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佑は、皆の疑惑の視線をまともに受け止めて、目を反らさずに言った。

「傷のことなんかオレに分かるはずないじゃないか。真っ暗な中で、後ろからだぞ?衝撃が来たから殴られたんだと思ったからそう言った。でも、本当は切られたのかもしれない。美久さんがナイフで刺されてたのを見ても、凶器はナイフだったのかもしれないしな。」

涼香が、困惑した顔をした。

「でも…ナイフだったら頭を狙うかしら?胴体を後ろからの方が自然じゃない?」

それはみんなも思ったようで、戸惑ったように顔を見合わせて誰かが何かを言うのを待っている。知美も、どう考えたらいいのか迷った。確かに佑の言う通り、切られても殴られても暗闇で背後からならその衝撃の度合いで何をされたのか判断するしかないだろう。だが、美久が胸を一突きにされていたことを考えても、それなら胴体を狙う方が確実なのも確かだ。犯人は、そんなことすら思い浮かばないほど焦っていたのだろうか。

しかし、意外な人物が口を開いた。

「そういえば、なんだが。」郁人だった。「真代さんがオレの対抗で敵だからとつい、反論してしまったんだが、言っていることは間違っていないかもしれない。」

拓也が、驚いて郁人を見た。

「え、お前が黒いってことか?佑が黒いならお前もだろう。」

郁人は、渋々といった風に頷いた。

「オレと佑がひとくくりにされてるから、どうしても庇ってしまっていたんだ。占って白だと知ってるし、佑は村人、人間だと信じていたから。でも、よく考えたら狂信者でも白って出るんだよ。怪我までしてるし絶対に人間だと思い込んでた。」

だが、真代は言った。

「そんなの、駿さんだって白だわ!狂信者だとしたら、私目線状況を考えても狂信者は駿さんよ!」

郁人は、真代を睨んだ。

「それはあくまでも君目線じゃないか。オレ目線、駿がどっちなのかまだ分からない。俊也なのか駿なのか、真霊能者の判別がつかないんだ。佑がもし、狂信者だとしたら、オレはちょっと考えなきゃならない。」

涼香が、身を乗り出した。

「どういうこと?」

郁人は、頷いた。

「オレは佑を確かに介護した。でも、最初みんなが走って行くのが見えて、オレもついて行こうとして

半分ぐらい走った後、そう言えば殴られた佑はって我に返って、振り向いたんだ。すると、佑はトイレのドアを閉めて、こっちへ来ようとしているところだった。オレは慌てて戻って、そして佑を連れてみんなに合流したんだ。つまり、目を離していた時間があった。」

涼香が、それを慌ててメモに取りながら、言った。

「じゃあ、みんなが走り出してすぐに追いかけたわけじゃないのね?」

郁人は、渋々といった感じで佑を横目にチラと疑うように見てから、頷く。拓也が言った。

「状況を整理してみよう。俊也の叫び声が聞こえた。謙太を先頭にみんなが駆け出した。郁人も続いて走って、半分ぐらいの所で佑のことを思い出して振り返った。佑はトイレのドアを閉めていた。郁人は戻って佑を連れて皆に合流した。ってことか?」

郁人は、頷いた。

「そう。一緒にトイレに行ったけど、襲撃された時オレはまだトイレの中だったからね。叫び声に驚いて出て来て、トイレのドアは開けっ放しだった。そこへみんなが来て、佑は座り込んでいた。話していた間、トイレのドアは開きっぱなしだっただろう?でも、美久さんが居ないって言って戻った時にはどうなってた?オレも行ったから覚えてるけど、閉じてなかった?」

知美は、その時のことを思い出した。涼香と郁人、謙太と四人で美久を探しに行ったのだ。トイレのドアは閉じていて、でも上の小さな窓から灯りが漏れていた。

「…ドアは、閉じていたわ。」

知美が言う。涼香は、何度も頷いた。

「確かに閉じてた。でも、上の小窓から灯りが漏れていたから、誰か居るってなって…開いたのよ。」

拓也が、せっつくように郁人に言った。

「お前が佑を連れに戻った時、小窓の灯りはどうだった?」

郁人は、顔をしかめた。

「憶えてないんだ。みんな先に行ってるんだと思ってたから確認しようとも思ってなかった。慌ててたしね。取り残されたら、暗闇から誰が出て来るか分からないし。でも、もし美久さんが居たなら、佑がドアを閉めるのはおかしいんだよな。一緒に行こうとしただろうし。」

「でも、現に美久さんはトイレで殺されていたわ!」涼香が、声を張り上げた。「みんなが目を離した隙に、佑さんが美久さんをトイレに押し込んで刺して、ドアを閉めたんじゃないの?!」

佑は、自分が疑われているのに、落ち着いた風でその話を聞いている。

郁人は、肩で息をついた。

「そうなるんじゃないかって、言わなかったんだけど。でも、可能性はあるよね。ほんとに僅かな時間だし、佑は白だし怪我してるしで、オレはそうじゃないと思いたかったんだけど。でも、俊也だって僅かな時間での犯行ってことになるから、オレとしては言わなきゃならないかなって。」

真代が、ホワイトボードの前でペンを握りしめたまま言った。

「そんなの!自分まで疑われるから後から言い出したとしか思えないわ!佑さんが怪しいならあなたも怪しい!」

郁人は、真代を見て落ち着いて言った。

「オレから見たら、真占い師と狂信者をまとめて怪しく見せようとしている人狼に見えてるけどね。人狼から見たら、狂信者だって切り捨てられる持ち駒だろう?怪しい動きをさせてオレに佑を占わせて白を出させ、自分は見るからに白い人を占って白を出す。佑に白を出したオレを怪しく見せるために、佑に怪しい動きをさせる。オレは佑が白だと占ってるからある程度は庇うだろう。そして、自分は対極に居てまとめて攻撃する。真実を知ってるんだから、簡単だよね。真占い師が村のために怪しい所を占わないなんてないじゃないか。まんまと引っ掛けられるところだった。ここで言えて良かったよ。」

知美は、それを聞いて真代への不信感が湧き上がって来るのを感じた。感情的に考えているから、自分を占ったんだと思っていたし、そういう人なんだと納得しようと信じていた。だが、確かに普通に考えたら怪しい人から占うのだ。あれだけ昨日疑われていた佑を占わずに、全く議論に上がっていなかった知美を占ったことは、確かに郁人の言う通り村のためとは思えなかった。

俊也が、ボソッと言った。

「そう言われてみたら…オレ、佑から受け取ったパンを食べた。もしかして、人狼の入れる物置部屋には、下剤とかあるのか?アンパンだったけど、やけに餡が水っぽかった気がする。」

謙太が、眉を寄せて俊也を見た。

「それ、全部食べたのか?残ってないか。」

俊也は、首を振った。

「腹が減ってたし。全部食べたよ。それからしばらくして、腹を下したんだ。みんな知ってるだろう?食べてから一時間ぐらいだったかな。」

しかし、拓也が言った。

「佑はパン担当だったからな。オレも佑からもらって食べたが、なんともなかったんだ。俊也だけそうなったのはどうしてだ?」

謙太が答えた。

「誰でも良かったんだろう。疑われる対象として、トイレに籠ってさえくれたらな。オレでもお前でもおかしくなかったってことだ。」

拓也がサッと顔色を青くする。

しかし、そこまで黙っていた佑が、大袈裟に息をついたのを見て、そちらを見た。佑は、少しも焦ってはいなかった。むしろこちらを同情するような、嘲るような表情で見て、言った。

「いろいろ言ってくれるじゃないか。全部憶測でしかないじゃないか。本当は村にために、言うべきじゃないと思ってたんだが、ここまで黒塗りされたら言うよりないな。」そうして、皆が佑を凝視して次の言葉を待っているのを確認してから、続けた。「オレは、猫又だよ。これで人狼はもう、オレを襲撃しないだろうな。誰だか知らないがオレを襲撃したヤツは命拾いしたよ。オレが死んでたら、そいつも死んでたんだしな。」

知美は、息を飲んだ。

猫又…!そんなはずはない。自分が猫又なのだ。じゃあやっぱり、佑が美久を殺したのか!

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