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第三十八話 冒険者ギルドヴァイト州支部に訪問

「あのさー憧れの冒険者マスターになりたいなならなくちゃ絶対になってやるってわけじゃないしなぁ私らー」


「くくく、例え火水草森土雲(かすいそうりんどうん)へ労苦通して歩む道程望まぬ者の安楽の座への甘美なるや」


「いや俺も別にあれだよ、職業選択の自由尊重する方だけどさ、登録継続されてる以上は一度ぐらい義理通しておくべきだと思うんだよ。そこはちったぁ考慮してくれんかね?」


「そこはキッパリあの場で断ればいいのにさぁー。伯爵位持ちの節令使様も使えないわねー。ここで一番の権力者の肩書もバッタもんかーい?」


「くくく、権勢高き者の弁慶の泣き所。計画成就の犠牲の代償の難儀な軽重の問われる狂騒曲」


「んだよしゃーねーだろーがよー。ただでさえマンパワー必要なのに技術系は更に貴重で酷使不可避なんだからよー。ここいらでご機嫌取りしときてーんだよー。分かれよ分かってくれよ畜生めー」


 暑さに加えて二人からのもっともなブーイングに憂鬱そうに答えるのが精一杯であった。


 翌日、朝の政務を終えた俺は露骨に面倒臭そうな顔してるマシロとクロエ、そして俺直属の私兵部隊の一部を引き連れてヴァイト州冒険者ギルドへと向かっていた。


 目的は昨日の頼みごとに関して改めてギルドマスターであるヒュプシュさんとお話するのと、俺の私兵部隊に所属してる冒険者らを一旦呼び戻すの二つである。


 二つ目の用件に関しては面子の中のCランクのパーティーがちょっと遠出のクエストしに行ってるというので、帰ってきてるなら原隊復帰。まだ戻ってきてないなら留守中の頼みごとを伝言してもらうつもりだ。


 節令使が直々に行かなくても人を使ってそういうの済ませればいいのでは。と言われればそのとおりだ。寧ろそれが普通だ立場的には。


 しかし現実としては俺は存在そのものがイカレ気味な少女二人と、州都に滞在してた他の私兵部隊所属の冒険者らの一部を引き連れて暑い中を歩いている。


 執務室と自室の往復に飽きたので気分転換なのもあるが、マシロとクロエがソファーに寝転がりながらゴネたので俺も同行して一緒に話聞いてやるということで一応起き上がったからというのもある。


 冒険者の面々が同行してるのもたまたま居合わせたことに加えて何度か出入りしてるギルドに関して歩きがてら話を聞くためだ。細かく言えば王都とはまた雰囲気が違うであろうからその辺りの事なぞ。


 俺は身分的や立場的にギルドマスターの方から顔出してくる。マシロとクロエはここに来てから一度も行ってないので何も知らないし多分知る気もないのだろう。


 てなわけで俺と共に歩いてる冒険者らであるが。


 Bクラスパーティー「ウルトラコルポ」男三人で構成されており、リーダーのシンは魔法使いでありながら格闘術も極めてる。ダンは僧侶でありながらこちらも格闘術の心得がある。ゴーウは槍使いだが二人に勝るとも劣らない体術の腕前がある。という筋肉万歳トリオ。


 Cクラスパーティー「サンダーショットティーム」男三人と女二人で構成されており、リーダーは剣士のゴウロウで、以下武道家のアルズマ、魔法使いのカレン、斥候のテレーノ、踊り子のバンと続く。踊り子、しかも男ダンサーとはこの時代では珍しいが旅先での路銀稼ぎや交渉事で何かと重宝する存在という。


 Dクラスパーティー「星欠ら」男二人と女一人で構成されており、大剣使いのクルド―をリーダーに武闘家のシルドゥ、剣士のケリオンの近接専門でやっていってるという。


 マシロとクロエを除く合計十一名が現在俺を護衛してくれてる。王都のギルドマスターが書類審査と面談の末に選んでくれただけあって彼らの腕前や伸びしろは今後に期待出来そうな逸材と思われる。


 そんな将来性を見込めそうな面々が俺達三人を礼儀も忘れて凝視していた。


 視線に気づいた俺が彼らの方へ顔を向けると、全員いささか慌てたような動作をとりだす。


 この中で一番の年長と思われるシンが咳払いを一つして俺に深く頭を下げた。


「大変失礼致しました。節令使様ご無礼どうぞお許しくださいませ」


「いや、他の貴族は知らないが私はそんな程度では怒らないから気にするな。それはそれとして皆してどうした?」


「あっ、いや、その、ご厚意に甘えて言わせて頂きますと、その、そちらのお二人と話されてる時の伯爵様の喋り方はなんだか貴族らしからぬと言いますか」


「あっ……」


 それかー。


 確かに言われてみれば貴族、しかも名ばかりじゃないちゃんとした貴族の生まれ育ちの割には喋り方は雑なとこあったわ俺。


 これがガチ公務ならまだ意識してしっかりしてたけど、今日は半分以上私的な用事な上にいつも二人と連れだってが基本だから油断してたわ。


 下手に誤魔化しても訝しまれるだけだと判断した俺は苦笑を浮かべてみせた。


「恐らく私の性分が貴族というより市井の人々寄りだったのだろう。加えてあの二人に合わせてるとどうも言葉が乱暴になってしまいがちでな」


「そういうものですか」


「としか説明しようがないな。私も貴族連中に囲まれてるよりかは君らのような人間と話してる時の方が気が楽だよ。すぐには無理かもしれんが、君らもあまり緊張せず接してくれたらありがたいな」


「うっわカッコつけてるぅキモーイー」


「くくく、ライトな妄言の空虚さよ」


「うるせー馬鹿!お前らは少しぐらい俺に配慮しろや!?」


 茶々をいれてくる二人に俺は苦笑浮かべてた顔を引きつらせて怒鳴りつけるも馬耳東風な有様。


 そんな様子に冒険者メンバーの何名かが笑いを堪えるようにあからさまに顔を背けてるのが目の端に留まった。


 変に畏まられるのも落ち着かないがある程度の威厳は保つべきだよね地位的に考えて。


 バツ悪そうに後頭部を掻きながらしばし歩いていたが、それほど時を置かずに目的地付近にまで到着していた。


 十数メートル先にある屋上付きの二階建ての建物。「冒険者ギルドヴァイト州支部」という文字と冒険者ギルド共通の紋章が掘られた木製の看板がこの付近で存在感を示しており間違いようがない。


 一旦足を止めた俺は護衛の面々に改めて向き直った。


「さてこれからギルドを訪問するのだが、君らもここに来て数か月もするし何度か顔出してると思う。そんな君らから見てあそこはどんな感じかな?」


 今更訊ねるのもなんだけどね。冒険者ギルドみたいな国々で展開してるようなとこなんてコンビニとかスーパーのチェーン店みたいなもんである程度テンプレありそうだし。


 けれども王都には王都らしさがあるように地方には特色といえるかもしれない微妙な点もあることだろう。そうでなくても良くも悪くも名物的な人物が存在して気を付けるべきとかあるかもしれん。


 伯爵様で節令使様な奴に絡んでくる奴とか居るのこの時代の身分厳しめなとこ的に?


 という疑問に対しての答えは「意外に存在してるものだ」となる。


 後先考えずイキりたがる馬鹿が一定数存在するのは地球だろうが異世界だろうが万国共通。お世辞にもお上品な職業でないのだから倍率ドンときたもんだ。


 実は王都時代も一度ならず遭遇した経験ある。まぁそういう馬鹿がその後どうなったか知らんがね。少なくとも一度しか経験しなかったということで察してもらいたい。


 あと現地人には流石に居ないだろうが、異世界転生物でありがちな「貴族=権力を笠に着る嫌な奴=悪党に違いない!=ここで俺TUEEEの見せどころ」という召喚者思考ムーヴかましてくる礼儀知らずの存在も考慮せねばならん。平成みたいな野良召喚者が居ないともいいきれんわけだし。


 基本的にトラブルは避けたいのでさっさと受付にてギルドマスター呼びつければいいだけの話なんだが、その僅かの間に起こるのがそういうトラブルなのだ。


 なので知らずに面食らうより事前情報取得してたほうがマシというものだ。


 俺の問いかけに応えたのはダンサーのバンだった。彼は行く先々で交渉役や情報収集役を務めることが多いので何かと他者と交わる機会も多くその分様々な話を耳にするという。


「まず概ね王都のギルドとは変わらない雰囲気です。しかし辺境の開拓者気風が残ってるからか荒事の絶えないようにも見受けられますね」


「殺気だってるということかな?」


「というわけではないのですが、例えば喧嘩なんかあれば、王都なら仲裁する者が出てきたり周りを気にして場所を変えるなりしますけど、ここだとその場で一気に燃え広がる風といいますか」


「荒々しいな。で、そんなとこで溶け込めてるのかね君たち」


「これもまぁ概ねなんとかなってますけど、まだ一部で少し。あと流石に最初は余所者への視線は厳しめだったような気も」


「ふむ」


 バンの説明を聞いて俺はなんとなく西部劇の酒場を想像した。これ絶対酒頼んだら「ミルクでも飲んでろ」と見ず知らずの人間から嘲笑飛んでくる系の空気だろ。


 しかも一部とはいえ数か月経過してもまだ余所から来たというだけで隔意抱くとは感心せんな。根拠地やら活動地域決めてる者が多いとはいえ、同じぐらい西へ東への根無し草ライフしてる冒険者も居るだろうに。


 田舎特有の排他性と言ってしまえばそれまでだが、それに加えて王都から来たBやCという辺りも妬み嫉みを発生させてるのかもしれんな。


 ……あれ、これちょっとヤバくない?


 現地人の彼らですらこうなんだからあれじゃん。見た目だけでいうなら薄汚れた白衣とゴスロリというここでは奇妙ともいえる格好した少女二人組。そんな彼女らはBランク冒険者。


 しかも後ろに節令使が居てギルドマスターから現在進行形で熱視線向けられてるという盛ってる設定。


 これに今しかた聞いた情報を混ぜ込むとだ、俺としては一年半前の事を思い出さずにはいられない。


 相手側の自業自得とはいえ乱闘は乱闘。しかも王都と違ってあそこの建物は中庭とかないから室内で大暴れ待ったなし。


 …………あれ、これちょっとヤバくない?ギルドの建物と多分絡んでくるであろう地元冒険者の命が。


 自然と目は隣に居るマシロとクロエへと移動していた。


 俺の視線を受けて何か悟ったのか二人はニヤリという擬音が似合いそうな笑いを浮かべた。


「流石に来て早々揉めないわよー。あっちから手を出さない限りー」


「くくく、トラブルノットストップ。愚者の浅はかな洗礼を避けたき祈りと期待」


「……あれだ、せめて殺さないよう手加減だけはしてくれ」


「「「もう揉め事起こる前提ですか!?」」」


 俺の諦めにも似たつぶやきにマシロとクロエ以外の面々が思わずそう叫んだ。


 うんそうだよどう足掻いても駄目な流れじゃんこれ。


 あとは運よく絡まれることなく粛々とギルドマスターの執務室に通されることをお祈りするしかないよ。


 心の中でそんな事をつぶやきつつ俺は歩き出した。マシロとクロエも同時に歩き出し、冒険者組は数瞬遅れて慌ててついてくる。


 出入口前へ到着した俺は躊躇いなくオーク材で作られた分厚い扉を音高く開ける。


 建物内に足を踏み入れ目にした光景は王都でも見慣れた光景だ。多種多様の冒険者らが思い思いに建物の至る所に屯っており、やや殺伐とした空気の混じった喧騒が鼓膜を乱打してくる。


 俺が入ってきた瞬間、場に居た者らがほぼ全員一斉にこちらを見た。一瞬の驚きの後に来るのは怪訝と好奇と値踏みするかのような表情。これまた王都で見慣れた光景である。


 支部とはいえこの地の冒険者を管理してるとこだけあって一階だけでもそれなりの人数収容可能な広さがある。おまけに当然ながらそれなりの人数が居るわけで。


 シンらに受付の場所を訊ねて位置を確認した俺は歩き出そうと一歩目を踏み出した。

 が、二歩目を踏む前に奥の方から大声を上げて呼び止められた。


「おうおうおう身なりのイイ偉そうな奴がこんなとこになんのようでぃ!?冷やかしなら帰んなよ!」


「……」


 こうなるんだろうなぁと思ってたけど早すぎじゃね?どんだけ刺激に飢えてんだよここの奴ら。


 額を抑えつつ声のする方へ目を向けると、人込みをかき分けて一人の男がこちらへ大股に歩み寄ってくるのが見えた。


 派手な柄をした裾の長いベストを着込んだ、日本風に言うならリーゼントというのだろうか、前部分を盛り上がらせて側面反り込ませた男であった。


「あれ誰かね?」


 小声で手短な質問に対して周りの面々が言うには、あんな奇抜なナリしてるがここで数少ないBランク冒険者だという。


 Bランクパーティー「ドキメギメモリアルズ」という名前の割には武闘派揃いのパーティーらしく、眼前に迫ろうとしてる男はフージというリーダーであるとか。


 ヴァイトの冒険者ギルド所属では確かBは二組しか存在してない。そのうちの一組のリーダーが何を言い出すのやら。


 シンらがさり気なく俺の周りに壁を作りつつも、フージという男と俺との距離は手を伸ばせば届く範囲にまで縮まっていた。


「……で、私に何か用件でもあるのかね?」


「それはこっちの台詞だぁよ!お貴族様みてーなやつがこんな場違いなとこに何が御用でごぜーますかなぁ!?」


 思いっきりメンチきりながらフージは俺に怒鳴りつけてきた。


 キャラ濃すぎだろこいつ。


 いかにも田舎のヤンキーみてーな奴の存在に一周回って非礼さを嗜める気も起こらない。そもそも怒る前に疑問を解消したい気分ではあるが。


 後に判明することだが、どうも血気盛んな連中の度胸試しのつもりで絡んできただけという。特に排他性がどうとか主義主張がどうとかなレベルではない。


 うんまぁそれはそれで俺にとっては迷惑極まりないんですけどね。


 溜息を吐き出したい衝動を抑えながら俺は眼前の異世界ヤンキーに向かって口を開いた。


「御用があるから来たのだよ。節令使が当地のギルドマスターとお話に来たという大事な御用がね」


「はーん、そんな偉い奴がわざわざ来るとはウチんとこのギルマスも偉くなったもんだぁねぇ!?」


 いや単にこっちの居候二人がゴネた結果なだけだよ。本当なら今頃まだ執務室だよ俺。


「とにかく君には関係ないことだよ。非礼は見逃してあげるからそこを退いてくれないかねそろそろ」


「あぁぁん?簡単に退いたら俺何しにきたんだよって話なんですけどぉー!」


 そうタンカ切ったフージを周りの冒険者が囃し立てる。半分はノリや勢いだが、もう半分は俺が誰だか気づいてヤバイと感じつつヤケクソ気味っぽい。


 というかさ、コイツ絶対脊髄反射で喋ってるよね?何をしたいか特に決めずに飛び出してきてるよね?だって威勢良さそうだけど目が泳いでるの丸わかりだからね!?冷や汗流れ出してるからね!?


 シン達もガードしつつもどう対応すべきか迷ってる。なまじBランクでリーダーしてるので実力はあるのだろうから即排除ともいかないのだろう。


 くだらん膠着状態に陥るかと思ったが、単なる杞憂で終わった。


 次に何するか何言おうか迷ってたフージが俺の傍らに居るマシロとクロエに目を付けたのだ。


 おいおいおい死ぬわアイツ。


 高確率で起こるだろうと思ったけど起きて欲しくなかった流れに俺は内心で頭抱えた。


「は、はーん?節令使さまはこんなとこに女侍らせてくるたぁーここは高級な酒場じゃねーんだけどなぁ!このガチンコ全開なとこはよぉ女子供の踏み込む世界じゃねーんだよぉ」


 いや女冒険者敵に回すような発言して大丈夫かい君。そもそもギルドマスターが女性だろうに。


 多分勢いで口走ってるであろう発言に心の中でツッコミをいれる。実際彼の背後に居た何人かの女性冒険者が頬を引きつらせてるのが視界の端に映った。


 新たに絡まれ対象となったマシロとクロエは珍獣でも見るかのような目で眼前の異世界ヤンキーを黙って見てる。


「いや、あの私の傍らに居る二人は冒険者でね。君と同じBランクなんだよ」


 俺の発言にフージは目を三、四度瞬きさせて沈黙していた。やがてややわざとらしい笑い声を上げだした。


「お役人さんよぉ冗談はいけねーなぁ!こんなひょろっこいお嬢ちゃんが俺と同じBだぁ?冒険者よりももっとお上品なお仕事でもやってそうなのが?アンタの女じゃないのかよぉ!?」


 いや君ね冗談でもやめてね?こいつらをそういう目で見る程俺は人生投げやりに生きてないからね?俺の人生デットエンド迎えてないからね?


 軽く悪夢みてーな事を言い出す相手にどう答えたものかと考える。なお俺の女扱いされた二人は「何言ってるんだこいつ」と言わんばかりに声を上げず笑ってた。


 俺らの反応がお気に召さなかったのかフージは首を忙しなく上下に振りながら次に何を言おうか悩んでいた。


「あー、そのー、じゃああれだよほら、あれあれ!分かれよあれだあれ!あれがそれでよぉ!」


「言いたいことはなんとなく分かったから少し落ち着き給え君」


「「「分かるんですか!?」」」


 俺の発言にマシロとクロエ以外の周囲が驚いているけど、俺はこのベタさ加減に却って冷静さに補強かかった。


 伊達に前世含めたら半世紀近く人生歩んでないよ。こういうタイプが何したがってるか概ね察したわ。


 言い出し側の癖に驚いてるフージを尻目に俺はマシロの方を振り向く。


「ちょっと相手してやれ。お前とクロエどっちでも指先一つでダウン出来るんだろ?」


「きゃー可憐でか弱い硝子のような繊細な少女にヤンキーと喧嘩とか無茶させるなんて酷いわーファッキンお貴族だわー」


「くくく、鬼畜デビルの畜生道。悪徳貴族ロードの紅蓮なる茨道よ」


「邪悪そのものな笑顔で言うセリフじゃねぇしテメェらなんざ戦車砲の零距離射撃すら耐え抜くだろうがよ」


 そんな和やかな会話を交わしつつもマシロは了承して一歩前へ進み出た。


 薄汚れた白衣を纏った黒髪の少女が目の前に立ってようやく我に返ったフージは大きな唸り声を上げつつ威嚇してみせてる。


「どんな手段でBランクになったか知らねぇが、この場じゃ節令使様のお情けも通用しねえ実力だけが物を言うってこと分からせてやらぁな!」


「あぁそう。まぁ言い残す事それだけならさっさとしようかー?」


「おう思い切りだけはイイなぁ!だが俺は弱い女だろうが一度勝負するとなれば手加減はーーっ!?」


 フージは最後まで啖呵切ることは出来なかった。


 マシロのデコピンがフージの胸元に当たった瞬間に彼の身体は勢いよく後ろに吹っ飛んでいった。


 人や物に盛大にぶつかる音がホール中に響く。多分簡易バー的な所に落下したのだろう。


 しばし絶句故の沈黙が続いたが、フージの仲間と思われる面々が彼の名前を呼ぶ声に場は再び騒ぎとなりだした。


「手加減はしたから早くポーションでも回復魔法でもかけたらすぐ治るわよー」


 普通に凄い事をした本人はまったくそういう風な態度とらずに涼し気な声で誰ともなくそう告げていた。


 シン達は唖然として突っ立っており、クロエは片頬で笑みを浮かべつつ親指をマシロに向けて立てている。


 俺はここでようやく軽い溜息を一つ吐いた。


 なんでギルドに入るだけでこんな一騒動起きなきゃならないんだよ。おかしいだろヤンキーもお前らもよ。出入りぐらい普通にさせろよ常識的に考えて。


 俺の心の中で吐き出す愚痴に当然ながら誰も答える者なぞいないわけで。

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