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ルルイエ浮上前の大正に転生しました、帰りたいです  作者: kaichi
第六話:フライト・ナインティーン(1)
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Scene-05 ロングサイド・オブ・ザ・スカイ

 カン カン カン カン ――ギイ

 

 狭い梯子室から床の跳ね上げ扉をそっと開くと、ニュートと一緒に隙間から覗く。

 上部デッキ……?

 いかにも船っぽい、短い通路の端っこらしい。

 まだ夜らしいけど、大きな窓から差し込んでくる銀色の光で視界には困らない。

 夜……で、いいのかな。


 念のため窓から顔を出さないようにして、通路内の安全だけ確認する……だいじょぶかな……大丈夫? よし、大丈夫!

 するりと通路に這い出すと、壁に背を付けて一息。


「ふう……ニュート、エンジンルームから上への梯子が延びてること、よく知ってたね?」

『船によくある普通の構造だ。それより、こちらも助かったぞ。俺だけだと梯子は登れないからな』


 頼りになる相棒と指先ちょん。ふう。

 落ち着くと、今度は窓の外を確認する。

 窓の外から溢れているのは月光らしいけど、異様に明るいな。たまに光りが瞬くのは、雲だろうか。

 肩に乗ってきたニュートと一緒に、窓から覗いた風景は……


「鳥取砂丘でいいのかな……」

『んなワケがあるか!』


 窓から見えていたのは、まあ……ええと、文字通りの砂漠だ。金色の海みたいな砂が、これでもか! と、広がってる。地平線は砂嵐っぽいもので煙って、それ以上が見通せない。

 どうりで、船なのに揺れてないと思ったよ。

 天空にはやたらに大きな月が2つ浮かび――ふ、ふたつ!? それが銀色の光りを投げかけている。その上にある星座の形は……地球っぽくない。

 あの派手な天の川みたいのは何だ。


「ええと、うまい言い方が欲しいな……」

『《幻想》の可能性があるな。誰かがアルデバランを天空に頂く大地を夢見ている』


 地球じゃないとは認めたくなかったから、ニュートの言葉に心底ほっとする。

 誰かが視ている幻想なら物理的には移動していない。

 していないと、いいな……

 転生だけでもお腹いっぱいなのに、このうえ星間移動とか勘弁して欲しい。


「牡牛座の星だよね。――で、何がいるんだっけ?」

『ハスター』


 まじかー!?

 へなへなと崩れ落ちた。


「四大の旧支配者、その一角とご対面するかも知れないのか。短い上に波瀾万丈な人生だったなあ……」

『気をしっかり持て、瑛音! ここが《幻想》ならば、絶望するのは早いぞ』


 ニュートがひらりと床に飛び降りた。


『まずは装備点検!』

「プラトーは大丈夫。チートは……さっきのだけ。それも今はガス欠。ウェブリーの通常弾は全部で八発、対神話弾も六発ある」

『うむ、よし』


 ギシ、キャリ、キリリ……


 窓の外、でも船のどこか……おそらく甲板あたりから、あの音が響く。

 ニュートを肩に乗せつつ、二人で溜息を付き合った。


「下のが上がって来たのか、それとも甲板に二体目がいるのか」

『瑛音、あそこを……不味いぞ!』


 ギャリリリリ――ドッパー!


 うひゃあ!

 そーっと窓から覗き込む。

 広い甲板に潜水服のアイツが立っており、空へ向けて武器を叩き込んでいた。

 火花をバチバチと上げながら光弾が夜空に吸い込まれ――血煙が上がる。血と肉片がバラバラと降ってきた。

 空に何かがいる?

 何か――人間と爬虫類と昆虫を混ぜたような、ぶっさいくな大翼ある怪物!


「ビヤーキー!?」

『瑛音、そっちも問題だが違う! あっちだ、あっち!』


 切羽詰まったニュートが指す方向を見直す。

 金色の砂漠に何かの線が――ズルズルとかき分けられたのは、墜落の跡?

 その先にあったのは……飛行機か!?

 上下二枚あった翼は引き千切れかけ、折れた機体には赤い丸のマーク……日の丸が描かれている。


「ロ号だ……なら井手上さんが!」

『井手上は我らと違って旧支配者と接触しておらん。今日は呪文もない!』


 とは、言っても……

 潜水服は一体、ビヤーキーは三匹――いや、さっき二体に減ってたか。

 すごいな、あの武器!


「ニュート、潜水服さんは実は良い人で、井手上さんを助けようと……」

『……』

「うん、そうね、そんなわけないよね」


 肩にいるから、超至近距離で睨み付けてくる猫目が痛い。

 ニュートがまたフードに戻った。

 

『奴がビヤーキーと戦っているのならば都合がいい、隙をみて井手上を助けるのだ』

「りょ!」


 そうだ、四の五の言っても始まらない。

 僕はスーパーヒーローにはほど遠いけど、でも仲間を見捨てる気にはなれない。

 まずはウェブリーのリロードを済ます。

 初弾は対神話弾、次弾からは通常弾三発、最後に対神話弾二発の順に弾を込めた。

 短い通路を抜け出ると慎重に外階段を降りていく――


 外は変な色の夜空、銀色の月は2つ。甲板から外へ目を向ければ、地平の果てまで広がる金色の砂漠がある。

 そこに飛び散る光弾!

 甲板ではビヤーキー二匹と、潜水服怪人との死闘が繰り広げられている。

 潜水服は光弾を、ビヤーキーも口っぽいところから衝撃波を放ってる。うええ、ビヤーキーって顎が3つに分かれるのか。きっしょ!

 両者の戦いで空気がビリビリと震える。


「あのドサクサに紛れて、そっと砂漠を渡るね……」

『うむ!』


 意識と気配を全方位に配りながら、タイミングを見計らい――いま!

 音もなく甲板を走り抜ける。

 音もなく……あれ、音がしてる。何だ?


 ……ド……タドタ……ドタドタドタ!


「たーすーけーてー!」

「へ?」


 黄色い悲鳴が甲板へ続く階段を駆け上がって、音も無く甲板を進む僕のところへ飛び込んでくる――っていうか、多分たまたまっぽいけど!

 ぶつかってきたのは、小柄で華奢な身体に黒いマントと学生服を着た……


『ダゴン秘密教団のメンバーか!?』

「おまっ、ちょ、逃げるなら逆行け、逆!」

「あああ、さっきいた人……たた、助けてくださいー!」

「知るか……あ!?」


 ギャリリリリ――ドッパー!


 階段下から別口の光弾攻撃が放たれ、雨あられと降り注ぐ。さっき下でやり過ごした奴か!?

 不味い、マジに不味いっ。

 ええい、こうなったら力技だ。甲板から下の砂漠へダイブして、チートを発動できるか試し――って、ちょ!?

 マントの端にひしっと掴まられた。

 掴んだ相手は必死の涙目だ。


「お願いします、何でもします、もう好き嫌い言いません、父さまのお言いつけ通りに普通の服も着ます。だから、たーすーけーてー!」

「一人でどいっかいーーうおわっ!?」


 か、かか、掠った!

 光弾が!!

 引きずったまま甲板から飛び出すと、柔らかい砂の上に学生服のドグサレともつれて落ちて――あ、あ、あれ?

 下敷きにした学生服の胸をガシガシと揉みし抱く。

 四銃士の男……ではなく()()は、泣き笑いしたまま両手を挙げた。

 年頃は景貴、清華よるずっと上。高校生くらいだろうか。

 汚れまくった顔から伸びてる髪は長いけど、学生なら男でも長髪がたまにいるので全然気にしてなかった。


「な、何でもするって言いました……いいました、から……あうう」

「ニュート、こいつ女だ」


 ――口に出して後悔する。

 しまった、配慮!

 LGBTの人への配慮が欠けた発言だった。


「ごめん、君の心の性別を尊重する」

『落ち着け、瑛音! それと四銃士に女はいない筈だぞ。あと上からビヤーキーが急降下してきてる!』

「ぐがががが、台無しじゃーん!」


 へたり込んでる銃士の尻を蹴飛ばして立たせる――この辺は男女平等!

 僕は……若干納得できないものを感じつつ、迫るビヤーキーにウェブリー・リボルバー・マークⅥを向けた。

 銃士の少女は二、三歩進み、へたり込む。

 へちゃっと。

 こうしてみるとお尻が大きい。そんなのを感じさせない清華の男装は上手かったんだな……じゃなくて!

 少女は精神が崩壊する一歩手前みたいな涙目で、こっちを見て――


「ええい、何処へでもいいから逃げろ!」


 こっちへ向かってくるビヤーキーに向け、走り出す。

 奥には、もう一体のビヤーキーと潜水服怪人が激しく戦っている。そして甲板からも潜水服怪人の気配!

 僕にとって、この全員が敵になる。

 

 昆虫と翼竜を混ぜ合わせたような大翼を広げ、ビヤーキーが口を大きく開けた。

 舌のない口を三方向に大きく開くと、不快な鳴き声を放つ。声っていうか、衝撃波か!?

 何重ものリング状波だ。

 ギリ躱した――うそ、掠った! いたああああっ!

 足に激痛が遅う。し、痺れる。


 辛うじて倒れるのを堪え、頭だけ向けた顎の真芯へカウンターで対神話弾を叩き込んだ。

 ビヤーキーの顎が翠炎で膨れあがり、次の瞬間パーンと砕け散る。


 GRAAAA!


 よく分からない叫び声を上げ、錐もみで――上昇されたか!

 息の根を止めるには至ってない。

 追撃の一撃を放とうとしたところで、別方向から光弾が雨あられと降り注ぐ。最初からいた奴が、筒状の武器を放ってきてる。


「こ……のっ!」


 チートを起動させ……まだ駄目か!

 でも、か、辛うじて避けられ、たっ……

 ボロ切れみたいに砂漠に叩きつけられるけど、すぐに起き上がる。

 ぶん回してるせいで光弾の収束が甘くなってるのと、ビヤーキーを狙った()()()だったから助かった。


 無事なビヤーキーが隙をみて、空中から潜水服怪人へ衝撃波を放つ。

 外れるけど、その外れがこっちに――こ、のぉっ!

 着地する。

 ずっと背筋が凍りっぱなしだ。激しく動き回ってるのに、むしろ体温が下がっている。

 

 大分近づいたので、墜落している飛行機をチラと見た。

 ――誰かいる!

 ハイカラさんの恰好をした井手上さんで間違いない。それが操縦席で引っ繰り返っている。


「ニュート、ごめん……ここで時間を稼ぐから、井手上さんを」

『いいが、オレが行ってどうする!?』

「レテの書にスペル破り(アジュアリート)か何かを書き込んで、君と彼女だけでもここから脱出を!」

『……』


 ニュートが秒未満の間、言葉を切った。

 物凄い勢いで考えている。

 やがて小さく、でも力強く頷いた。


『お前が《神託》から逃げるわけにもいかんしな……援軍を連れてすぐ戻るぞ、相棒!』

「よろ!」

色々と忙しくて大変ですが、次回はまた来週の予定です

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