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1,十二人の使徒


 真っ白な何もない空間。

 そこにあったのは、12人の男女と空に浮かぶ一人の少女の姿だった。


「皆さん初めましてー、私は世界神アルテナだよー。

 あなた達は世界を救う為に選ばれた、十二人の使徒なのです!」


 両手を広げ、神々しくも可愛らしくそう告げたのは、金色の髪を靡かせた美の象徴の様な少女だった。

 僕はどうやらこの世界神を名乗る少女に、この場所に召喚された見たいだった。

 しかし困った、オ〇ニーしようとズボンを下ろした瞬間に呼び出されてしまったので、今の僕の姿は変態そのものだ…

 なんてタイミングの悪い…

 振り返れば僕の人生は、必ずと言って良いほど他者によって(ゆが)められてきた。

 その象徴は自らの親だ。

 僕の名前は草壁 おかば。

 戸籍上の名前は草壁(くさかべ) 男鹿馬(おかば)だ。

 逆から読むと馬鹿男って…いくら両親が漫才が好きで、バカな事が好きだからって、キラキラネームな名前じゃないかもしれないが、そのネーミングセンスは笑えない。特に本人には…

 そんな感じで、生まれながらにして無自覚の悪意に晒された訳だが、案の定その名前のおかげで、幼少期は虐められた事もある。

 知恵がついてからは本名を名乗らず、親に嘆願して学校での名前はひらがなに改名してもらったが、それでも僕の人生は不運続きだった。


 鳥の糞の爆撃を受ける事99回。蝉の爆撃を受ける事44回。犬に追い回される事4回。カラスに襲撃される事9回。

 更に、交通事故に遭う事13回。命に別状が無かったのは運が良かったのかもしれないが、そもそも交通事故に遭う時点で不運だ。

 おかげで付いたあだ名は「不運の当たり屋おかば」。

 マジで勘弁して欲しい…

 ここまで来ると神様の悪意を感じる。

 まぁ、今目の前にその自称神様が居る訳なんだが…

 そしてこのタイミングでの拉致だ。

 ズボンを下ろした状態の僕と、他の11人の目がばっちり合ってしまっている。

 神様の存在感仕事しろよ! 僕は心の中で叫んだ。

 僕は何事も無かった様にズボンを戻す。

 助かった事に、他の皆は見なかった事にしてくれた。

 そして、一人の青年が世界神アルテナに問い返す。


「ちょっと待ってくれ! いきなり神だとか十二人の使徒だとか言われても意味が分からない」


 その青年は、見るからに優秀を身にまとった様に容姿端麗で、名門高校の学生服を着ていた。

 そして、その彼に続き、他の面々もそれに同意し、空に浮かぶ自称神に懇願する。


「そうよ! 早く私たちを帰して!」

「神だかなんだか知れないが、仕事があるんだ!」

「この後友達と約束が」


 しかし、自称神はその言葉を「それは無理だよ」とその一言で切り捨てる。


「君達は選ばれちゃったの。だから元の世界に戻りたければ使命を全うするしか無いよ」


「そんな…」

「ふざけるな!」


 自称神の言葉に皆、緋想な表情が浮かぶ。


「でも安心して。使命を全うすれば、元の世界、元の時間にも戻れるから。

 私は神だもん、それくらい造作もないんだから」


 自称神はそう言って希望の道筋を皆に示す。

 それに答えたのは、やはり最初の名門高校生だ。


「つまり、俺たちに残された道は、君の言う様に使命を全うするしか無いと言う事か?」


「うん、そうだねー。 あとは元の世界に帰るのを諦めて、これから行く世界で自由に生きるとかかなー」


 軽い言葉で言われ、皆一様に言葉を失う。

 その沈黙を破ったのは、名門高校生。やはり頭の出来が違うのだろう。

 状況を整理するべく、神に質問を続ける。


「まずは、その使命と言うのを教えてくれ」


「君達にお願いしたいのは、邪神マレフィクスの討伐」


「俺たちは何の力も無いただの人間だ。勿論その使命を果たす為に必要な力も貰えると思って良いんだろうな?」


 自称神はさも当然の様に答える。


「勿論、用意してるよ~。

 それに使命を成し遂げた人と、そのパートナーの二人には、成功報酬として、なんでも一つ願いを叶えちゃいます」


「ちょっと待て、俺たち全員にその報酬は用意されないのか?」


「それだと、不公平だよね? ただ使徒に選ばれただけで何も活躍せずに報酬だけ受け取る権利を得るなんて」


「それはそうだが…」


「皆で協力すれば二つは願いが叶えられるから、一つを皆の望みを叶える為に使って、もう一つは達成した当人が好きにすれば良いじゃないかなぁ」


 僕は今の話に違和感を覚えた。

 自称神様の言葉は、2つ願いを叶えて上げると言うモノ。

 使命を全うすれば元の世界に帰すとは言っていないのだ。

 僕はその事に気づき、自称神に問う。


「あのアルテナさん。一つ質問いいですか?」


「何かな、変態の君」


 ムカっ! やっぱりこの神様わざとやっている。

 この神様、見た目と言動とは裏腹に、けっこう腹黒いかもしれない…

 僕は気を取り直して質問を続ける。


「使命を達成した者以外の人達も、元の世界に帰れるんですか?」


 僕の質問に、他の皆もハッとした様に目を見開き、自称神の言葉を待つ。


「あら、以外と鋭い所をついて来るね…

 まぁ、元の世界に帰れるかどうかは、使命を達成した人次第ってところかなー

 私から言えるのはそれだけだねー」


 自称神は、小首をかしげながら平然とそう答えると、軽い感じで笑い返す。

 つまり、元の世界に帰れるかどうかは、パーティーを組むにしても、リーダー次第と言う事なのだ。

 ここに集められた人間はそれぞれに面識はないはずだ。

 誰が信用できて、だれが信用できないかもわからないのだ。

 自称神は僕たちをも試しているのだろう。

 そうやって、皆が疑心暗鬼になっていると、自称神は皆に告げた。


「さて、それじゃー君達一人ひとりに力を授けちゃいます。

 まずは、田中 太一(たなか たいち)。貴方にはスキル:闘神を授けます。職業:闘士として、その力を役立ててねー。

 次に、笹峰 志保(ささみね しほ)。貴女にはスキル:時空結界を授けます。職業:結界士として、その力で皆を護っちゃってー。

 王 志偉(ワン ジウェイ)。貴方にはスキル:空撃を授けます。職業:槍弓士として、皆をサポートしてねー。

 孫 燐麟(ソン リンリン)。貴女にはスキル:絶影を授けます。職業:アサシンとして、陰から支えるのです。

 リサ・キャンベル。貴女にはスキル:神速を授けます。職業:剣士として、前戦を支えてねー。

 ブライアン・マクレーガー。貴方にはスキル:神撃を授けます。職業:大剣士として、前戦で敵を駆逐しちゃいなさい。

 南川 榛名(みなみかわ はるな)。貴女にはスキル:魔法神の加護を授けます。職業:魔導士として、後方から敵を殲滅しちゃいなさい。

 宮眞 癒音(みやま ゆね)。貴女にはスキル:癒しの奇跡を授けます。職業:治癒士として、皆を癒して。

 ケント・エリンズ。貴方にはスキル:叡知の鏡を授けます。職業:賢者として、皆をサポートするのが役目ねー。

 秋月(あきづき) まりあ。貴女にはスキル:女神の祝福を授けます。職業:聖女として、悪を祓ってねー。

 神野 輝勇(じんの こうゆう)。貴方にはスキル:勇者の証を授けます。職業:勇者として、世界を救ってくれるかなー?

 それから、草壁 男鹿馬…君はどうしよー…」


 自称神様は一考すると、何かを思いついて言葉を続ける。


「決めた! 君にはスキル:脱衣アーマーを授けます。職業:変態チートとして、皆とは違う方向から攻めてみよー」


 神の最後の言葉に、全員の視線が僕に突き刺さる。

 ちょっと待って、職業・変態チートってなに?そもそもその職業がおかしい…

 神様の言う、違う方向から攻めて見なさいと言う言葉が、SとMの意味合いに聞こえたのは気のせいだろうか?

 て言うか、スキル:脱衣アーマーってなによ! 絶対(ろく)なスキルじゃない!

 そもそも脱いで見せる程の体ではない。ただ恥ずかしいだけだ。

 言っておくが僕はノーマルだ! 断じて変態なんかじゃないとだけ言わせてくれ!

 とりあえず抗議しようと思ったら、自称神に言葉を被せられた。


(ちょっと待って、僕は変態なんかじゃ…)

「みんなのスキルやステータスは、君たちの居た世界のゲームを参考につくったから分かりやすいはずだよー

 心の中でステータスと念じて見ると表示されるわ」


 そして自称神はそれ以上言わせるものかと、話しを切って皆に告げる。


「さぁ、そろそろ時間だよー。

 君達はこれから行く世界で、神の使徒を名乗り、邪神マレフィクスを探し出して討伐しちゃってください

 じゃ~がんばってね~ バイバ~イ」


 ニコやかに手を振りながら、アルテナがそう言うと、白い世界が一層白くそまり、気が付くと知らない荒野で皆立ち尽くしていた。

 どこまでもフザケタ神様だ…

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