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日菜とリンダさん  作者: さん☆のりこ
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サッカー場って・・広すぎない?~1

熱中症に注意!!(*´Д`)

「練習試合の応援ですか・・・・?」







 隆志から運よく逃れて、日菜は我が心の居城<パソコン部>の教室に落ち着ついた。此処に来るとホッとする気分だ、今日も安定なボッチだからパソを使いたい放題だ。部員の皆はもう自分のパソコンを持っているから、学校に来る必要も無いのだろう。予定通りにリンダさんに教わりながら、CADの過去問を解いていた時だ。


 突然教室のドアがノックも無しに開けられた、また性懲りもなく隆志の奴が現れたのかと思って胸がドキッとした、これで案外トラウマになっているのかもしれない。暴力反対!DV・セクハラ・パワハラ駄目・絶対だ!!


 しかし現れたのは学校のヒエラルキーのトップ、サッカー部(戦士)の麗しきマネージャー(巫女)様達だった、なんだって大挙して最下層の日菜(平民)の元を訪れ、訳の解らない呪文を吐きだしたりするのか?訳がわからん。



<試合の応援に来い>・・・だと?



「応援とかは吹奏楽部とか、チアリーディングクラブがするのでは?」


 両クラブも人気が高い、いわゆるイケてるクラブだ・・どちらも全国大会(夏の高校野球の<甲子園>みたいな感じの、汗と涙の青春の舞台だ。)みたいな所へ出場経験が有ったはずだ。応援のプロがいるではないかと、日菜がそう言うと・・。


 彼らは彼らで自分達の大事な大会を控えているそうで、決勝や全国大会レベルにならないと召喚出来ないそうなのだ・・ごもっともだね。

たかだか練習試合などではサッカー部・部員の個人フアンとか、部員の家族が細々と応援に来る程度なのだと言う。しかも今回はエースの<大高源吾>様が出場しない予定なので、応援の人数も激減すると予想されるのだそうだ。


「さようですか・・・(一人増えた所で、そう変わんないのでは?)それで、私に応援しに来いと?」


 当惑・困惑・迷惑だね・・・何だってこんな連休の良き日に、パソの前を離れて暑いサッカー場まで遠征しなければならないのか。日菜の聖地はパソの前、この教室に他ならない。太陽になんかに照らされたら溶けてしまうに違いないよ!


 いまいち乗り気でない日菜を見て、敏腕で美人マネージャーさんは逃げようも無いカードを切って来た、即ち今朝の校門前の騒ぎについてである。

危ない所を救ってくれたのはサッカー部の面々に違いない、もし暴力沙汰にでもなって問題にでもされたら、大会出場停止の憂き目に合う危ない橋を渡るリスクを冒したのだ。そんな危険も顧みず日菜を救ってくれた(正確に言うと、生活指導の先生が来るまでの時間稼ぎだが。)彼らには大きな恩が有るはずだ、応援ぐらいで返せるのなら安いモノだろうと。

美人が揃って壁を作り、腕を組んで睨み付けて来るのはなかなかに迫力がある、隆志の馬鹿には無い<その後の、平和で安穏とした学園生活に支障が出る様な>圧力を感じた。




 返す言葉も御座いません・・・申し訳ありません、大変助かりました・・とひたすら謝りまくる。

しかし・・自慢じゃ無いがサッカーのルールなんかは知らないし、あんなに走り回っていたら疲れるんじゃないの位の感想しか持っていない人間だ。応援する女子は他にもいるだろうに、何故日菜まで駆り出されなければならないのだぃ?




「あなた、選手の好調・不調が見えるんでしょ?こんな便利なものを使わない手はないでしょうよ?」



・・・・・・・・・・・・・・へっ・・・・・・・・?



 今時高校サッカーも情報戦で、どんな些細な事でも情報を集めて利用するのが当たり前なんだそうだ。相手選手の性格やその日のコンディションが解れば、作戦を考える上で大きな力になるらしい。


「選手の体調は兎も角、性格なんて分かると思えませんが・・・・。」

「あら、オ~ラの色で相手の性格とか解るんでしょう?検索したらそんな記事が出ていたわよ?」


『そうなんかぃ?知らなかったよ・・自分の深い銀色のオ~ラってどんな性格なんだろう。』


 何でもエース<大高源吾>様が不在な今、藁でも猫の手でも借りて、何でも良さそうな事は試したいのだと言う。予選を勝ち抜かねば県の大会や関東の大会?その先の全国大会など夢のまた夢になってしまう。<大高源吾>様の全国制覇の夢をかなえる為には、チーム全員が一丸となって勝ち抜いていく事が大切なのだそうだ。

その為の今回の練習試合だ・・相手は昨年の決勝で戦った高校で、惜しくも敗れてしまった因縁のライバル校なのだと言う。今年も順当に行けば決勝でぶち当たる可能性が高いそうだ、今のうちに相手を研究をして作戦を考えておくべきなのだそうだが・・・それって・・相手高校も同じことを考えるんじゃぁないのぉ?


『何だか、巫女様達には<大高源吾>様の事しか見えていない様だなぁ、他にも夢の為に頑張っている人が沢山いるのに。その他大勢扱いでは、何だか可哀想だよ。』


 日菜は自分がモブポジなので、モブの扱いに関しては心が敏感になっている。エースの存在は大きいだろうが、いなくなったらどうするんだろう?卒業してしまったらチームがガタガタになってしまったら元も子も無いだろうに。

マネージャーさん達はあんなに美人さんなんだから、おだてて励まして、ヨイショしまくればチョロイ男子部員何て張り切って頑張るのに違いないのに。

巫女様なら分け隔てなく、皆に微笑まなくてはいけないのだろうが、勝利の女神は強く有能なものしか愛せないらしい。その他大勢のモブである日菜は、モブ部員たちに憐憫の情を覚えた。


「分かりました、お役に立つ自信は無いのですが、猫の手ぐらいに考えて下さるのなら、喜んで協力させて頂きます。」


騒がせたお詫びだ、明日の試合を応援に行きますよ・・・ところで、場所はどこですか?日菜はサッカーに関してはド素人だ、幸いにして練習試合の場所は学校のサッカー場だった。知らない場所まで遠征しないで良かったよ・・・。



    ******



「ちょっと、何これ?邪魔なんだけど。」

「それ?自作の経口補水液、ネットで検索して作ったの。この頃異常気象で暑いでしょ、教室にクーラーは無いしパソの排熱で暑くて大変なんだよ。購買部は休みだし、買うと高いから自作しました。冷凍して置けば長持ちするからね、学校に持って行こうと思って、お母さんもいる?」

「いらないわよ、空のペットボトルなんて気持ちが悪い。」

「ちゃんと洗って有るからね、問題ないね。」


文句を言いつつも、母は冷凍庫を占領するペットボトル・・・8個を排除しなかった。元々そんなに冷凍食品は入っていなかったからね。



 そう、日菜は<サッカーの応援>に向かうに当たって、<サッカー観戦の準備>を検索してみた。これがなかなか物入りなのだ、まずは暑さ対策・・このところの異常気象で熱中症が増えているではないか、準備しておくに越したことは無い。


 「え~とぉ?ゴミ袋?はぁ?何でゴミ袋?」


持って行った鞄や荷物を入れるほか、雨が降った時にも役に立つ・・・か、試合が終わった後にサポーターの人達がゴミ拾いをするのは、こうやってゴミ袋を持参している事も大きいのかも知れないなぁ・・まあ良い事だけどさ。

レインコート・・これは要らないか、明日は快晴の天気予報だし。

レジャーシート・小銭・・・S字フック?何だそれ。

エアークッション・・これは無いから行きに百均に寄って買おう。

飲み物、ウエットテッシュ・日焼け止め・帽子・・婆臭いが日傘も必要な様だ。母は売るほど日傘を持っているので一つ拝借しよう、古いモノなら貸してくれるだろう。後は凍らせたお茶とタオルマフラー?何だそれ、長いタオルか?これも百均だね。


思わぬ出費に額に皺が寄るが、熱中症になって騒ぎを起こすよりマシだ。

日菜は準備万端に明日の<試合の応援>に備えた。

リンダさんは家族のパソでサッカーのルールを検索していた。



・・・で、一夜明けて学校(サッカー場)への移動である。

学校で良かったよ・・・それでも異常に良い天候が続くGWで、自転車で移動すれば大変に暑苦しい。ヒーヒーハーハー自転車を漕いでいたら、またまた自分の周囲に清浄な・・多分避暑地の高原の空気はこんな感じなのだろう・・に包まれた。


「リンダさん・・有難う・・・助かるよぉ。」

『其方はなぜあの金属の箱を使わないのか?』

「車の事?車の免許は18歳にならないと取れないんだよ、日菜は5月生まれだから来年には免許を取るつもりだけれどね。バイクはもう取れるけど、反対されたから取っていない・・お金も無かったしね。バイクの免許も取ろう・・・車なんかきっと買えないし、バイクの方が手に入りやすいから。ハーハー・・・・人力は疲れる。」


 ようやっと着いた・・・と思ったらサッカー部の面々は既に到着して要る様だ。

ううう~~~奴らは基礎体力が凄いから、こんな暑さなんかへのカッパなのだろう。日菜はサッカー場・・よく見たらただのグランドの様で、TVで見るJリーグのスタジアムとは随分と違っていた、芝生では無くてただの土?だし、転んだりしたら痛そうだ・・を眺めた。


 日菜は母校の陣地?みたいなところに自転車を引きつつ移動を始める。

サッカー場の周囲には、屋根やイスも有るベンチ?の様な所もあるが、そう言う良い場所は部員やマネージャーさん達が陣取っている。さらに木陰にはサッカー部のフアンの女生徒たちが固まり、派閥でも有るのか牽制し合っていてとても割り込めそうにもない。他の場所はまさしくピーカン状態なので、日傘やその他の猛暑よけグッズを持って来て良かったと心の底から思った。


 サッカー部員は慣れたもので、この暑さの中でも元気いっぱいに無駄に走り回っている。これから試合で走るんじゃないのかい?疲れないのかこいつらは。

回遊魚なのか?マグロなのか?止まると死んじゃうのか???


 日菜はグランドから少し離れた場所に自転車を止めスタンドを立てると、ハンドル部分に日傘の柄をガムテープで固定し始めた、日傘も自力で差していると疲れるからだ。それが済んだら地面にレジャーシートを引いてエアークッションを取り出して、おもむろに空気を入れ出す。


フゥーーフゥーーフゥーー。


肺活量が乏しいのか、空気を入れ終ったら軽く眩暈を覚えた。

熱中症か?危ない危ない・・・保冷剤を保冷バックから取り出し、手拭いに包んで首筋に撒いて冷やす。


はあぁぁ~~~~冷っコイ、生き返る~~~。


どれどれ自作の経口補水液のお味は如何かね、またほとんど凍っているブツを保冷箱(父さんの釣り道具・少し魚臭い)から取り出して一口飲む。

美味い!喉がカラカラだからね、多少アレだろうが十分に美味しい。




「不思議ちゃん、御寛ぎな所悪いけどこっちに来てくれるかしら?」


ふと見ると、サッカー部の面々やマネージャーさん達が日菜を眺めていた・・・いつから見ていたのかな・・・恥ずかしいじゃないか。


「今日の相手は永遠のライバル校で<大高源吾>様がいても手ごわい相手なのだけど・・どう思う?相手を見て何か感じるところはない?」

「はぁ・・・。」


日菜は尤もらしく、両手の親指と人差し指をL字形にしてくっつけ<窓>を作って覗き込む・・ほらユトリは形から入るからさぁ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


「う~ん、10番の人と18番の人は、わりと強い赤いオ~ラを持っています・・・行動力が強くてリーダーシップが有りますが・・反面、感情的でトラブルを起こしやすい人でしょう。」


 日菜は昨晩オ~ラの色について検索し、それらしいことを覚えて来たのだ・・・異論が有るなら<神秘の扉・あなたも自分のオ~ラを知って豊かな人生をおくりましょう>の人に言ってほしい。


「焦りが出てくると、二人の間に悪感情が起き・・連携が乱れがちになりやすいと思います。2人とも押す事は知っていても引く事は無いですから。11番の人がチームのバランスを取っているキーマンでしょ言うか?強い緑の光が見えます。」

「その通りよ・・・流石ね不思議ちゃん、よく解ったわね。」


なんだい、もう知ってるんじゃんか、日菜が来る必要は無かったね。

そう思っていたのは日菜だけで、部員たちは更に信頼の目で見て来ていたのだが、テンパっている日菜はそんな事は気が付かなかった。


「こっちの部員はどう?」

「皆さんですか?」


じろじろじろじろじろ・・・と視姦する・・・ガタイの大きな男が急に乙女の様にモジモジし出すのが面白いね。


「全体的に青色系統の人が多いですね・・攻撃より防御型なのかな?特に青が強いのはこの人と・・・。」

何人か指さして示す。スター選手を中心にチームを組んでいたのなら、防御に力を入れるものなのだろうか?


「攻撃型・・赤色の者はいないの?」

「う~~ん。このメンバーの中で赤系が強いのは・・この人。」


 悩めるサッカー少年、ソフトクリームを一口で食べきる・・命名<ソフト君>を指さした。彼の胸には依然として殻が有り、光を押し込めようとしていたが、殻には既に沢山ひび割れが入っていて壊れるのも時間の問題に見えた。赤をアシストするのは青と書いて有ってから、この布陣で大丈夫かな?


「まとまりを必要とするなら、バランスを取る緑・・・人の良さを引き出す黒・・・人と人を繋ぐ茶色・・・常に客観的な緋色・・・の人かな?」


付け焼刃にしては尤もらしく話せたね、この分ならバイトで占い師が出来そうだ。


 監督やコーチ、部員やマネジャーが集まってコソコソと討論をしている。

誰を出すか話し合いをしているようだ、それにしてもエースが不在なだけで此処まで話し合いが必要だとは・・何か違う様な気がするが、どんなもんなのだろう。


「緑色は誰?」

「・・・この人です。」


 大人しそうな・・・何だっけ?有名な何とかシンスケさんだっけ?そんな感じの雰囲気を持つ人を指さしたら、意外だったのか部員達からどよめきが起きた。なんですのぉ?

どよめられた緑君の光は、動じて揺らぐ事もなく安定している。

・・他のメンバーにとっては意外な起用な様だが、緑くん自身は意外でも無く自信も有る様だ・・まあ練習試合なんだから、色々試して見るのも良いんじゃないのぉ?(無責任な発言、言い出しっぺの癖に。)




「よし、ではこのメンバーで行こう。」


 部員たちは円陣を組むと何やら相談を始め、アップ?だったか準備運動を始めた。日菜は自転車の下の日陰にノソノソと戻り、経口保水液をクピクピと飲みながら試合が始まるのを待った・・・が。



 サッカーの試合が45分も有るなんて、しかも休憩を挟んでもう一度やるなんて知らなかった。アディショナルタイム・・なにそれ・・もう帰ろうよ~~な時間がこれから延々と続くなどとは、全く予想もしていなかったのだ。暑い・・風が無い・・氷が解け始めた・・。




 日菜の熱い<試合の応援>は、始まったばかりだった。


サッカーの試合・・・よくあんなに走り続けられるものですねぇ(´・ω・`)。

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