3話 アルファ
目を開けると俺の視界はまるで水の中にいるかのように、ぼやけていた。俺は今一体どこにいるんだ? 俺は今すぐお肉を食べたいと言うのに。
体を動かしてみようにも上手く体が動かせない。力を入れようとしても転ばされるように力が抜けてしまう。はぁ、さっきまではあんなに女神だったのになんでこんな所に転生させたんだ? まるで俺がまだお腹の中にいるみたいじゃないか。
「!!」
お腹の中? もしかしてまだ俺、生まれていないのか?
そんなことを考えた瞬間、俺は突如として物凄い勢いで引っ張られた。いや吸い込まれたと言うべきだろうか。抗うこともできない奔流に流され俺は自分の現状に理解する間も無く最終地点に到着した。
そして理解した。今、この瞬間に精を受けたのだと。
「う、生まれたのか!?」
「えぇ、貴方。立派な男の子ですよ」
頭上から男の人と女の人の声が聞こえてきた。どうやらこの二人が俺の父親と母親のようだ。それにしても本当に生まれ変わったみたいだな。未だに夢なんじゃ無いかと思っているが、この感覚は前世でも味わったことがないから多分、現実なのだろう。
「火の神アルフォード様には感謝しなければな。そうだ、名前はアルファ、なんてどうだ?」
「あら、素敵ですね。アルファ、私たちが貴方のお父さんとお母さんですよ」
俺の母親はそういうと俺のほっぺに柔らかいキスをした。
あぁ、これが親子の愛情か。そういえば前世は酷く親不孝な人生だったな。せっかく転生したんだから今回の人生くらいは両親を幸せにしたいな。
そんな幸せな気分の中、俺は沈むように眠りについ……
ん、火の神!? ちょっと待て、ちょっと一旦待ってくれないか。火の神ってどう言うことだ? 俺をこの世界に送り出してくれたのは緑の神だろう? 火と緑がどのような競合関係なのかは知らないが、少なくとも仲間ではないだろうし、ましてや同一の存在では決してないだろう。
え、え? どゆこと?
俺は生まれて早々、困惑の渦に巻き込まれながら眠りにつくこととなった。
❇︎
そんなこんなで俺の第二の人生で一週間が経とうとしていた。いや非常に素晴らしいな転生というのは。赤ちゃんである以上、何もしなくていいし、気づいたら身の回りのことは何でもしてくれる、最高の環境だ。
そんな中まだ肉を食べることはできないが、恐らく神様の願いとしては今を準備期間に充てて欲しいと思っているのだろう。唯一したお願いがお肉を食べて欲しいということだったから相当俺に食べて欲しいはずだ。
だからなるべく早く沢山食べないといけない。まだミルクしか飲ませてもらえないが一刻でも早く成長した姿を良心に見せ、肉を与えてもらい、更には自分一人でも狩りができるようにならなければ。
その為に必要なことは女神から与えてもらったスキルを強化することだ。使えば使うほど強くなるって言ってたよな。よしじゃあ早速使おう。生まれて一週間でスキルを使い始めれば周りと相当さを広げられるんじゃないか?
よし、ステータスオープン!
そう念じると目の前に一枚のウィンドウが出現した。