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日菜とリンダさん  作者: さん☆のりこ
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玉さんの秘密

設定説明が多い中(婆も面白いのかなぁ・・これって)と悩む中、ブックマークを下さった<あなた様>有難う御座います。そのうち面白く・・なるのかなぁ?(+_+)これ・・。

「暑っつ~~い!ってか・・臭!!」


 洗濯物を干し終わって、自室に戻りベットでうつらうつらしていたら本格的に眠っていたらしい。狭苦しい日菜の<DENと言う納戸>の引き戸は閉め切れられていて、凄まじく蒸し暑くなっていて熱中症になりそうな勢いだ。加えて昨晩、ベランダの隅にカッポっておいた喪服たちが部屋の中に戻されていたので匂いが籠って酷い有様だ。熱と匂いのダブル攻撃だ、死んだらどうするんだ!腹が立つ。


 日菜は思春期真っ盛りの内弁慶の反抗期乙女なので、親の仕打ちについては根に持って、思う処が多々ある。親+兄は既に仕事や大学に近い下宿に行っている様で姿が無い、呑気に寝ていた日菜に可愛い?嫌がらせをしたのだろう。


「ううう~~暑い、寝るのも一番遅かったし、洗濯もしたんだから良いだろうによ。」


 のっそりと起き上がると、梯子を伝って下に降りる。机の上の電子辞書に乗った玉を見たら、中の光が収まっていたので辞書から降ろし電源を切り、そのまま短パンのジャージのポケットに突っ込んだ。

 暑い臭いと文句垂れつつキッチンに向かうと・・・流しの中に食器がうず高く積まれていた・・・これまた匂う。水曜日の晩御飯の後に洗わずにいたらしい、ノンビリしていた所に連絡が来て、そのままお婆様のホームに駆け付け~~~現在に至る訳だ、比較的新しいのは今朝の朝食分の食器だろう。日菜は冷凍庫の中からスパを取り出し、電子レンジで温めている間に流しの食器類を片付ける事にした。


「食器をいちいち洗うのが面倒なら、紙皿にすれば良いんじゃね?エコに反するか?地球に謝れって奴だね。」


 母は食器洗いをするのは面倒がるが、何故だか食器を集めるのが趣味なようで、セットの食器など10数点が狭いキッチンに詰め込まれている、出し入れがやりにくくてたまらない。食器が変われど母の料理の腕前は変化など無いので、日菜には無駄な投資に思えるのだが、人の趣味をとやかく言ったり、勝手に品物を処分する事などは具の骨頂な様なので(ネットの知識では)黙って耐えている。こびり付いた何かに悪戦苦闘しながら、どうにか食器を洗い終えると丁度スパが出来上がった所だった。ピーピーピー。


「食事とか冷食で十分だよね、少々値段が高かろうが、作る手間を考えたら十分お値打ちだよ。」


 これまた何かがうず高く積み上げられているテーブルに、ブツを肘で寄せて隙間を作るとスパの皿を乗せる。ふとテレビの方角を見ると、液晶画面にメモが貼ってあった。買い物リストの様だ。


「牛乳・ヨーグルト・・。」こまごまとしたものが書いて有る。


 しかしお金が置いてない、どうしろと言うのか?

 お婆様からの<御祝い金>から出せとでも言うのか?


 どれも無くても大したことのない品々だ、日菜は父親のメールに買い物リストを送り、お金が無いから買えない事を書き添える。これで父親がどうにかするだろう、自分で買うか母にメールを送るか。後で母に嫌味を言われそうだが、金を置いて行かない方が悪いと思う万引きは犯罪だ。


 もそもそとペペロンチーノを食べていたら、


『変わった食べ物だな、旨いのか?』


 忘れていた、ヘンテコな玉が話しかけて来た。

 玉は日菜が与えておいた電子辞書の中身を既にクリアしたようで、次なる知的好奇心を満たす何かを求めて騒いでいる。


「あの電子辞書の中身を全部見て覚えたの?凄いじゃん。本何十冊分の内容だよ。」

『中身を読み込むだけだからな、この偉大なる魔術師のサマリンダ様に掛かれば造作も無い事よ。』


 自慢コキな玉だね、ダウンロードみたいなものなのだろうか?

しかしこんな得体の知れない玉に無暗やたらに知識を渡して良いモノなのだろうか、侵略して来た宇宙人のアイテムだったとしらヤバいんと違う?

日菜が難しい顔をして、(ペペロンチーノの鷹の爪を食べて辛かったせいも有るのだが)・・・どうしたものかと考え込んでいたら、玉の方から自己紹介を始めた。


 何でもこの不思議な玉の中身は、300年前に異世界で生きていた大魔術師の<偉大なる英知・世界の奇跡で僥倖なるサマリンダ>とか言うオッサンの<思考の残滓>とか言うモノなのだそうだ。サマリンダと言う人物の知識や能力・思考の仕方やその他諸々を覚え込んで考える<AI>の様なもので、それなりの魔力も持っていたと言う。


「何で過去形?」

『私の能力のほとんどは、哀れな羽虫に与えてしまった。』


 今を去る事300年前、まだ生きていて魔術師としてもブイブイ言わせていたサマリンダ様は、魔力が乱れ魔獣が人々を襲い、混沌とした世界を救う為に<王家>の人々に乞われて<異世界から清らかな聖女様>を召喚したのだそうだ。それは大変に難しい魔術で膨大な魔力も必要となり、サマリンダ様程の<偉大なる魔術師>が居なかったら、とてもじゃ無いが成功しない様な高難度のプロジェクトだったと言う。



 何気に自慢が多いオッサンだ、顔は見えなけどオッサンな事は間違いないと思う。



 召喚に成功し魔力の乱れも解消して、世界が平和に成ったのは良かったが・・・召喚した清らかな聖女様には随分と泣かれてしまったらしい。聖女様はお約束の様に美しい乙女で、サマリンダ様も思わず愛さずにはいられない様な、姿も心根も素晴らしい、パーフェクトな御仁だったそうだ。


『私は聖女様と約束したのだ、二度と召喚などをせずに、この世界を自分達の力で、住みやすい豊かな土地にするとな。勿論私は約束を果たすために、日夜努力して奮闘してきたのだ・・・。』

「それで?肝心の聖女様は麗しの王子様と結婚しちゃったりして?」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


 拙い事を言ってしまった様だ、人間長く生きて居れば黒歴史の1つや2つや3つは有るモノらしいから。玉はしばらく不機嫌そうに(暗い光が緩慢に明滅している。)していたが、気を取り直したようで(300年前の事だ、忘れろよ。ドンマイ!)話を続け出した。


『私は聖女様とのお約束はすべて実行する覚悟だった、召喚の魔術陣は固く封印して神殿の地下の結界深く沈めたし、念の為にと自分自身の<残存思念>までも魔術陣に残しておいたのだ。封印した魔術陣が再び使われそうになった時に、その発動を妨害する為にな。』

「それで?」

『何百年も封印されていたからな、目覚めるのに時間が掛かってしまった様だ。』



『気が付いた時には既に召喚の術は発動していて、魔術陣は光輝き・・・聖なる乙女は頭の先と伸ばした手だけが見えているばかりで、魔術陣である私の空間に飲み込まれて行く最中だったのだ。』

「駄目じゃん!」

『しかも拙い事に、聖女の手の先には奴隷の小娘が囚われていたのだ。』

「それって・・もしかして孫娘ちゃん?!彼女も異世界に召喚されてしまったの?巻き添え召喚って奴?酷いよ、この世界に奴隷なんかいないんだよ!彼女はどうなったの!」


 同じモブ顔として、他人事とは思えない。あの子の家族は皆仲良しだった、今だって心配して断腸の思いで暮らしているに違いないのだ。あの子のお婆さんはあれから食も細り、何を食べても味がしないと言っていた・・・これは凄いストレスの現れだろう?


『あの者は、魔力も無く平民にも劣る能力だった。あのままあの世界に飛ばされては、まともな暮らしも出来ないだろうと危惧した私は・・・咄嗟に彼女に賦与したのだ。』

「ふよ?」

『賦与・・・配り与えること・分け与えられること<天才魔術師から 賦与 された魔力>など。』


国語辞典的説明を有難う御座います、ダウンロードした甲斐が有ったね。


「貴方の能力を賦与されたとして、それをあの子が使いこなせるの?」

『それは何とも言えぬ、膨大な能力を羽虫な様な者が使い熟す為にはかなりの時が必要だろう。急激な変化は体調に良くないからな。魔力の操作はイメージによるところが大きい、魔力の無い世界から連れ去られた者が何処まで出来るか判らぬ。』

「そんなぁ~。」

『願いを具体的に思い込めるような、何か依り代みたいな物が有れば良いのだが・・あぁ、あの羽虫は力も無いクズ石を身に着けていたな。』

「パワーストーンか・・確かあの子は石が好きだったっけ、石自体に願う事柄が決められているし、これは使いやすいかもしれない。」


あぁ・・・それにイメージの方は多分大丈夫だと思う、あの子もアニメヲタクだったし、魔術のアクションシーンは見慣れているだろう。錬金術師の兄弟の話が大好きだったから、DBも見ているし何とかなると思う・・けど・・なぁ?


『しかし・・あれだけ厳重に封印して、難しいフェイクを沢山重ね掛けしたのに。中々の魔術師が誕生したようだな、この私の魔法陣を起動するなど大したものだ。まぁ、この私には数段劣るがな。』

「とにかく玉さんは、その時に出来るだけの事はしてくれたんだね、彼女の生存できる確率は上がっているんだよね!」

『私の能力を疑うのか?その辺の魔術師が、束になって襲って来ても、大丈夫な位の能力は賦与してある。』

「そう・・良かった。彼女が生きている事をお婆さんや家族の皆さんに伝えられないかなぁ、ほら夢の中で元気にしている姿を見せるとかさぁ。」

『見慣れぬ異世界人の顔の再現は難しい、あの羽虫の姿を見たのは、魔術陣に吸い込まれる直前の<怖い怖い>と泣き叫んでいるところだけだからな。その姿なら再現できると思うが、見たがるか?家族は。』

「無理、駄目!却下。」


なんだそれ、お偉い魔術師の癖に使えなぃ~~~。


『それから、私の名は玉では無い。偉大なる・・・』

「サマリンダ様でしょ、長いよね名前が・・サマ様とリンダさん・・どちらが良い?隠し名って奴だよ、本名が広まったら困るでしょ?貴方の存在は秘密にしておいた方が良いと思うよ、解析されて異世界と行き来が出来る様になったら(とても無理だと思うけど)お互い困ると思うよ?兄の秘蔵の<世界の最先端の兵器>とか言うDVD見てみる?魔獣も真っ青な攻撃力だよ、舐めちゃいけないUSアーミィ。




 さてと、日菜は駅前にクリーニングする喪服を持って行かねばならない、暇な玉に付き合っている暇はないのだ。


 玉さんは自ら<リンダさん>と名乗ることを希望した。

 それからリンダさんが言う事には、あの時<孫娘ちゃん>にほとんどの能力を賦与した為、現在は大した力も無く玉に込められている魔力が枯渇すれば<リンダさん>としての意識も消え、只の<空の魔石>ビー玉になり果てると言う事だ。自分は安全・人畜無害な存在だと言いたいらしい。


『せっかく異世界に来たのだ、知らない知識は覚えたいし、珍しい物も見たいのだ。協力してくれないか、多分そう長い時間では無いはずだ。』


 泣き落としかぃ?仕方ないね。

 自分の望む所に生きる事は、案外難しいものだと思うし・・・?

 取り敢えず、家族の共同パソコンを起動して検索の仕方を教えた。なにやら玉から光る腕?触手?をミヨ~~ンと伸ばしてキーボードを打っているので、困ることは無いだろう。




 日菜はリンダさんをそのままに、クリーニング店に喪服を届けるミッションを完遂する為に自宅を後にした。自転車置き場に向かい、ママチャリの後ろのカゴに洗濯物をギュウギュウと押し込む、前カゴに入れて走ると匂いがモロに顔に掛かって嫌だからだ。広い国道を駅に向かってチャリを漕ぐ、車はトラック中心に多いが人通りは少ない。


 肩掛け鞄の中には、お婆様から頂いた現金の入った封筒と、以前お婆様が勧めてくれて作っておいた銀行の通帳が入っている。家にお金を置いておくなんて、落ち着かないから嫌だったのだ。高校生には分不相応な金額なのだろう、きっと・・・<将来の為に使いなさい>かぁ~~。


 日菜はこれといって将来やりたい事等無いのだが。


 お婆様は、手に職をつけて自分の口は自分で養えるようにしなさいと言っていたが・・・資格職なら食いっぱぐれは無いのだろうが・・・日菜は、血や人が苦しんでいるのを見るのが苦手なので、看護師さんとかは無理そうだ。子供はこれまた苦手なので、保育士さんなんかも御免だし、接客業も無理だよなぁ・・どうしよう。

もう高校2年生・・真剣に進路を考える時期が迫って来ている様だ。


 銀行のATMにお金を放り込むと、何故だか銀行員の綺麗なお姉さんが慌てて寄って来た、日菜が子供なのに多額の現金を持って来たので心配したようだ。

訳を話したら、結婚資金に定額貯金にしないかと誘われたが、進学に使う予定だからと断っておいた。



詩乃さんの力の秘密が・・・他力本願はその通りだったね。(*´з`)。

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