エピローグ
「そんな訳で、生きて帰った来たのには皆に驚かれていろいろ調べられたようですけど、何も発見されませんでした。傷跡は確認されていましたが、綺麗に治っていますしね。薬品は代謝されて何も残っておりませんし、検出されることはありませんでした。」
要は、どこかの執務室で、正面の机の後ろに座っている男に言った。男は、興味もなさげに頷いた。
「ああ、あれのことか。そうか、まあ元々薬品の検出など無理だし、確かに死んでいたあれらがどうして健康体で生きて帰って来たのかなど解明は出来まい。それで、あれらは希望通りの記憶を持って生きてるのか?」
要は、フッと息を付くと、頷いた。
「はい。彰さんが言った通りに彼らが望んだ記憶を残して置きましたよ。人狼ゲームのサークルで知り合った友達だってことになってます。今はあちこちでそういう集まりがありますからね。こじつけるのは簡単でした。今でも仲良く会って話したりしているようです。」
彰と呼ばれた男は、また頷いた。
「人生を取り戻したんだ。私は、良かったと思っているよ。女のために道を踏み外した男達ばかりだったじゃないか。私もつくづく、女には気を付けるべきだと思っているのだが、まさに今回、実証されたと思っている。」
要は、ため息をつくと、見ていたファイルを閉じた。
「彰さんだって何回女性に命を狙われてるんですか。あっちこっちで女性を無下に扱い過ぎなんですよ。もうちょっと気を付けてくれないと、また前みたいに研究所が襲撃されたりしたら大変なんですから。」
彰は、心外な、という顔をした。
「あれは若い頃のことだぞ。今は女性自体に接することが無いではないか。研究所の女性達はそういう目で見ては居ないし、皆優秀な部下だと思っている。そもそも、理屈っぽい女性は好みではないし、さりとて愚かな女は論外だし…もう私の人生には、女性というものは要らないと思っているよ。」
「だったらいいですけど。」要は、言ってふと、続けた。「そういえば、次の資金集めはどうしますか?また人狼ゲームとか、そういったものを見せものとして提供しつつ、人体実験も兼ねて、といった方向で?」
彰は、机のモニターの方へと視線を落とした。
「そうだな…最近は飽きて来たというのが正直な話なのだ。だが、クライアント達を参加させるわけにもいくまい。ということで、次は不思議な世界のようなものを作って、幻覚などを駆使して神話生物などを見せる世界で、ゲームをさせてみるとかどうだろう?最近、研究者たちからテーブルトークロールプレイイングゲーム(TRPG)というものがあるのを知ったのだがね。それが本物の世界となったら、参加させられた方も楽しめるかと思って。どうだ?」
要は、驚いたように目を見開いた。また、大層な舞台を準備しなければならないな。
「大きく出ましたね。そうなって来ると、どこかの島とか、大々的に仕掛けを作ってやらなければならないから面倒ではありませんか?拡張現実とかそういうのを使ってってことですよね?」
彰は、首を振った。
「違う、幻覚作用のある薬の効きを試したいのだ。麻酔もそうだがあれも、なぜそうなるのかまだ分からないことがたくさんあるだろう。そういうのを解明してみたいと思っているんだがな。ここのところ、特定の細胞に自殺を命じる薬の方も形になって来たし、そうなって来ると次の段階、何か別のことに手を出しておきたいと思っていてね。脳、おもしろいじゃないか。記憶の操作だってそうだ。なぜにあれを信じて自分の物だと思ってしまうのか?私のように突然に優秀な脳が現れるのはなぜか?後から作り替えることは出来るのか?興味があるね。」
要は、小首を傾げて考える仕草をした。
「そうですね…そうなって来ると人数もそう要らないし、人狼ゲームほど人の方では面倒がなくていいかもしれません。ただ、それが上手く行くのか試してみてからということになりそうですね。舞台は、最初は屋敷がいいかな。舞台が大きいとそれだけ準備が大変だ。シナリオはこちらが準備していいですか?」
彰は、乗って来たようで目を輝かせて頷いた。
「ああ、任せる。面白そうだ。うまく行きそうなら私も一度参加してみよう。新しいことには、いくつになっても胸が躍るものだよ。」
そういう彰は、まだ40になるかならないかの歳だ。
要は、そんな彰に苦笑しながらも、この人としての楽しみなどあまり知らずに、人付き合いさえまともに出来ない天才を、驚かせてやりたいとまた、胸が躍った。
その影で、望まないゲームに巻き込まれる、彼らが下界と呼ぶ一般社会に住む人々の、迷惑など考えもしないのだ。
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人狼 佑 郁人 謙太
狂信者 駿
占い師 真代
霊能者 俊也
狩人 拓也
共有者 涼香 美久
猫又 知美
村人 康介 浩二 優子
最後は人狼目線なので駆け足で過ぎて行きました。本当は村人目線で最後まで通してそれで終わろうかと思ったんですが、襲撃の方法などのネタ晴らしがまだだったと急遽人狼目線も書いたのでこんな風になってしまいました。これを書いている途中で私生活でもいろいろ訃報があり、まよつきも書いていたので長くほったらかしで置いてあったお話でして、少しおかしな所もあるかもしれません。それなのに最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました!2019/3/31




