表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/55

30

知美は、長く緊張していたので手足が冷たくなっているのが自分でも分かった。なので、駿が亡くなったのを目の前で見たばかりだったが、何か温かいものを口にしたかった。

自分のせいで駿は死んだのかもしれない。だが、知美には見えているものがあった。だからこそ、恐らく駿は人狼陣営だったのだ、という何か確信に似た感覚があった。

というのも、知美が確実に人狼陣営だと知っている佑が、駿に入れた訳でもなく、ただ真代に入れていたからだ。

俊也に入れるのもあからさまだと思ったのではないか。

そうして、今日吊れるとは思っていなかったが、真代に入れたということは、やはり真代が真占い師なのではないか。

そう、人狼陣営は涼香の信頼を得ていることで油断して、駿を失ったのではないのか。

知美は、そう思っていた。

佑は、村の反感をかって思わない方向へ行くこともあるってことが分かっただけでも良かった、と言っていた。そのまま人狼としての感想だったのだ。反感をかっている、共有者である涼香に期待してもまずいのだということが。

自分目線、佑は黒。そう、佑は黒なのだ。だからこそ、分かることがある。

知美は、そう思いながら、おにぎりやパン、その上カップ麺にお湯を注いで手に持った。ペットボトルのお茶は、まだ結構な数部屋の冷蔵庫に持って来られて置いてあったはず。なので、食べ物だけ持って、知美は真代と共に、キッチンから出た。まだ呆然と椅子に座ったままだった涼香を、二人共声を掛けるでもなく、黙って横を通り過ぎて自分の部屋へと向かったのだった。


部屋の前まで来た時、真代が言った。

「じゃあ、明日も無事でいられるように、祈ってる。」

知美は、頷いた。しかし、真代の方が危ないのは、知美には分かった。

「真代さん、真占い師なんでしょ?だって、私は猫又だって言ってるけど、佑さんが怪しいと思っているの。その佑さんを庇っていた郁人さんは、きっと人狼陣営だと思うんだ。だから、真代さんを信じようと思う。つまり、今夜私より、真代さんの方が危ないんじゃ…。」

真代は、首を振った。

「ううん。私は確かに真占い師だけど、私を襲撃しないよ。」知美が、え、と意外な顔をすると、真代は続けた。「だって、今日吊った駿さんは白なの。なのに佑さんと郁人さんと同じような意見だったし。つまり、狂信者だと思うわ。つまり、占い師に人狼が居る。郁人さんは、人狼よ。」

知美は、口を押さえた。

「え…そうなの?真代さん目線…確かにそうかも…。」

真代は、何度も頷いた。

「そう。俊也さんはきっと、明日白結果を出すわ。それで私目線、やっぱり俊也さんが真霊能者だって分かるわ。違ったら、また考えを改めなきゃならないけど、多分間違いないと思う。ということは、人狼の郁人さんは、私を殺せない。だって、私を殺してしまったら、自分が人狼だって村に公表することになるのよ?私は安全。狩人がまだ、きっと生きてると思うんだけど、私は守られないわ。まあ、いろんな意味で守られないんだと思うんだけど。」

知美は、感心してそれを聞いていた。真代は、本当によく自分の立場を理解している。日増しに、しっかりして来て居るようだ。

知美が黙っているので、真代は続けた。

「だから、知美さんは気を付けて。しっかり鍵をかけて、そして、扉からすんなり入って来れないように、部屋にあるソファとかで前を塞いで、しっかり自衛してね。あなたが白なのは、私は知ってる。つまり、人狼も知ってるのよ。だから、きっと生き延びて。一緒に、生きて帰るんでしょう?私、頑張るから。」

知美は、真代をじっと見つめて、頷いた。真代は、知美の中で限りなく真に近い占い師だ。なので、言った。

「一緒に帰ろう。きっと。もし私が死んでも、きっと勝って生き返らせてね。私…がんばるわ。」

真代は、しっかりと一つ、頷き返すと、自分の部屋の方へと歩いて行った。

知美は、真代を村のみんなが信じてくれるように、もしもの時は猫又だとカミングアウトしようと、その背に誓った。

今の知美は、真代を信じる気持ちがとても強かった。


知美はその夜、鍵はきちんとかけたが、部屋に運び込まれてあったソファを扉の前に持って行くのは、やめにした。

自分を生き返らせる能力が、ここの管理者にあることを、もう知美は知っている。

もし、村陣営のためになるのなら、ここでもし殺されても、仕方がないと思ったのだ。

だが、そう思ってはいるものの、やはり怖かった。なので、電灯はつけっぱなしにして、ベッドに入っても、なかなかに寝付けなかった。

朝の6時の、人狼の襲撃の終了時間まで、まだまだ時間がある。

それを待ちながら、深夜の2時を回った頃に、やっと知美は、眠りに落ちて行った。


朝の光が差し込んで来て、知美は目を覚ました。

反射的に金時計を見ると、時計は朝、6時前だった。

急いで起き上がった知美は、手早く身支度を整えて、その時間を待つ。もし、これで人狼が誰の襲撃も出来ていなかったら、その時点でみんな、死ぬのだろうか。

知美は、そうなった時のことを考えて背筋を冷たい物が流れるのを感じていると、金時計は、カチリと6時きっかりを指した。

すぐに扉を開いて外を見る。何もない…一つ向こうの部屋の、真代が顔を覗かせているのが見えた。

「真代さん!」

知美は、思わず駆け寄った。真代は、知美の手を握りしめて、ホッとしたような顔をした。

「ああ、良かった…でも、本当に良かったのかな…?」

真代が、不安そうにそう言う。それは、誰も人狼が襲撃出来ていなかったら、ゲームは全員追放で終わってしまうからだ。

「分からないわ。でも…涼香さんも、確認して一緒に下へ行ってみる?」

真代が、気が進まないような顔をしながら、頷いて振り返った。

「ええ。」と、奥へと歩いた。「ええっと、一番奥の、305号ね。」

二人で歩いて、その前へと到着すると、真代が顔をしかめるばかりで何もしないので、知美が扉を叩いた。

「涼香さん?襲撃時間が終わったの、どうしてる?」

返事がない。

知美は、真代と顔を見合わせた。あれだけ神経質になっていた涼香が、襲撃時間が終わったのに、皆が無事なのか確認せずに寝ているだろうか。

「…涼香さんだって、疲れてるかも。昨日、みんなにあんな風に言われちゃったし。拗ねてるのかな。」

知美は、顔をしかめた。確かにそうだったけど、そんなことぐらいで涼香がくじけるだろうか。

知美は、もう一度扉へと向き直った。

「涼香さん?」と、ドアノブへと手を掛ける。すると、スッと普通に扉が開いて来た。「え…?!」

びっくりして思わずドアノブから手を離すと、後ろへと下がった。すると、真代が顔を険しくして、進み出ると扉を大きく開いた。

「涼香さん?無事なんでしょう?」

知美は、扉の鍵が掛かっていなかったことで、その中で今何が起こっているのか想像出来て思わず後ずさりした。

「涼香さん?」

しかし、真代はずんずんと中へと入って行く。知美が、それでも入口で躊躇して足踏みしていると、真代が、中から戻って来て、言った。

「…居ない。涼香さん、ここには居ないよ。」

「え?」知美は、最悪の状況を想像していただけに、拍子抜けした。「ええっと、風呂とか、トイレは?」

真代は、入口横のそこへスッと寄って、ドアを開いた。

だが、中を覗き込むが、中には誰も居なかった。

「あら?…じゃあ、外に出たのかしら…?」

真代は、真顔になった。

「…人狼の襲撃時間に?」

確かにそうだ。

知美は、六時になったのを見て、部屋から出た。そして、出てすぐに目にしたのは、同じように待っていたと思われる、真代だった。

そう、涼香の姿は、もう見えなかったのだ。

「どこに…?下の、男の人達の部屋かしら。でも、襲撃時間に行くなんて、どうして…?」

「分からないわ。」真代が、もっともなことを言った。そして、部屋から出て、扉を閉めた。「とにかく、男の人達の所へ行ってみよう?何か分かるかもしれないし。昨日の夜のうちに、何かあってどこかに匿われてるかもしれないじゃない。」

知美は、少し不安だったが、それでも頷いて、階段を真代と共に降りて行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ