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食事は、なんとなく一人で摂りかった。

みんながみんなそうではなかったが、それでも真代も一人だったし、涼香も一人でさっさとキッチンから食べ物を持って来てあちらこちらに散って座って済ませている。

一番最後にみんながキッチンに居なくなったのを見て入って行った知美は、冷凍庫から冷凍のパスタを取り出すと、何がどうなっているのかよく分からないほど多機能な電子レンジに放り込んで、温めボタンを押した。

電球色に中身が見える中、知美はじっとそれを見つめて考えた。さっきまでの話し合いを見ていても、恐らく今日は役職のうちどちらかをローラーしようという話になるだろう。猫又である知美目線、佑が絶対に人狼陣営なのだが、今更言って出て勝てるとは思えない。悪くすると役職ローラーに巻き込まれて、吊られてしまう可能性まで出て来てしまった。

では、自分は誰を疑えばいいんだろう。

占い師で考えてみよう。真代目線、対抗の郁人は人狼陣営だ。霊能者の、駿は占って白だと知っているので普通なら真だと思いたいところだろうが、郁人と駿の意見が一致しているところが多いので疑っているようだ。しかし、普通に考えると白を見ている駿が真に近いはずだった。

だが、真代は郁人のこともあるのだろうが、頭から駿が狂信者だと決めてかかっているところがある。

それが、村の不審をかっていた。

普通に考えるとどちらも同じぐらい怪しいはずで、決定することは出来ないはずなのだ。それなのに、頑なに俊也を庇い、駿を攻撃する真代は真占い師だとしても皆から不審がられるのは仕方ないことだった。

だがそのせいで、このままでは知美も黒く思われる可能性がある。なぜなら、真代に占われて白が出ているからだ。

涼香の言い方だと、グレーより占い師に白を出されている者達の方が怪しいような感じだった。囲われているという見方からだった。

知美目線、絶対的に自分は白なので白が出て当たり前だと思っていたが、回りはそうは見ないのだ。

考え込んでいると、電子レンジから温め終わった電子音が鳴った。

知美は、温まったパスタを取り出して、振り返ってそこにあるテーブルの上に置こうとして、びっくりした。

そこに、涼香が立っていたのだ。

「す、涼香さん、居たの?」

知美が、危うく取り落としそうになったパスタを何とかテーブルの上へと置いて言うと、涼香は神妙に頷いた。

「ええ。何だか様子が変だと思ったから、キッチンへ入って行くのを見て追って来たの。」

つまり、知美が電子レンジの前で考えている間も、ずっと後ろに居たということだ。必死に考え込んでいたので、全く気付かなかった。

「そうなの…気付かなかったわ。」

涼香は、テーブルの椅子を引いて座ると、言った。

「お邪魔しちゃだめだなって思って。きっと考えてるんだろうし。」

知美は今の涼香の前に座るのは少し嫌だったが、不自然ではいけないと思い、仕方なく正面に座ると、パスタのフィルムを剥がして、言った。

「誰が怪しいのか、分からないなと思って。役職ローラーって言っていたけど、本当に誰が人狼なのか分からなくて。」

涼香は、慎重に頷いた。

「あなたはどう思うの?今考えてたことでいいよ、結論が出てなくても。私も悩んでるんだけど、参考にしたいわ。」

しかし、その目には何かを探ろうとする色があった。参考にしたいというよりも、知美から怪しい箇所がないか、探ってやろうとしているように見えた。

そう考えると、黙って後ろに立っていたのも、知美が油断して独り言でも言わないかと見ていたと思えて来て、知美は動揺した。それでなくても、自分は猫又という役職を公開出来なかった。今ここで涼香に言ってもいいのかもしれないが、今更と信じてはもらえないだろう。

「…まず占い師がどちらが真でもおかしくないと思うの。最初は佑さんを庇ってるのかと思って、郁人さんを怪しいと思っていたけどそういうわけではないようだったし…真代さんは、必死になり過ぎて村の不評をかってしまってるのか、それとも人狼陣営で入れ知恵されていてああなっているのかが分からない。占い結果を見てもどちらが真か分からないけど、感情的にはみんなは真代さんを怪しんでいるんだろうなって思うわ。」

涼香は、真面目な顔を崩さずに頷いた。

「それはそうね。でも、私は真代さんの方が、急にあんな風にキビキビ冷静に発言できるようになったことと、自分が白を出している駿さんを頭から信じないってところが怪しいと思えてるわ。真代さん目線、どちらが真でもおかしくはないと思うのに、郁人さんと意見が合っているってだけで決めつけるのは、どちらが真なのか知ってるからだって思ったら辻褄があうと思ってしまってる。」

村から見たらそうなるんだ。

知美は、思って聞いていた。真代は、一生懸命考えているようにも見えた。自分を白だと言ってくれたので、昨夜までは信じようと心から思っていた。だが、今日は状況が変わってしまったのだ。涼香が言ったように、真代がずっと一緒ではなかったのは確かなのだ。部屋へ籠っている間に、人狼たちと話し合っていたと言われたらそう思えてしまうのだ。

「じゃあ、涼香さんは真代さんが人狼だと思うの?」

知美が言うと、涼香はため息をついて、そして椅子の背にもたれ掛かって首を振った。

「分からないわ。郁人さんに占われたわけじゃないし、狂信者なのか人狼なのかも分からない。でも、疑わしいのは確かなのよ。昨日あれだけ疑っていた佑さんを占わずにあなたを占ったのだって、優子さんが吊られたから知美さんまで吊られたらいけないからって理由がまず、村のためじゃないじゃない。あなたを白くして、守りたいと思っている人狼陣営だとしたらしっくり来るけど。」

知美は、慌てて手を振った。

「違うわ!私は人狼じゃない!涼香さんだって、昨日そう言ってくれてたんじゃないの?信じてもらえてる私を囲うなんておかしいわ。それなら、他の人狼を囲った方がいいじゃないの。」

涼香は、それを聞いてもう一度首を振った。

「だから分からないのよ。そこは感情で、仲間の中でもあなたにだけは生きてて欲しかったってことなのかしらって思っちゃったりしてね。白いと思ったのも、あなたと真代さんが組んで、後で真代さんから聞けばいいぐらいに思っていたんじゃないかって思ってしまったりしてね。」

知美は、やはり真代が怪しまれたら自分も怪しまれるんだと慌てて首を振った。

「知らないわ!真代さんが怪しいと私も思わずに居たもの。本当に好意で占ってくれたんだと思っていたの。今日の言動を見ていて、私も確かに昨日とは違っておかしいとは思ったけど…。」

涼香は、まだじっと知美を見ていたが、椅子から立ち上がった。

「まあ、今日は役職から吊ることになると思うわ。あなたが怪しいか怪しくないかは明日以降のことになると思う。でも、こうなって来ると誰も信じられないから、みんな自分の部屋に籠っていた方がいいかもしれないって、向こうでも男性達と話してたんだ。部屋から出るから、真っ暗な中で襲撃されるんだし、それに怪しまれるのよ。部屋に居れば、その心配はないじゃない?鍵は掛かるんだし、誰かと一緒に居て停電でもして殺されたりしたらたまったもんじゃないもの。」涼香は、踵を返して扉へと向かった。「ごめんなさいね、食事の邪魔をして。それじゃあ、また2時になったらよろしく。」

涼香はそう言うと、さっさと扉を開けて出て行った。

その時に思ったのだが、扉が開くと結構な音が出る。涼香は、きっと入って来る時は、そっと入って来たのだろう。知美を怪しんで、その行動を見ようとしたのだ。

知美は、パスタが冷めて行くのは分かっていたが、それでもそれを口に運ぶ気になれなかった。

思った通り、真代が疑われて、知美も一緒に疑われる対象になりつつあるのだ。

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