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日菜とリンダさん  作者: さん☆のりこ
9/35

踏み出した一歩

サッカーと資格試験の知識は、パソの検索で得ています・・・間違っていたら御免なさい。

(*´Д`)。

 GWウイークも無事済んで、また普段通りの日常が戻って来た。


クラスメートはどこそこへ行ったのだの、デートしただの・・と、青春の香りを漂わせてくれている。羨ましくないと言えば嘘くさいが、取り敢えずは資格取得が第1なので、其処ら辺の事は考えない様にしている日菜であった。

そんな風に、ごく普通に5月が過ぎて行き・・6月に入ろうとしていた。


 日菜が目指しているのはCADの基礎試験だが、IBT試験と言って自分のパソコンで受けることが出来る便利なものだ。受験生の中にはネットカフェとかで試験に臨む猛者も居るらしい、勿論日菜は学校のパソコンで受験する。パソコン部では定期的に各種検定試験を実施するので、日菜はワープロ検定やPC検定・エクセルやワードの能力検定などの級も取っていった。

今度の日曜日はいよいよCADの基礎検定だ、此処でつまずくと先に進めない(リンダさんの圧力も感じるし)ここは正念場(日菜的には)と言えるのだが・・・土曜日にはお婆様の49日の法要なのだった。


 日菜はお婆様の家には一時避難所(隆志や親戚の手伝いから逃げる為だ)として随分とお世話になっていたので、不義理をする訳にはいかないし・・・母親と兄は<拠ん所無い事情>とかで、すでに欠席が決定済なので、益々賑やかし要員としてしの任務を勤めねばなるまいと思っている。元々お婆様関係の用事の時は、父親と日菜の組み合わせで出かける事が多かった。用事の帰りに美味しいモノを二人でコッソリ食べたりして、チョッとした楽しみであった事は母や兄には秘密だ。 


 車にCADの基礎の参考書を積み込んで、日菜と父親は朝早く自宅を出発した。地元の高速を抜け首都高で東京を横断し、父の実家のお墓のある山の麓まで行かなくてはならないのだ、渋滞を避ける為には早く出て遅く帰るのが望ましい。


「お婆様の所に行くのも、これが最後と思うと寂しくなるねぇ。」

「日菜はずいぶんと懐いていたからな。」


父親の心境はいかに?

実の息子も50歳近くもなると、肉親との別れも淡々としたものなのか?

父とお婆様・・2人の間に有る親子の心情と言うのは、娘と言えども口を挟めるものでは無いらしい。日菜からしたらお婆様はごく普通の常識人で、傍に居るのが楽な良い人だったけどなぁ。



高速を走り続け大きな河川を渡ると、やがて離着陸する飛行機が見え始める・・空港が近いのだ。


『ほう、大きな鳥だな・・・興味深い。』

『飛行機だよ、人や荷物を積んで空を飛ぶの。』


「凄いねぇ、あの飛行機は何処まで行くんだろうね。」

「日菜はまだ飛行機に乗った事が無かったか。」

「うん、でも秋の修学旅行で乗れるよ、グアム行くんだってさ。水着は自由なんだけど、ビキニはNGなんだって。まぁ日菜はスクール水着で十分だけどね。お父さんスマホ借りて良い?飛行機は何故飛べるのかで検索したい・・(ってリンダさんが五月蠅いんだよ。)」




飛行機で興奮したリンダさんだったが、首都高に入って高層ビルを眺めたら再び興奮し出した。


『日菜、あの建物の上まで登ってみたい。』

『今日は無理だよ法事だからね、就職して東京に出たなら連れて行くから、それまで待っていて。』

『うむ、仕方が無いか・・其方必ずこの地で就職せよ。あのような田舎では私の知的好奇心が満たされぬ。』


・・・・田舎で悪かったね!!

人に貶されると、無性に腹が立つのが故郷というものである。



 その後もリンダさんは、お坊さんのお経の意味を知りたがったり、衣装が派手で気に入った・・とか。土葬では無いのか!と火葬と骨壺に怯えたり・・何やら小まめに騒いでいたが、帰りの首都高で光が溢れるビル群を見て・・此処は此処で素晴らしい世界の様だな・・とか呟いていた。

魔術が無くても、人々は栄えることが出来るのだな・・と、話す声は・・嬉しい様な寂しい様な複雑な心境の様だった。


 そんな事を言われたら、この世界からあちらの世界に攫われた<孫娘ちゃん>の事が心配になるではないか、彼女はどうしているのだろう?無事で元気でいてくれるのか・・日菜だけが知っている心苦しい秘密だった。





 夜も遅く我が家に帰り着き、シャワーを浴びて布団に潜り込み・・・目を瞑ったと思ったら、もう朝だった。・・・・なにこれ?タイムワープ?

只の賑やかしで神妙に座っていただけの法事だったが、いつもと違う事をするだけで何となく疲れるものだ・・・今日は<基礎>の試験の日なのに。


「う~~むぅ、まだ眠いよ・・・疲れが取れた気がしない。」


そんな風に愚痴ったら<パアッ>と体の周囲に光が広がって・・・なんだなんだ!と思ったら、何だか不思議に体がスッキりとして、ボオッとしていた頭もはっきりしていて驚いた。


「・・・まさかリンダさんが?」

『癒しの魔術だ、其方がトキョで就職しないと困るからな。』

「うわぁ~有難う御座います、助かります・・・。

でも何だか申し訳ないね、リンダさんもっと頭のいい<特進クラス>の人でも紹介しようか?そうすればもっと知的好奇心の満たされる生活を送れると思うよ?」

『それは無理だ・・私はあの婆に拾われてから長い間、婆とコンタクトを取ろうと色々試し工夫して来たのだ。ようやっと意志の疎通がとれたと思ったら、ポックリと亡くなってしまったがな。其方と話が出来たのは、あの婆と孫である其方の発する波動が似ていたからだ。これでまた他の者とコンタクトを取ろうと思ったら、数年の時間が掛かるだろう・・そんな面倒は御免だ。』


・・・さようですか・・・。


「じゃぁ、2人とも目指せ東京だね。頑張ろう!」


日菜は時間まで過去問の復習をする為、早めに家を出発していった・・・勿論チャリである。




     ******



 学校に着いたら驚いた、何だか人手が大勢出ていて賑やかだったのだ。


「何だろうね?今日何かイベントが有ったっけ?」


他校の生徒やサッカーフアンみたいな人達が、横断幕などを抱えながら歩いて行く・・・サッカー場に向かっている様だ。ポンポンを持って人はチアの女子だろうか、華やかで良いね!


「練習試合にしては大ごとだねぇ。」

「練習じゃなくて本番よ。」


    はい?


「不思議ちゃん、遅いじゃないの!」


目の前にマネージャーの下っ端の人が突っ立って怒っていた、どうやら日菜が登校するのを此処で待っていたらしい。何と今日は県の大会の予選の初日だとかで、ウチの高校のサッカー場を使って試合があるそうだ、相手高校にとっては超アウェーだね御気の毒に。

早くベンチに行って、今日のメンバーの体調をオ~ラ診断しろと言う。


・・・今日は日菜も試合(試験)なんだけどな・・・。


「あの~本当に申し訳ないのですが、昨日祖母の49日の法要が有りまして。

成仏したのか、今朝からさっぱり・ちっとも・これっぽっちもオ~ラが見えなくなりました(嘘だけど)。もうお役には立てそうも有りません・・御免なさい。」

「そんな!!」


下っ端さんは青い顔をして走り去って行った・・・さよ~なら~。




 パソ教室に着いて過去問を読み込んでいたら、マネージャーの御大・・美人さん自らがやって来た。


「見えなくなったって本当なの!」


嘘です・・美人さんのオ~ラが怒りで真っ赤に燃え上がって、教室中延焼しそうな勢いです。ハッキリ言って怖いです。


「どうするのよ!」

「どうもこうも有りませんよ、今まで通りに戻るだけです。」

「でも!」

「私が指摘した事は、先輩も解っていた事ばかりでしょう?先輩は性格まで含めて、メンバー全員を正確に把握しているのでは有りませんか?」


美人の先輩は驚いた様に日菜を見下ろして(モデルみたいに背が高いのだ)来た。


「今までサッカー部を見守って来た自分の目を信じて下さい、ルールを知らない様な私より、先輩の経験と人を見る目の方がよっぽど信用が置けますよ。サッカー部のメンバーだって、信頼しているのは先輩で有って、部外者の私では有りません。」


日菜がそう言うと、先輩のオ~ラがシュルシュルと萎み、元の白い色に戻って行った。白いオ~ラは、他者を理解し包み込むような、純粋で人を大切にする人が持つと言うから・・先輩にはピッタリだよね。


「早く戻って皆を勇気付けてあげて下さい、勝利の女神は微笑まなくちゃ。」


うん!我ながら上手い事を言ったと自己満足していたら、顧問の先生が教室に入って来た。


「うん?どうした・・なんか用か?君はサッカー部のマネージャーだろう、コイツはこれから資格試験なんだが。」


先生・・・良い所に来てくれたが、コイツは無いだろうコイツは。


「10時には始めるぞ、起動してログインしろ。」

「は~い。」


美人さんは悪かったわね、試験頑張って・・・と去って行った。

微笑んではくれなかった、日菜には勝利の女神は微笑まないらしい。





 ただ一人・・静かな教室でカタカタとパソコンを操作していると、サッカー場の喧騒が聞こえて来る。太鼓を叩いているのか、タタタン・・・タタタン・・と不思議なリズムだ、応援の音頭を取っているのだろう、それに合わせてオウオウ~~と歌っている様だ・・・応援も楽しいんだろうな。

時々弾けた様な<わああぁーー!!>と言う歓声が聞こえて来る、味方か敵か・・ゴールしたのだろうか。


『日菜、集中しろ。』


日菜の試合はひたすら静かだった・・・。



   

     *******




 基礎の結果はすぐに解る、正式な通知は明日になるが・・・日菜は無事に<CAD利用技術者・基礎>を取得できた。

今日はお祝いなので、いつものソフトクリームより豪華に、チョコとバニラのミックスにした。


『リンダさんのお陰様で、無事基礎の資格が取れました。有難うございます~。』

『うむ、この私が教えたのだ、このぐらいは当然であろう。』


カンパーイ!おめでとう!日菜は一人でソフトを夕焼けの空にかざした。

そのソフトにカンパーイと合わして来た者がいた・・ソフト君だ・・もう驚かないよ。


「今日資格試験だったんだって?その様子なら良い結果だったのか?」

「お陰様でね、サッカー部も勝ったんでしょう?余裕な顔をしているね。」


まあな、まだ1回戦だしな・・・。



相手の高校はウチに当たって気の毒だったと思うけどね。

勝った割には嬉しそうでもない、何か有ったのかな?


「大高先輩がU-18に選抜された。」

「あんだ~?」


アンダーと言うと、アンダーバストしか思い浮かばないが?

なんだそれ?


「18歳以下の有力な選手が選ばれて、日本代表として試合に行くんだ・・海外にな。行く予定だった者が故障して、急遽先輩に白羽の矢が当たったそうだ・・今日試合後に聞かされた。」

「海外に・・・凄いね。」

「とても凄い事だ、高校生から選ばれるのはごく僅かなんだ、普通は既にJリーグに入っている様な有力な選手が多く出場するんだ。同じチームのメンバーとして誇らしいし、俺も嬉しいんだが・・・。」


嬉しそうには見えないぞ?あれか?男の嫉妬って奴か?


「県大会の日程と近いんだ、先輩は当然U-18を優先してそちらの練習に参加しなくてはならない。俺達は大高先輩無しで勝ち抜いて行かねばならない。」

「はぁ・・・、そうなんだ~~~。」


素晴らしく他人事の感想だ・・・実際、他人事だしな。


<ソフト君>の例の胸の殻は、綺麗に二つに割れていたが・・・またまたもとに戻ろうとしているのか?消え去る事無く、再び閉じようとしている様にも見える。案外と繊細な人なのかな?





「これはチャンスだね。」

「チャンス?」

「前に言っていたでしょう、スカウトにアピールしたいって。

そうだ!これは千載一遇のチャンスなんだよ。

実力を見せつけて<ソフト君>ここに有りとぶちかますんだ!!

下剋上だよ!革命だ!!成り上がるんだ!!!

だれもかれも蹴落として、エースの地位を勝ち取るのだ!!

どうせ来年にはエース様は卒業だもの、後を引き継ぐのは<ソフト君>なんでしょう?構う事無いからやっちまいな!」

「お前・・・簡単に言うよなぁ~~。」


他人事だからね、そんなもんだ・・・応援するのは簡単だよ。

自分はCADの1級なんて取れる気はしない・・リンダさんは怒りそうだが。



「うちのお婆様がね、よく言っていた。」

「不思議な力が有った、今朝成仏したって言うお婆さんがか。」


うんうん・・と頷いて、お婆様の真似・・両手で肘を掴んで、顎を少し引いた感じで斜に構えて低めの声で・・・。


「日菜さん?自分を信じる事が出来ない者を、どうして他人様が信じて下さると思うのかね。」


日菜のパフォーマンス(お婆様憑依?)に驚いたのか、ソフト君は息を飲んで見つめて来た、そんなに見るなよ恥ずかしいだろう。

その後、目を逸らした<ソフト君>はまたまた瞑想に入ったのか、地面を見つめソフトを手の中でクルクルと弄び始めた。

こうなったら話しかけても無駄な様なので、日菜は黙ってセッセとソフトを舐める・・ミックス美味い。日菜が食べ終わっても<ソフト君>は瞑想中だったので、


「じゃっ。」


と言い捨ててサッサと帰った・・・。


「青春は大変だね~~。」

『日菜の青春は大変ではないのか?』

「目標値が程々だからね。」


Jリーガーなんて、本当に光っていて・才能が有って・信念の有る人しかなれない、希少な宝石の様な存在なのだろう?そんな存在にチャレンジしたいと思うだけ、十分凄い事だと思うよ?


「頑張れ~負けるな~ソフト君~~。」


夕焼の中、キコキコとチャリを漕ぎながら日菜は叫んだ。




・・・本当に、応援するのは簡単だ。


この小説は、青春中の若人の皆様を応援しております(´-ω-`)。

頑張れ~~!!

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