2話 使命と転生
「て、転生!?」
「はい。そうすれば貴方が生きていた頃よりももっと豊富な種類のお肉を食べられますよ」
ま、マジか。これはヤバいな。何がヤバいって死んだ悲しみよりもも色んな肉を食べられるという喜びが勝ってしまってるってことだ。だって肉を食う為に生きてきたみたいなところがあるからな。正直もう既に俺が死んだことなんてどうでも良くなってしまってる。
「ん、待てよ。でもこのまま転生したところでまた食中毒になって死んでしまうんじゃないか?」
これは大きな気づきだ。俺はこれに気づかずに、いや目を逸らして死んでしまったのだからな。色んなお肉が食べられると言っても、現世の二の舞を演じては話にならない。
「そちらも安心してください。転生する時に少し丈夫な体にしておきます。ですので生肉くらい死ぬほど食べても死ぬことはないでしょう」
な、なんだって!? マジか、転生してくれる上にそんなサービスまでしてくれるのか? ヤバい、もう一刻でも早く転生したい。
「残念ながら転生する上でまだ決めなければならないことがあります。それは出生です。貴方は王族、貴族、平民、浮浪者、迷い子など好きな出自を決めることができます」
マジかよ、至れり尽くせりじゃねーかよ。そんなの王族に決まっ……いや待てよ。王族ってなんだか面倒臭そうだよな。いずれ国を任されると言うことは肉を食う暇がなくなってしまうかもしれない。
でも、王族ならば出てくる飯は美味いはず。いや、それなら金持ちの貴族でも変わらないか。そして貴族でも後継とかだと面倒臭いから、次男とかにしてもらおう。
「わかりました。ではお金持ち貴族の次男ですね。では伯爵家当たりにしておきましょうか」
なんだこの神対応は。この方は女神なのか?
「あら、自己紹介が遅れておりましたね。私は緑の女神ぜレナです」
本当に女神だった。こりゃいよいよ俺が死んだと言うことに真実味が帯びてきたな。もしかしたらまだ夢の中ルートもあると思っていたのだが。
いや、個人的には転生ルートの方がいいから嬉しい誤算だ。
「最後に、私の方から転生する前にプレゼントとちょっとしたお願いがあります」
まだプレゼントがあるのか? 丈夫な体と貴族の生まれというだけでも有り余るほどの恵みだというのに、本当にこの方は女神のようだ。そしてここまでされておいてちょっとしたお願いを聞き届けられないほど俺は小さい器ではない。
「なんなりお申し付けください」
「ありがとうございます。では、まずプレゼントから。プレゼントは緑の支配者というスキルになります。詳しい説明は省きますが、このスキルは使えば使うほど強くなります。きっと貴方の役に立つことでしょう。向こうで落ち着いたらステータスオープンと念じてくださいね。そしてお願いですが……私は貴方に転生した先で必ずお肉と食べ続けて欲しい、のです」
「へ?」
お肉を食べ続ける? たったそれだけのことでいいのか? そんなの言われなくても続けるぞ?
「あら、それは嬉しい限りです。あとたまに向こうの世界には緑の祭壇というものがありますから立ち寄ってもらえると尚のこと嬉しいです」
「はい、分かりました! 必ず祭壇に立ち寄らせていただきます!」
「ふふっ、ありがとうございます。もし、食べるお肉がなくなってしまった場合は次の世界へとご案内しますのでご躊躇なくどうぞ。では言ってらっしゃい」
そう言われて俺の体は白い光に包まれた。
それにしても食べ尽くしたら次の世界にアテンドしてくれるって神かよ……
「えぇ、私は女神ですから」
遠のいていく意識にそんな声が聞こえたような、気がした。あれ、そういえばさっきから俺の思考を読まれているような? ま、いっか。