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日菜とリンダさん  作者: さん☆のりこ
22/35

夏休みの逃走~1

出かける時には、お家の人に一言断って出かけましょう(^^)/

「ひや~~高い~~~!」


 流石はスカイツリーだね、日本一高い場所だから・・下を見ると下っ腹がヒュンヒュンする感じだ。展望台に登るのにも結構なお値段が掛かったりするのだが、リンダさんがトキョの展望を見たいと我儘を言うし、このところ面白くも無い時間が多かったのでパアァ~~と楽しい事でもしたい気分だったのだ。

今回の夏休みの間は地元には帰らず、此処東京で実習と言う名の低賃金で働く予定なのだ、最初ぐらいは楽しんでも罰は当たらないと思っての事だった。


『なんだ・・この雑然とした都市計画は・・・』


 トキョの街並みを眺めてリンダさんが唖然・呆然・愕然としている・・失礼な奴だな。こんな混沌?とした街並みでありながらも、清潔に保たれ秩序良く運営されている所が凄いのではないか!解っちゃいないねこの異世界人様は。


『破壊と再生を繰り返して来た国だからね・・地震とかのメガトン級の自然災害を何度も繰り返しながらも乗り越え、より一層の繁栄を成し遂げて来た事がウリみたいな国だからね。リンダさんの国には地震は無いの?津波や台風・火山の噴火は?・・それに温泉は無いの?』

『ニュスで見たような地震は体験した事は無かったな・・火山は島の北西部に有った様だが噴火をした事は無い、それに温泉と言うのは聞いたことが無い。体や衣服を清潔に保ちたいのなら清浄の魔術があるから必要性を感じないし、魔力の無い平民は濡らした布で体を拭くぐらいだろうか・・ゆっくり風呂に浸かる余裕などは無かった様に思う』


リンダさんの生きていた時代は魔獣が暴れていて、人類の存続の危機だった様だからゆっくりお風呂を楽しむことなど出来なかったと言う・・・うううう・・・異世界に飛ばされた孫娘ちゃんは今頃どうなっているのだろう。

お風呂や温泉を楽しめる境遇なのだろうか、お風呂無しは日本人としては辛いよね。困っているから召喚なんて人攫いの様な真似事をしたのだろうし、魔獣とか言うプレ〇ダーみたいのが暴れている世界なのだろうか?・・ほんと心配だよ。




 しかしまぁ・・こうして眺めてみると本当に建物が多い。

良く此処まで詰め込んだなと感心してしまうぐらいにビルや家が建っている、日菜の地元では高層マンションなんかない、土地に余裕が有るからワザワザ高層にする理由が無いのだろう、高くて大きな建物は役所関係とか結婚式場を兼ねているホテルぐらいのものかなぁ?


こんなに沢山の人がいるのだから、日菜の所みたいなアレな家庭も有るかな?


・・見も知らぬ、居るか居ないかも判らぬ<誰かさん>にエールを贈ってみる・・頑張ろうねお互い、私も頑張ってるよ・・<誰かさん>も頑張って!


この視界一杯に広がる街並みで、人達が抱える幸と不幸の割合を比べたら、いったいどんな比率になるのだろうか。五分五分か?三・七で不幸の方が多いのか?

まぁ余所の国の紛争地に暮らす人達からしたら、9割方幸せに暮らしている事になるのだろうこの国は。見ろ・・蟻の様だ・・に見える人達や車の動きを見ていると、益体も無い事を考えてしまうものの様だ。





 東京に出て来る前に日菜はそれなりに準備をしておいた。


 家族の溜まった洗濯物はアイロンまで掛けて片付けてきたし、食器も洗って台所も整頓しておいた。それから目立つようにTVの画面に書置きを貼り付けて来たのだ。

挿絵(By みてみん)

日菜の事が心配なら家族の方から電話なりメールなり寄越してくるだろうさ、このミッションは断じて家出では無い、あくまでも就職の為の実習なのである。

あの兄も再就職?の為にコッチ(東京)に来ている様だが、あいつは家と東京を行ったり来たりしている様なので留守の対策も万全にして来た。教科書や制服など破損されて困る物は学校のロッカーに突っ込んだし、大事な物(お婆様に買って貰った着ぐるみ付きの熊の縫いぐるみ・・例の通帳を隠しておいたブツだ)や僅かな私服は段ボールに詰めてパソコンクラブの部室に<沢口私物・夏休み明けに引き取りに来ます>と書いて置いておいた。大事な物がミカンが入っていた段ボールひと箱に収まってしまう所が何とも物悲しいが、引っ越しが楽だと思えば良いのだろうよ。ちなみに学校まで荷物を運んだ自転車も学校の駐輪場に置きっぱだ、変に心配されると面倒なので自転車にも<夏休み中ずっと置いておきます、ご自由にお使い下さい 3B沢口>とメモを貼り付けて置いておいた、まぁ隅っこに置いておいたので気が付く人もいないだろう。

今まで洗濯や掃除・食器などを片付けていた日菜がいないので家族は多少の不便をするだろうが、来春からは晴れて独立し本格的にいなくなるのだ、家族の面々も今のうちに日菜の不在に慣れておくと良いと思うぞ。



 リンダさんはツリーの構造にえらく関心を示して長い事見学していた、近くの水族館にも行ったがそっちは『ほう・・』と言っただけでそれほど関心を示さなかった。珍妙な生き物は異世界の方が多いらしい、魔力も無く襲って来ない生き物など大した物でもはないらしい・・何気に悔しいから今度は動物園にご案内しようかな・・ライオンや虎・象を見たら少しは驚くかな?ライオンは炎を吐き出したりはしないけどさ。


 その後行った江戸時代の博物館は気に入った様で(時代劇に凝っていたし)喜んで見ていた、リンダさんの所は石の建物・文化だったようで、此方の木の文化が珍しいと言う事だ。異世界の平民の暮らしぶりは江戸時代の庶民に通じるモノが有るらしい、動力が馬と言う時点でさもありなんという感じだ。

『へぇ~~~。』

と言ったらプライドが傷ついた様で、我々には魔力が有るし騎乗動物の種類も多いし空だってドラゴンに乗れば飛べるのだ!!とか騒いでいた・・別に張り合っている訳でも無いのに困ったリンダさんである。

そんなリンダさんでもで戦時中の展示には驚いた様で、魔術に頼らない兵器の開発か・・とか、うんたらかんたら言っていたが・・そんなにいいモノでも無いと思うよ?異世界には爆弾とかないのかな?

食事はリンダさんは食べられないし感心も無い様なので素早く牛丼を食べた、何処でも何時でも同じ味・安心のクオリティー、これが有る限り食事関係でホームシックになる事はなさそうだ。



 そんな風に時間を潰して先輩のマンションに向かった、夏休みの間お邪魔させて貰う約束をして有るのだ、持つべきものは良い先輩である。

先輩は派遣さんなので、会社は5時ピッタリに仕事が終わるそうだ。終わると言うか・・終わらせないといけないそうで、それの時間の配分が難しいらしい。仕事が少なめの日はゆっくりと、多い日には3倍速で仕事をこなして定時に上がれる様にするのが派遣さんの掟らしい・・そんなモノなのか?仕事って?


 5時半にはマンションに帰るとの事なので、駅前で牛丼をテイクアウトしてお土産&夕食代わりにする。日菜は隠れ肉食系女子(食べ物の事だ、異性関係では無い)なので一日3食牛丼でもOKだ・・美味しいよね牛丼。つゆだくに半熟卵で七味を少々がお気に入りの食べ方だ。


『え~と、確かあの看板は覚えが有るぞ、たぶんこっちで良いはず。』

『違う、もう1本先の道路を左に曲がるのだ。其方一度来た道を間違えるのか?こんなに目印が沢山ある道を?器用なものだな』


リンダさんの世界にはこんなに看板や店、ネオンなど無かった様で道を覚えるのは大変だったらしい。


『ここは色が溢れていて目に厳しい世界だな、物が多過ぎるし、時間が忙しなく流れるようで頭の中がチカチカする感じだ。』


 それは密かに日菜も感じていた、特にターミナル駅の混雑は凄まじい・・祭りでもあるまいに、何処からこんなに人が集まって来るのか・・田舎からだよ・・って自分だよ!

1人突っ込みをしながら先輩のマンションに急ぐ、何だか早く先輩に、知っている人に会ってホッとしたい・・この大きな都会で、一人元気に頑張っている故郷の英雄に会って安心したい気分なのだ。


『先輩は優秀な人だったから、きっとカッコいいOLさんに成っているに違いないよ。都会に馴染んでスマートに垢ぬけた感じ?みたいになってるはず・・・』




 5時25分に無事マンションにたどり着けた、日菜は牛丼が冷めないうちに先輩が帰ってくればいいなぁ~等と考えながらノンビリと不審者に見えない様に気を付けて立っていたが。


「ごめんね、待った?日菜ちゃん」


 半年弱ぶりに会った、都会に馴染んで颯爽とカッコよく現れるハズの先輩は・・目の下に隈を造って、えらく疲れた感じで再登場したのだった。


1人暮らしは厳しいのよ・・・(+_+)

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