6話 初狩猟
そして俺は四歳になり、兄が学校へと進学した。どうやらこの世界の学校は数が少なく、生徒達は皆寮で生活をするそうだ。こんな年で一人暮らしを強制させられるなんて大変だよな。俺なんて高校生でも実家暮らししてたっていうのに。
「アルファ、俺が居なくてもちゃんと魔法の訓練をするんだぞ! お前は俺と違って才能がないからその分しっかり努力するんだ。そして、俺と同じ学校に来るんだぞ、分かったな?」
「う、うん」
俺の兄フォリオは何でも俺たちが行ける学校の中でもっともレベルが高いとされる学校、シュメール学園に入学したようだ。しかも主席で。
俺が三歳の頃は五歳で魔法が使えて凄い程度にしか思ってなかったが、ちゃんと天才だったみたいだ。それに対して俺は、四歳でもまだ火魔法が使える兆候すら見えなかった。
「フォリオ、ちゃんと毎週手紙を書くのよ、わかったわね?」
「はい、お母様! では、行ってまいります」
そんなこんなで兄の送別会が終わって、フォリオは学園へと出発した。それにしても毎週ってどんだけ親バカなんだようちのママは。俺も学校に通い始めたら毎週書かなきゃいけないのか?
❇︎
そこから時は流れ俺もとうとう五歳になった。五歳になるといよいよ外に遊びにいけるようになり、活動範囲がかなり増えた。それに食卓に並ぶお肉も普通に食えるから人並みには肉欲を満たすことができていた。
だが、どうしても我慢できなくなった俺は、家からこそっとナイフを持ち出して森へと遊びに出かけた。
森に一人で立つと、なんだか自然と一体化できたように感じる。五歳で身長が低いのもあって俺はほぼ獣目線で大地を感じているのだ。そして、
「【植物共鳴】、【感覚共有】」
毎日欠かさず行っているこの植物共鳴と感覚共有をこの森で、しかもかなりの広範囲を対象に使用した。植物から聞こえてくる声と感覚で俺は、
「見つけた」
獲物を見つけた。第二の人生初の獲物はどうやらイノシシのようだ。先ずは、感覚共有を行う植物を限定して常に目を離さないようにする。流石に常時展開してたらいくら慣れたとはいえ、普通に死ねる。
そして、とうとう俺の目にもイノシシを捕捉した。俺がイノシシを見つけたということはもちろん相手にも見つかったということで、
「ブヒーーー!」
俺を見るなり襲ってくるとかマジでイノシシなんだな。だが、その猪突猛進さを利用させてもらうぜ?
「成長促進!」
俺はイノシシと自分との間の植物を一気に成長させた。すると、それらは壁の様にイノシシに立ちはだかり、
ボフッ、という音とともにイノシシを包み込んだ。実際の壁とは違うから衝撃を与えられるわけではないが、植物だからこその良さもある。俺はさらに植物を成長させることでイノシシを完全に捕縛することに成功した。
そして慎重に近づき、脳天に家からパクってきたナイフで脳天を突き刺した。先ほどまであれほど元気だったイノシシが一瞬にして静かになった。
これが命を奪うということ、か。ちゃんと感謝して食べないとだな。
「いただきます」
俺は皮を適当に剥ぎ、肉に思いっきり食らいついた。火を使わなくて良いのは健康体様様だな。
「うんめーーーっ!!」
溢れ出る獣感と、自分で獲ったという達成感、そして何よりコク深い赤みと体温でとろける脂身が絶妙なハーモニーを奏でている。これ地球でも流通させたほうがいいんじゃ無いのか? って言うくらい美味い。
俺は超消化にものを言わせて可食部を全て平らげた。
そうやって俺の異世界に来て最初の狩猟は大成功に終わった。
家に帰る頃にはすっかり日が暮れており、泥んこの体と血だらけの口元を見て母親は気絶したのだが、それはまた別のお話。
「きゃーーーーー!!」