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真代は、あんぐりと口を開けてそれを見上げていたが、ハッと我に返った顔をすると、何度も頷いた。

「そうだったのね!あなたが猫又だったの?これで人狼はあなたを噛むことは無くなったけど、でも、せっかく出て来たけど…みんなが、どう思うか。」

知美は、皆を見た。拓也が、腕を組んで立っていたが、言った。

「…そうだな。まず、昨日出てくれてたらオレ達は迷うことなく佑を吊ってたと思うんだよ。だって、君は疑われても無いんだし、出て来る意味がないからね。まず君が本物で、佑が偽だと思っただろう。でも、今日出て来たって…浩二が人狼で、それを庇おうとしている人狼、としてもおかしくはないだろう。そうなると真代さんも人狼、それで三人だ。で、俊也が狂信者ってことで、辻褄が合ってしまうんだよな。」

そうなるの?!

知美は、昨日出なかったことを悔いた。だが、そんなことを言っても仕方がない。今出てしまったのだから、今信じてもらわなければならない。

「でも、私は本当に猫又なの!涼香さんが、最初から死んでもらうなら猫又、みたいな話をしていたから、私もなかなか出て来れなかった。昨日は、人狼が襲撃して来てもいいように、部屋にバリケードも作れって言われたけど、それもせずに寝たわ。でも、襲撃されなかった。襲撃されてたら、佑さんが偽だとバレるから、いいと思ったのに。」

康介が、知美を見上げた。

「つまり、君は人狼を道連れにしようと思ってたんだな。」

知美は、頷いた。

「ええ。でないと、猫又の意味がないもの。いざとなったら怖かったから、鍵はかけたけど…人狼なら、きっと開けて入って来るんだろうなって思ってたから。」

拓也が、顔をしかめたまま、言った。

「それだけじゃ弱いな。他には?」

知美は、少し考えて、言った。

「…全露出よ。」皆が、怪訝な顔をする。知美は続けた。「そう、私が出て来たら、全露出になってしまうの!今拓也さんが言ったようなら、真代さんが占い師に出て、浩二さんに黒が出てるのに、私が庇って猫又に出たってことよね?三人でちょうどいいって言ったわね?そんなこと、する?むしろ私は潜伏して、どうあっても疑われずに仲間を切って生き残ろうとしなきゃならなかったんじゃないの?!どうして、全露出なんかさせるのよ!おかしいじゃない!」

そう言われてみれば、そうだ、と皆が思ったらしい。

そうなって来ると、必然的に二人しか出ていないと見える、郁人と佑が俄かに怪しくなって来た。

「…もしかして、だからか?」謙太が、二人を見て、言った。「一人は潜伏してるのか?だからお前らは二人なのか?誰も庇ってない。さっき、康介が分からねぇって言ったぐらいで、拓也もオレも、みんなあっち側だった。お前達が二人なのは、そういうわけか?」

佑が、何度も首を振った。

「そんなわけないだろうが!人狼に上手い事言いくるめられてるんだ!オレ達は人狼じゃない!だったら、オレを吊ればいいじゃないか!吊って、誰か犠牲になったらいいんだ!」

皆が、顔を見合わせた。

本当に猫又はどっちなのか、分からないらしい。

いや、だいたいは知美なのでは、と思っているのだが、万が一佑だったらと思うと、危険な橋は渡れないと感じているようだ。

そんな中、真代は言った。

「私は、入れるわ。だって、佑さんと郁人さんが黒だと、私は知っているんだもの!誰かが犠牲になる事なんかないわ、必ず人狼が死ぬ!間違いなく。」

全員が、困惑して考え込んでいる。

その話し合いでは、答えは出なかった。


そのまま、朝食を摂り、昼食の時間も過ぎた。

皆が皆、言葉も少なに考え込んでいる。

ホワイトボードには、『猫又 佑 知美』と書かれてある。

知美は、悩んでいても埒が明かないので、ホワイトボードの脇に小さく書いて見た。


1 知美 猫又

2 佑  人狼

3 拓也 郁人の○

5 康介 グレー

6 真代 占い師

8 謙太 グレーだけど白だと思う

9 浩二 郁人の●

10俊也 霊能者か狂信者

13郁人 人狼


知美には、こう見えていた。

そして、どう見ても人狼があと一人、居ない。こうして考えると、グレーの康介と、郁人の白の拓也が怪しかった。

ここまで真霊能者だと思っていたが、俊也も俄かに浮上して来る。

知美目線、怪しいのはこの、三人だった。

「…そう見えてるのか?」

脇から、いきなり声がしてびっくりして振り向くと、そこには、謙太が立っていた。知美は、ホッと力を抜くと、頷いた。

「そうなの。私が真猫又だから、佑さんは黒。それを占って白って出してる郁人さんも黒。でも、もしかしたら佑さんが狂信者で、俊也さんが人狼って事もあり得るかもしれないけど…あれだけ罪を擦り付けられそうになってたんだし、無いかなって。後一人は、どう考えても分からないの。でも、康介さんか拓也さん、かなあって思うわ。」

謙太は、その小さな字を見つめながら、頷いた。

「だな。オレもそう思う。」と、知美を見た。「知美さんが猫又だなんて、思わなかったんだがな。だが、それ以上に人狼には見えねぇ。どっちが人狼かって言われたら、佑だ。だから、やっぱりオレは佑を吊るべきじゃないかって思ってるんだがな。」

知美は、嬉しそうに謙太を見上げた。

「信じてくれるのね。」

謙太は、その嬉し気な目から視線をそらして、頷いた。

「今は、な。明日になったら分からねぇけど。だが、知美さんの方が白いよ。佑を吊って、いいと思うんだが…後は、郁人と真代さんの真贋だな。真代さんを妄信していいのか分からねぇ。確かに佑を黒だって言ってるが、もしかしたら狂信者で、郁人がはめられてる可能性だってあるんだ。油断ならねぇ。」

知美は、それを聞いてフッと肩で息をつくと、頷いた。

「そうね。そうなんだけど…真代さんが、仲間を切ったりするかしら。私…そんな風には思えないの。」

しかし、謙太は声を落として、言った。

「…そうか。知らねぇんだな。郁人のヤツが、いくらか記憶を思い出しやがって。話し合いの時、感情的だったのもそのためだ。あのな、真代さんは、郁人のストーカーだったんだってさ。」

知美は、目を見開く。郁人さんの?!

「それは…初めて聞いたわ。」

謙太は、頷いた。

「それは面倒なストーカーだったらしい。郁人の家の近くに引っ越し来て、そこからずっと双眼鏡で見てるんだと。それだけでなく、毎日マンションの出入り口で、じーーっと見てる。壁とか柱とか、電柱の影から、じーっとな。で、ある日、家まで来たんだそうだ。あんまりにも嫌だったんで、怒鳴り散らしたらしいが、そうしたらあの女、自分で自分の腕をぶっすぶっすと刺し始めたんだと。」

知美は、それを聞いて身震いしながら両手で口を押さえた。確かに…生きていても、面白くないとか、何とか…。

謙太は、続けた。

「それで、止めようとしたら、笑いながら郁人にも襲い掛かって来たんだ。郁人は、油断して腹を一太刀やられて、それでも必死に手で防ぎながら包丁を取り上げた。そして、その反動で倒れた真代さんの背中を動かなくなるまで刺したんだと。もう無我夢中で、やらなきゃやられる、と思ったんだと話してくれた。そんな壮絶な記憶が、夢っていう媒体を使って戻って来て、今朝は気分が悪かったらしい。」

知美は、まさかそんなことがあったなんて、と絶句していた。だが、確かに真代ならやりそうなのだ。初めて会った時も、そんな不思議な感じの子だった。話していても、他と違ってどこか違和感があった。生きるのが、楽しくなかった、と言っていた。きっと、心に何か抱えていたのだろう。

「…知らなかった。郁人さんも、だったらつらいわね。そんな記憶が戻って来たのに、一緒に話し合ったりしなきゃならなくて…。」

謙太も、愁傷な顔で頷いた。

「そうなんでぇ。だから、佑が黒だって思っても、なぜか真代さんの方を完全に白だって信じられてないオレが居るんだ。だから、知美さんも気を付けな。やっぱり、確定するまであんまり信じ切らない方がいい。オレも含めてな。」

謙太は、そう言うと軽く手を上げて、そうして、そこから立ち去って行った。

知美は、謙太の言う通りなのだが、それでも誰かを信じて、そうしてついて行きたいという気持ちはあった。

何しろ、本当に何がどうなっているのか、分からないのだ。

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