お母さんと電話しよう
「…もしもし?…うん、私だけど…。……うん、…えへへ、そうかなぁ?お母さんに比べれば私なんてまだまだひよっこだよ。
身長だって低いし、声もお母さんみたいに落ち着いてない…あれ、お母さんの声ってどんなだっけ?…電話してるのにとか言わないでよ、はっきりしたの思い出せないんだってば……もう!笑わないで!お母さんなんて嫌い!!……うそうそ。お母さん大好き、だーいすき。…ふふ、別に?別に、こんな事滅多に言えないから今の内に言っておこうなんて、そんなんじゃないし?……ふふっ、お母さん、なんでもかんでも信じ過ぎ。ごめんって、つい、からかいたくなっちゃって…あぁ!その声信じて無いよね!酷いや…私お母さんの娘なのに…
…………んぇ?楓叶?いつの話してるのさ、全く…それは中学の時の話!今は違うでしょ…って、私お母さんに言ってないから知らないのも仕方ないか…うん、そう、今は違う人。……誑かしたとか、そんなんじゃないからね?ちゃんと合意の上でのお付き合いですぅ~…多分
まぁ、そのうち挨拶行くと思うからさ、首長くして待っててよ。いつになるか分からないけどさ………ん、ん、うん、たーくさん愛してくれてるよ。立場上、会えないのは寂しいけどきっと向こうは元気で毎日やってるから……いや、電話してる訳じゃないよ?ただ、そうだろうなぁって
今の仕事?…正義の味方?…保育士じゃないよ。子供好きだけど、親が苦手。怖いもん…
私が正義の味方だったら向こうは…なんだろうなぁ、んー…悪の味方?…ふふふ、対立してるさ、禁断の恋って感じしない?……お母さん、禁断の恋って言葉に弱いよね、そんなに食い付いてこないでよ…」
「水雫さーん!行きますよ!!」
遠くから、友達が私に向かって声を投げる
「呼ばれちゃった…またお話しようね、『お母さん』」
携帯の電源は切られているようで、液晶はペンキをぶちまけたように真っ暗だった