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運の悪いことに、出て言ったのは、知美、謙太、涼香、郁人だ。

残っているのは駿、佑、拓也、真代、康介、浩二、そして、トイレの中に俊也だった。

トイレに籠っている俊也はいいとして、問題は同じ部屋の中に居る、他の四人だった。

どうするべきかと佑が険しい顔をしていると、駿が言った。

「ちょっと、傷の回りの髪を切るぞ?消毒出来ないから。」

浩二が、脇から言った。

「手伝おうか?一人で大丈夫か。」

駿は、笑って救急箱に入っていた先の小さいハサミを手に取ると、首を振った。

「大丈夫だ。血が大変だっただけで、ここまで綺麗にしたら後は髪を切って消毒するだけだから。すまないな。」

佑はドキッとしたが、駿は平気な顔をしている。浩二は、納得したのかその場に座ったままで、出入り口の方を気遣わし気に見た。

駿は、髪をジャキジャキとその部分だけ切っているようだ。佑が、どうするつもりだろうと思っていると、駿が言った。

「ちょっと傷の近くを切るから、引っ張られて痛いかもしれないよ。」

佑は、身を固くした。そうか、そのまま行くのか。

佑が構えて歯を食いしばると、頭に鋭い痛みが走った。

「いたっ!」

思わず声が出た。皆が、こちらを見る。しまった、と佑が思っていると、駿が苦笑した。

「だから言っただろ、結構な傷なんだよ。今近くを切ったから引っ張られたんだ。ごめん、もう少し我慢してくれ。」

佑は、無言で頷く。皆の視線は、また出入口の方へと向いた。

そうして、駿はハサミを置くと、消毒薬で今つけたばかりの傷を消毒し、無事にアリバイを完了させたのだった。

その時、部屋の外から涼香と知美の悲鳴が聞こえて来た。

「きゃあああああ!!」

美久を見つけたか。

佑と駿は思ったが、皆と同じように出入口の方向へと視線を向ける。

「今度はなんだ。」

康介が、鬱陶しそうに言う。真代が、懐中電灯を握った。

「知美さんと涼香さんの声だったわ。行って来る。」

拓也が、慌てて言った。

「おい、一人じゃダメだ、みんなで行こう!」

しかし、駿が佑の後ろで作業をしながら言う。

「佑は無理だぞ。オレが見てるからお前らだけで行って来てくれ。」

康介、浩二、拓也は、真代に頷きかけて、そうして、四人は声の方向へと向かった。

その背を見送って、佑が小さな声で言った。

「これで今日は終わりだ。だが、これからだな。」

駿は、覚悟したような顔をして、佑に頷きかけた。

「大丈夫だ。一番良さそうなところでカミングアウトする。」

佑は、視線を上げた。

「駿、もしお前が吊らるようなことがあっても、絶対に勝つからな。もちろん郁人とオレも危ないが、そのための謙太だ。オレ達ももしもの時は、謙太に任せて死ぬつもりで居る。郁人には話したが…オレも死んだ時のことは、はっきり覚えてるんだ。郁人と似たような状況さ。」

駿は、小声で驚いたように言った。

「え…、お前も女か?あの中の?」

佑は、険しい顔をした。

「ああ。まあオレは付き合ってた女で…オレの浮気が原因だから、オレも悪かったっちゃ悪かったんだ。だが、刺されたんだぞ?いきなり。それで、自殺しやがった。オレはまだ息があったから、あいつが死んで逝くのを目の前で見てた。だが、段々に意識が遠のいて、死ぬんだなって思った。間違いなく死んだだろうに、こうして生きてる。つまり、あいつらは本当に死人を生き返らせることが出来るんだ。オレは、ここで死ぬことは怖くない。」

駿は、皆が戻って来ないか、俊也がトイレから出て来ないかと入口の方を気にしながらも、言った。

「だが、相手の女は?お前のことを思い出して、また殺しに来たりしないのか。投票されて、それが命取りってことにも…。」

佑は、にやりと暗い笑顔を作った。

「それは、もう無い。」駿が怪訝な顔をする。佑は笑顔のまま、続けた。「美久さ。あいつはまだ思い出してないようだったが、オレは昨夜思い出した。あいつがオロオロと最後に残ったのを見た時は、やった、と思ったね。あいつなら躊躇いもなく殺せるって。あいつだってオレを殺したんだ、これでおあいこだ。」

駿は、その事実に茫然とした。この人狼ゲームは、記憶が関係ないと思っていたが、そんなことはない。思い出した者から、まだ思い出していなくて無防備な者への、復讐もあり得るのだ。そう、私情が挟まる人狼ゲームなのだ。

駿は、自分が謙太と同じ陣営で良かった、とその時思った。

自分があの誰からも好かれる謙太を妬んで薬を盛ったことは、まだ謙太以外誰も知らないはずだった。


少しして、男子ばかりがガックリと肩を落として戻って来た。佑と駿がそちらを見ると、郁人が言った。

「…美久さんが、襲撃されてた。あの、端のトイレで胸を一突きにされて死んでたんだ。」

二人は、構えていたのでびっくりした顔を作ることが出来た。佑が言った。

「でも…みんなここに居たんじゃないのか?!どうやって美久さんを?!」

暗い顔をした康介が、後ろで首を振った。

「分からないんだ。だから、今夜はもう休んで、明日の朝もう一度現場検証しようって。女子達にも、もう部屋へ帰ってもらったよ。これで、もう今夜は人狼の襲撃は無いからね。休める時に休んでおかないと、これじゃあ体がもたない。」

駿が、ため息をついた。

「佑は命拾いしたってことか。とりあえず、消毒はしたよ。医者じゃないし、縫うとか出来ないけど。出血が酷かったし、佑も休ませたいから。」

謙太が、頷いた。

「まあ床じゃ寛げねぇかもしれねぇが、それでも後数時間だ。みんな一緒の方が安心だろうし、今夜はこのままここで寝ようや。俊也はまだ便所かよ。」

駿が、肩をすくめた。

「一度も出て来てない。あいつ、いったい何を食ってああなったんだか。」

皆が、自分の作った巣へと戻って行って、毛布にくるまるのを見ながら、拓也が言った。

「まあ、出すもの出したら楽になるんじゃないか?とにかく、もう寝よう。明日からだって人狼の襲撃はあるんだろうし、寝ておかないと体力がもたない。おやすみ。」

佑も駿も、自分が確保しておいた位置へと戻って行った。

佑は、謙太の隣りへと戻って横になりなった。謙太が、意味ありげな視線を向けて来るので、苦笑して頭を押さえた。

「ズキズキするが、血は止まったみたいだ。駿のヤツ乱暴だからさ。ハサミで傷の回りの髪を切った時は、マジで痛かったよ。」

…ハサミで切ったのか。それは痛いな。

謙太は察して、無事にアリバイ工作が出来たのだとホッとした。

「明日には楽になってるさ。おやすみ。」

そうして、昨夜も徹夜だった人狼陣営の者達は、襲撃が成功してホッとしたのもあって、そのままぐっすりと眠ったのだった。


回りで、人が動く気配がする。

佑が目を開くと、横で謙太が、それに気付いて声を掛けて来た。

「お、佑?起きたか。まだ時間まであるから、まだ寝ててもいいぞ。傷はどうだ?」

佑は、泥のように眠ってしまっていた、と慌てて起き上がった。

「もう朝か。すっかり眠ってしまってた。」

あちらから拓也が、同情したような顔をした。

「そりゃあんなことがあったらな。傷は痛まないか?」

佑は、そういえばどうなったんだろう、と思いながらも、ガーゼに触れてみた。少し何かが固まったような感覚が、指に伝わって来る。血が固まっているようだ。

「…まだ痛むが、それでも血は止まってるんじゃないかな。昨日よりはマシになったよ。」

郁人が、身の回りを片付けながら言った。

「今夜は気を付けなきゃな。手負いの獲物は狙われやすいんじゃないの?早いとこ治さないと。」

佑は、顔をしかめて身震いして見せた。

「嫌なこと言うなよ。もうあんな思いはしたくない。」

俊也が、げっそりとした様子で床に座り込んでいるのが見える。謙太が、そちらへも目を向けて言った。

「俊也、無理するなよ。いったい何に当たってあんなことになってたんでぇ。今日は変なもん食うなよ。」

俊也は、力なく視線を上げた。

「もう、何も食いたくない気持ちだよ。腹は減ってるけど、何が当たってああなったのか分からないんだから。みんなと同じものばかり食べてたのに…なんでだろう。」

康介が、面倒そうに自分の回りを片付けながら、言った。

「人が殺されてるってのに。まあトイレに籠ってたからお前は無事でよかったじゃないか。それより、早く準備して美久さんの検死っていうか、あの回りを調べに行こう。夜までに人狼を探さなきゃならないだろう。何かヒントがあるかもしれない。」

浩二が、自分の部屋なので荷物をあっちこっちへ避けて片付けながら、頷いた。

「じゃあ、ここ片付いたら行こう。8時になったら女子達も降りて来るだろうし。みんなそれぞれ荷物だけは先に部屋へ持って帰ってくれよ。今夜はどうするのか知らんけど、オレの部屋だけ散らかるのって不公平じゃないか。」

浩二は、どうやら散らかっているのが嫌なタイプのようだ。

郁人が自分の荷物を抱えて、扉の方へ向かった。

「わかったよ。とりあえずは自分の部屋へ引き上げるから。おい駿、佑の荷物を部屋まで運んでやってくれよ。」

駿は、頷いて佑の荷物をまとめ始めた。謙太が、自分の荷物を持って郁人に続く。

康介も拓也も、面倒そうに自分の荷物をまとめ上げると、つらそうにしている俊也の方を、顎で示した。

「浩二、手伝ってやってくれ。オレ達も部屋へ帰って、着替えて来るよ。」

そうして、皆一旦部屋へと帰った。


佑の部屋へと入った駿は、荷物を置いて見張りに立った。

それというのも、佑がまた、通気口へ行く必要があると言ったからで、どうやら昨夜郁人がトイレの通気口の格子の向こうに隠した、返り血を浴びた黒服を、あちら側の俊也のトイレの天井裏まで運んで置くらしいのだ。

頭を怪我している佑を行かせるのはどうかと思ったが、佑は具合の悪いふりをしているだけで、その実元気らしい。

さっさと駿を踏み台にして天井裏へと登って行くと、目的を達するために通気口へと向かって行った。

程なくして戻って来た佑は、やっとホッと息をついて、表情を緩めた。

「はあ、やっと終わった。これで、俊也に罪を擦り付けることも出来るかもしれない。なに、別に完全にそうだと決まらなくてもいいんだ。村人が疑いさえしたら。」

駿は、頷いた。

「良い所で、オレがカミングアウトするよ。とにかく、トイレの前へ行こう。皆が出て来てるみたいな気配がするし。」

確かに、廊下の方で誰かが居るような微かな話声が聞こえて来る。

佑は、頷いた。

「よし、じゃあ行こう。」

そうして、二人はトイレの前で話し合う、人影に合流した。


謙太が、先に来ていて康介と拓也、俊也と郁人と共にトイレの扉を開いて、中を見て何やら深刻な顔をしながら話していた。

佑が近付くと、謙太が振り返って言った。

「お、どうだ?荷物は片付いたか?すまんな、駿にばかり手伝わせて。」

駿は、少し戸惑ったように首を振った。佑が、言った。

「思った以上に体がフラフラするんだよ。やっぱり血が足りないみたいだ。それで、どんな感じだ?」

郁人が、振り返って言った。

「正面から胸を一突きだよ。結構な勢いでやられたみたいで、ナイフが根元までしっかり刺さってるから、心臓を貫かれて声も出せなかったんじゃないかな。」と、美久の口元を指さした。「しかも中でナイフを傾けたかなんかしてるのか、肺も一気にいったんだろう。口からも血が溢れてるから、心停止が早いか窒息が早いかって感じで、即死だろうね。」

佑は、顔色は少し青く見えたが、郁人から見たらそれは、寝不足によるもののように思えた。昨日から、必死に頑張っているので、人狼陣営は皆疲れているのだ。それでも、頷いた。

「残酷なもんだな。ほんとにここに居る誰かが殺ったのか?もしかして、襲撃先を入力したら自動的に誰かが襲撃するんじゃなくて?」

拓也が、息をついて肩を落とした。

「残念だけど、ルールブックを読んだところによると、人狼が実際に手を掛けて襲撃しなきゃならないって書いてあったよ。覚えてない?」

佑は、肩をすくめた。

「そこまで全部覚えてないんだ。ただ、こんなこと誰が出来るんだろうって思ってさ。だって、みんなあっちに居たのに。」

郁人は、フッと息をつくと、美久の傍らにしゃがみ込んだ。そうして、ナイフをグイと引っ張って、抜いた。

「…いつまでも刺さったままなのは可哀そうだし。ナイフは洗って、どこかで管理しておこう。二度と使えないように。」

郁人はそう言うと、トイレの蛇口の下でジャブジャブとそれを洗った。

すると、上から女子達の気配が降りて来るのが分かった。佑も謙太も、駿も思った…あの、うるさい共有を何とかしなければならない。

思った通り、涼香を先頭に女子達が降りて来て、その涼香が、言った。

「おはよう。何か分かった?」

謙太が、調べるふりをしていたのだが、振り返った。

「死因は、恐らく胸を一突きにされたことによる失血死か肺が傷ついたことによる窒息じゃねぇかと。胸にまだナイフが刺さったままだったんでぇ。」

郁人が、隣りで頷いた。

「可哀そうだし、今抜いたよ。洗ってどこかに隠しておこうって話してたんだ。人狼がまたこれを使えないようにね。」

トイレの手洗い場所には、長いナイフが置かれてあった。なるべく具合が悪いように見えるように、表情を硬くした佑が、言った。

「で、結局どういうことなんだ。昨日は、俊也がトイレで叫んだのを聞いて、みんなそっちへ向かったのは覚えてるんだ。オレだってみんなと一緒にそっちへ向かったしな。」

すると、昨日は居なかった俊也がやつれた風情でそこに立っていて、言った。

「その様子は後で聞いたけど、確かにみんな居たのか?ええっと、先頭は誰だった?」

謙太が、手を上げた。

「オレだ。一番205に近い位置に居たから、そっちへ走った。」

康介が言った。

「そうだ、謙太が一番先頭だった。その後ろにオレと拓也が続いた。近くに立ってたからだ。」

それを聞いた知美が、手を上げた。

「その後ろを真代さんがすごい勢いで走って行ったから、私も遅れちゃ駄目だってついて走ったの。後ろは見てないわ。」

涼香が、言った。

「その後ろは、私。」と、佑と駿、郁人を見た。「すぐ後ろに駿さんが居たのはチラと見えたけど、他は?」

浩二が手を上げた。

「オレが、駿の後ろだった。後ろは気にしてなかったな。それどころじゃなかったから。」

郁人が言った。

「オレは浩二のすぐ後ろを、佑を連れて走ってた。佑はフラフラしてたし、オレだって他を見てる暇なんかなかったよ。ただ、すぐ前に浩二が走ってたのは覚えてる。」

浩二は、それを聞いて頷いた。

「そう言われてみれば、バスルームに着いた後、郁人が便座に登って天井裏から何か取ろうとしたっけな。みんなが見てたんじゃないか?あれは、到着してからすぐの事だし、オレの後ろに居た郁人が居たことをそうやって覚えてるわけだから、郁人が殺せたはずがないんだ。」

それを聞いて、郁人と佑は、あの時間ぐらいならすぐという感覚なんだな、と思って聞いていた。謙太が、追い打ちをかけるように同意した。

「そうだな。郁人じゃ身長が足りなくて、結局オレが登って取ったから覚えてる。佑は襲撃されて頭に怪我をしてその郁人に連れて来られた、となったら、みんな居たってことになるか。」

涼香が、イライラしながら言った。

「でも、美久さんは?!誰か見てないの?」

全員がお互いの顔を見て確認してるようだったが、誰も分からないと困惑した顔をしていた。郁人が、言った。

「残念だけど最後尾だったのかな。でも、オレが佑を連れて走って来る時も、後ろからは何の気配もしなかったけど。無我夢中だったし、しかも真っ暗だし、あまり覚えていないよ。」

俊也が、一人一人を見て、ため息をついた。

「みんながそれぞれの背中を見てるんだよなあ。証言がないのは最後尾らしい郁人と佑だけど、ここは二人で並んで移動してるし佑は襲撃されて大怪我していた。それに、一緒に来た証拠に郁人はバスルームですぐみんなに目撃されてる。オレも見た。誰も美久さんを殺せた人は居ないんだ。」

涼香が、眉を寄せた。

「俊也さんは?」皆が驚いた顔をする。涼香は続けた。「あなた、ずっとトイレで籠ってたんでしょう。だから二人は外へ出て来ることになったし、佑さんは襲撃されて、私達は降りて来ることになって、そうして美久さんが殺されたのよ!あなた以外に、目撃されてない人は居ないのよ?もしかして、抜け穴か何かがあって、あなたがトイレに籠っているふりをして、美久さんを殺したんじゃないの?!」

来た…!

佑も謙太も郁人も、この感情的になった共有者に期待していた。誰かを犯人にしたくてたまらないのだ。なので、少しぐらいおかしくても、勝手に心の中で辻褄を合わせてしまうのだ。

拓也が驚いた顔をした。

「え、俊也は霊能者なんじゃないのか。昨日COしたの一人だけだったよな?だから白いって言ってたんじゃなかったか。」

涼香は、何度も首を振った。

「だったら、誰だって言うの?!他にあんなことが出来た人は居ないじゃない!霊能者、他に居るんでしょう?!早く出て来てよ!なんだって出て来ないのよ、昨日偽者だって分かっていたら、この人を吊ったのに!」

どうする?駿はどこで出るのだろう。

人狼たちがそう思っていると、じっと黙って聞いていた、駿がため息をついた。

「オレだよ。」皆の目が、見開かれて駿を見た。駿は続けた。「オレは白を打たれていたし、吊られないからもう1日潜伏しようと思ってた。霊能はローラーされやすいし、相手がもし狂信者なら、襲撃先になるかもしれない。だから黙ってたんだ。」

絶好のタイミングだったんじゃないだろうか。

人狼たちはそう思ったが、涼香は何をとち狂ったのか激しく怒っているようだ。まるで鬼のような形相になって、美しい女という印象は全くなくなっていた。

「あなたのせいで!あなたのせいであの子は死んだのよ!」

駿は、涼香の怒りの視線をまともに受けて、冷静に答えた。

「君は共有者だが、やり方が気に入らないんだよ。オレにはオレの考え方があった。誰が襲撃されたのかなんか、分からなかったじゃないか。オレだったかもしれないんだ。昨日の時点で霊能者は何の情報も持って居なかった。出た所で殺され損だったかもしれないんだぞ。それなのに出て来た俊也を、あっさり信じた君が悪いんだ。」

涼香は、言葉に詰まった。

そう、駿は営業職をやっていただけあって、口が上手い。それも、相手に言いくるめられる、と危機感を持たせないタイプの、理路騒然と話すのに当たりのいいタイプの営業だった。それを知っている謙太は、味方なら心強いヤツなんだがな、と思っていた。

俊也が、必死に言った。

「そんなはずはない!そいつは嘘をついてるんだ!オレが真霊能者だ!昨日は本当に腹が痛くてこもってただけなんだよ!」

佑は、目を細めた。

…知ってる。だが、せいぜい下手な言い訳をして、皆に疑われてくれよ。そうして、あわよくば、縄を消費させてくれ。

謙太も郁人も、もちろん駿もそう思っていたが、そんなことは村人の誰も知らないことだった。

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