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涼香に促され、郁人が先に言った。

「オレの部屋には、202は人間ですって書いておいてあったよ。だから、202って誰だっけって朝見たんだけど、拓也だって分かった。彼は白だよ。」

どうやら男性達は知り合い以外は下の名前を呼び捨てにすると決めたらしい。拓也が、ホッと胸を撫で下ろして頷いている。涼香は、それを手帳に記しながら、言った。

「真代さんは?」

真代は、珍しく真剣な顔で頷いた。

「207よ。207が人間って書いてあったの。郁人さん、だった?そっちは嘘だから信じられない。」

郁人は、そのかわいらしい顔から信じられないほど厳しい表情で、真代を睨んだ。

「そっちが嘘だろう。だいたい、結果が出たら誰がその部屋に入ってるのか気になるだろう?なのに、君はそれを調べたのか?誰なのか知ってるのか。」

真代は、頬を膨らませて反論した。

「そんなの、さっきここに来たばかりなのに知ってるはずないじゃない。私は三階だし、二階の人のことまで知らないもの。」

駿が、手を上げた。

「オレが、その207に入ってる11番の柴野駿だ。白を出してもらって悪いが、占い師で結果を持ってるのに、ここへ出て来るのが遅すぎないか?郁人が言ったように、オレが占い師だったら人間が誰なのか知りたいから知らなくても聞いて回ると思うけどな。真占い師だとしたら、意識が低すぎるぞ。もっとしっかりしてもらわないと、信じられない。」

涼香は、それを聞きながらメモに取り、口を開いた。

「そうね、確かに。どっちが真占い師なのか今の時点では私達には判断出来ないから、今日は占い師と占われた人以外のグレーを疑って行こうと思っているけど、誰か意見はある?」

すると、白を打たれて勇気が出たのか、拓也が言った。

「霊能者はどうする?まだ結果を持ってないけど、もしも襲撃された時の乗っ取りを考えて出しておいた方がいいかなと思うんだけど。」

涼香は、考え込むような顔をした。

「そうね…もし今夜霊能者が襲撃されて、明日偽物が出て来たら信じちゃうかもしれない、ってあなたは言いたいのね?」

拓也は、頷いた。

「そう。初日に出しておいた方が、多分明日迷わないで済むんじゃないかって。」

涼香は、軽く頷いて皆を見回した。

「みんなはどう思う?」

俊也が、爽やかなその顔をしかめた。

「でも、それで狩人が護衛先を迷うってことにならないか?占い師が二人出てるし、共有者、霊能者となると護衛先を外す可能性が高くなるだろう。」

「人狼側からだって賭けになるってことだけどな。」脇から、康介が割り込んだ。「もしかしたら護衛成功(グッジョブ)が出るかと思って別の所を行くんじゃないか。そうなって来ると、ただの村人のオレなんかには怖くて仕方がないんだが。」

涼香は、肩をすくめた。

「そこは狩人の腕だもの。裏の裏を読んで護衛を成功させる狩人だってたくさん居るわ。俗に言うヘンタイ護衛ってヤツ。連続ガード有りだから村人にとっては有利だし、ここは狩人に頑張ってもらって吊縄増やして行かないとね…」と、手帳へと視線を落とした。「13人村、ということは吊縄は6縄でしょ。人狼が三人、狂信者が一人。最悪狂信者は放って置いて三回間違えても大丈夫って計算よ。でも、なるべく痛い思いはしたくないし、ストレートに行きたいのが本当のところだけど。」

佑が、言った。

「素村(役職のない村人)だとこれ以上言わない方がいいぞ。役職が狭まって狩人とか共有が透けて来るんだ。人狼に村の情報は渡さない方がいいんだから。」

康介が、それを聞いて眉を寄せた。

「別にオレは、役職を狭めようとか思って言ったんじゃないぞ!ただ、オレだって犠牲になりたくない。こうしてオレが生きてるんだし帰って来れるって何となく分かっても、涼香さんが言ってたように痛い思いなんかしたくないんだ。」

それは、みんな同じだった。知美だって、これ以上体に傷がつくのは嫌だった。それに、殺されるとなるといくら生き返れると分かっていてもそれは怖いだろう。そんな思いは、したくなかった。

涼香は、ため息をついた。

「じゃあ、考える材料を集めましょう。これから、番号順に一人一人話してもらうわ。霊能者は、その時にCOしたかったらしてくれてもいいし、本人に任せるわ。」

知美は、俄かに緊張して来て、思わず言った。

「話すって、何を?」

涼香は、知美を見て、苦笑した。

「そうね、誰を怪しいと思うか、それはどうしてか。まだ最初だし、そんなに構えなくてもいいのよ。占い師のどっちが真だと思うかとかでもいいし。何でもいいの、それをメモしておいて、後日それが何か自分の白い要素、黒い要素とかになって来る可能性もあるから。」

そう言われると、余計に気になったが、自分は猫又なのだ。知美は、そう思って自分を信じて顔を上げた。1番の自分は、最初に話さなくてはならないからだ。

「じゃあ、1番の吉沢知美です。まだ少ししか見てないから、よく分からないけれど、さっき人狼に出て来てもらって犠牲になってもらうって言ってた佑さんは白いと思ったかな。占い師はどっちが本物かまだ分かりません。真代さんは少しほんわかした人だから疑われやすいと思うんだけど、それだけで偽と決めるのも違うと思うし。むしろそんなほんわかした人が嘘をつくのって難しいんじゃないかなって思ったりもする。それだけです。」

涼香は、それを聞きながら忙しなく手を動かしてメモしていた。そして、隣りの佑を見た。

「じゃあ、次佑さん。」

佑は、頷いて前のテーブルの上で手を組んで、前のめりになった。

「占い師はどっちが本物か分からないが、真代さんの方がおっとりしてるのは確かに知美さんが言う通り、嘘をつくのは出来なさそうだ。でも、もしそれが人狼陣営の作戦だったらどうする?とオレは思う。もし人狼陣営で、真代さんのようにゆっくりした人が仲間だったら、どう利用するのか考えたはずだ。真代さんは、この雰囲気を利用されてるのかもしれない。だから、それだけで偽じゃないとはオレは判断しない。今疑ってる人は、特には居ないが、あえて言うなら、聞かれてもいないのに素村発言した康介かな。」

康介が、思い切り首を振った。

「違う!襲撃が怖いから言っただけだ!」

佑は、大袈裟に肩をすくめた。

「どうだかな。」

「何を…!」

「待って。」涼香が、冷静に割り込んだ。「言い合いはやめてよ。生産性がないわ。感情的になるのは駄目。佑さんも、煽るような言い方しないで。でないと議論を乱すからってあなたのことも疑うわよ。」

佑も、康介もじっと黙る。涼香は、次に拓也を見た。

「じゃあ拓也さん、どうぞ。」

拓也は、頷いた。

「今占い師の話が出てたけど、オレは素直に考えて郁人が真占い師だろうなって思うよ。別に自分が白を打たれたからとかじゃなくて、ちゃんと誰の部屋番号なのか調べてたし。真占い師だったら、知った情報が誰なのか知りたいと思うはずだものね。他に誰が怪しいって、特にないんだよなあ。いつものみんなを知らないし、誰が不自然だとかが分からない。ただ、昨日までよく話してたのに謙太が静かなのがなんでなのか気になるけどね。」

謙太は、それを聞いてもじっと黙って、拓也を睨むだけだった。涼香は、それもメモって、美久を見た。

「じゃあ、次は美久さん。」

美久は、幾分顔色も回復して来た様子で、頷いた。

「はい。あの、私はまだよく分からないんですけど、佑さん、拓也さん、俊也さんは発言もしてて村のことを考えているなあと思いました。占い師はどちらかまだ分かりません。真代さんは昨日の役職が決まる前からあんな感じだったし、きっとそういう性格なんだと思う。だから、おっとりしてるってだけでは偽物だとは思えないから、それだけで決められないなあと思います。」

知美は、それを思い出していた。確かに、真代はあんな風にちょっと微笑んだ感じで、どこかネジが緩んでいるようだった。特に構える様子もなく、さっさと先に部屋へ入って行ってしまったし、優子などそれで避けているような感じだ。

涼香は、メモりながら言った。

「はい、次、康介さん。」

康介は、さっき佑とやり合ってイライラしている状態のままだったが、つっけんどんな口調ながら答えた。

「オレは、やたらとあっちこっちにこじつけて疑いをかけて来る佑が、逆に怪しいと思う。人狼は村人を黒塗りするんだ。そのうちの一人にでも他の村人が同意してくれたらしめたもの、吊らせて縄を消費させるんだろう。オレだって、学生の頃散々人狼ゲームをやったんだ。あからさまに人間陣営だと主張して来るのは、逆に怪しいと思うな。」

佑は何か言いたそうだったが、さっき言われたばかりなので、睨むだけで黙っていた。涼香は、そこで顔を上げた。

「ストップ。それ以上になると感情論になるわ。でも、あなたの言うことも確かにその通りなのよ。あからさまと言われたら、確かにね。それはみんなの判断に任せましょう。じゃあ、次、真代さん。」

真代は、青いを通り越して白くなった顔で、フルフルと震えていたが、名前を呼ばれて、立ち上がった。

「わ、私が真占い師です!みんなあれこれ言うけど、私は少し、人と話をしたりするのが苦手で…だって、普通にしようと思って話しても、みんな普通じゃないって目で見るんだもの!でも、今回は話さなきゃって思って。だって、人狼を見つけられるんだもの。そう手引きに書いてあったの!」

その目は必死で、ちょうど正面辺りの位置になるので、知美にはよく見えた。涼香は、困ったように真代を見た。

「あなたの主張は聞くわ。でも、私達にはそれが本当なのか嘘なのか分からないのよ。だから、こんな議論の仕方になるのはごめんなさい。今日は、いきなり吊られたりしないから、安心して。」

真代は、それを聞いて何か言いたそうだったが、それでも言葉が見つからなかったのか、諦めて頷いて、座った。涼香は、少し同情したような顔をしたが、また表情を引き締めて、優子を見た。

「じゃあ、優子さん。」

優子は、皆の視線が自分に集中したのを感じて身を縮めた。優子はおとなしい気質のようで、昨日からあまり話が出来ていない。優子は、小さな声で言った。

「ええっと…私は、誰が誰だか本当にまだ分かりません。でも、なんだかケンカ腰に見えて、康介さんはちょっと怪しいって思ったかな。他はわからないです。占い師もどっちがどっちかまだ分かりませんし。」

涼香は、書き込みながら顔を上げずに言った。

「次、謙太さん。」

謙太は、顔を上げた。最初、あれだけ元気だった謙太が、どうも小さくなってしまったような気がする。そんな謙太が、口を開いた。

「オレは…すまねぇ、なんか昨日のことで参っちまって。傷のことだが、オレも涼香さんと同じで全身にあるんでぇ。特に酷いのが胸で、広範囲で内出血したのかまだらにまだ黄色い場所とか緑の場所とかあって、治りきってないのが分かる。昨日は鏡を見てなかったから分からなかったが、額にあるこの線も、オレの記憶じゃ無かったんでぇ。一回死んだのかと思ったら、何だか脱力しちまって。オレ、事故ったのかなあってさ。」

涼香は、フッと肩で息をついてから、謙太を見た。

「分かってるわ。私だって最初はそう思ったもの。でも、せっかく生き返らせてもらったのよ。理由はどうあれ、生きて帰れるって言うのなら、私は戦うつもり。あなたもいつまでも苦しんでいないで、さっさと気持ちを切り替えなくちゃ。人間なら無駄に吊られるようなことはしないで。人狼を探してほしいの。」

謙太は、じっとそんな涼香の顔を見ていたが、フッと息をつくと手を前に組んで、小さく頷いた。

「ああ。分かった。で、怪しいヤツだったな。」と、テーブルにつく皆を見回した。「特にこれという奴は居ねぇ。柴野のヤツのことはよく知ってるが、ちょっと胡散臭いかもしれないが仕事は出来る奴だった。細けぇ所は、思い出せねぇんだ。占い師は、そっちの変なお姉ちゃんよりこっちの郁人が真占い師ならいいなあと、まあこれは願望なんだがな。」

涼香は、うんうんと頷いた。

「まあ今は、フィーリングだけでいいのよ。じゃあ、次、浩二さん。」

浩二は、なぜかチラと知美を見た。知美は、目があって何のことだか分からなかったが、何やら後ろ寒いような気持ちになった。昨日、あんな傷が腕に長々と有るのを見たせいかもしれない。昨日あの男は、傷痕のことを言っていた。自分は、綺麗に処置されていたから、あの男は真面目に生きていたと判断したということなのだ。つまり、ハッキリと残っていた浩二は、恐らく何かやらかしているのだろう。それが何らかの判断に使えるというのなら、この浩二という男は、信用ならないということなのだ。

その浩二は、言った。

「オレだって腕にこんな傷があって、しかも他の人に比べたらハッキリ残されてて、何か悪いことをしたのかって昨日は部屋に入ってから悩んだんだが、覚えがないんだ。でも、そこの1番の知美さんに、刺されたような夢を見たんだ。あれ、もしかして記憶かなって。」

知美は、一瞬何を言われたのか分からなかった。だが、回りの者達の困惑したような顔に、ハッとした。私が…私がこの人を刺したって?!

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