一瞬前まで頭があった位置を、何かが通りすぎた。

 速度は――音速を超えてた!?

 

 衝撃を出したブツを目の端で捉えた。

 ににに、二の腕ぐらいから何か尖ってるモノが伸びてる!? ――って、杭打ち機(パイルバンカー)か!


「おま、そのスパロボみたいな攻撃ちょっと卑怯じゃありませんか!?」


 自分のことは棚に上げつつ、回転の頂点でプラトーの切っ先を装甲の隙間へ滑り込ませた。

 一点へ、全身全霊を込める!

 潜り込んだ切っ先から爆発のような勢いで水が溢れだし、心臓みたいな筋肉器官を貫く感触が伝わってきた。


 それで僕が勝つ!

 勝つ……勝ったけど、背筋は凍り付いたままだ。

 船内には潜水服がまだいるワケで!


「ニュート、敵が無双させてくんないんだけど!?」

『愚痴ってる暇はないぞ、瑛音!』

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