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社会性の仮面と夏

作者: 合弁花類の横の石ころ

 吸い込まれそうな青い空。妙に立体感のある積乱雲。そのすべてを生み出している太陽は地表を照らし、地平線を歪ませる。

そんな馬鹿馬鹿しいほど情緒的な、まさに絵に描いたような夏の一日。


 8時。大学の友人の電話が鳴った。眠気の残滓が脳の働きに雲をかけている。私は仮面を着け、緑色に光る通話開始ボタンを押す。

「おはよう。寝てた?」

「うん...」

「寝てたっていうかまだ寝てる感じじゃん。おーい、起きろー」

「うん...」

「前頼まれた課題終わったよ」

「そだね...」

「今度遊ぶときにご飯奢るの忘れないでね?まじで」

「ん...」

雲のような眠気が再び脳を覆う。

友人の言葉は意味を成さない。

「そんなかnzid...

いつの間にか通話は切れていた。

目が覚めたのは10時過ぎであった。



 11時。隣に住んでいるおばちゃんが訪ねてきた。

「おはよー。ちょっと旅行に行ってたからこれお土産。」

「うれしいです!ありがとうございます!」

「そんな大したものじゃないから喜ばなくてもいいのに~」

おばちゃんは嬉しそうに笑う。おばちゃんは少し大げさに反応するといつも上機嫌になり、表情がぱあっと明るくなる。

「いえいえ!私これ前SNSで見た時から食べてみたかったんですよ」

「そう?ならよかった。じゃあこれで」

そういってこちらの反応を待つことなく帰っていった。

おばちゃんが嬉しそうに帰っていくのを思い出して、なぜだか誇らしげな気持ちになった。



 14時。夜ご飯の材料を買うため、スーパーに来たら、中学時代の同級生が親子で買い物をしていた。

少しだけ勇気を出して話しかけてみる。

「久しぶり。」

「おお!久しぶり。中学ぶりだね。」

「まだやってる?テニス。」

「大学に入ってからまたやりだした感じ~もう全然強くないんだけどね。」

そういってころころと笑う。こういう人懐っこいところは昔のままだ。

「昔と変わってないね。安心した。」

「そんなことないよ~超成長したから。超新星爆発レベルで。」

「ほんとに?見えないなあ」

「はっきり言うところ昔から変わらないね~」

「それ褒めてないでしょ」

そのあと少し話しているうちに同級生の親がレジに並びはじめたため、同級生は去っていった。

少しだけ懐かしい気持ちになった。



 19時。バイト先の先輩から電話がかかってくる。

「なあ聞いてよ~今日またあのジジイきてさあ~」

「マジですか?やばいっすね~」

「そうなんだよ~明日もまた来るって言ってたぞ...めんどくせえ~」

「はえ~やばいっすね~」

少し面倒くさい先輩だが、適当に返していたらそのうち満足する。

案の定、10分ほど一方的に愚痴をこぼしたあと、通話を終えた。



 23時、忘れていた眠気が再び脳に忍び寄ってきた。寝よう。


虚空に吸い込まれてしまいそうな意識の中、私は仮面を外した。

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