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その冒険者、取り扱い注意。 ~正体は無敵の下僕たちを統べる異世界最強の魔導王~  作者: Sin Guilty
第四章 その冒険者、世界を変えた者。

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第76話 寛容と厳格

 辺境に領土を持つ小国たち。


 元々豊かではない土地ゆえに他国の侵略の対象とはされず、それゆえに三大強国いずれの庇護下にも入る必要もなかった、本当の意味での独立国家。


 だからこそ己の国に誇りを持ち、貧しいながらも王と貴族、国民が力を合わせ、独立独歩でその暮らしを守ってきた。

 ある意味においては、国家というものの存在理由を正しく体現しているともいえる国々。


 名を捨てて取る実よりも、名をこそ惜しむ矜持を持った、古き良き国の姿と言えるのかもしれない。

 

 『世界会議コンルクウィム・オヴィテラルム』に参加することを拒否した六国の内、そんな国は四国存在する。


 そして似たような状況なれど、まったく違う意味で『世界会議』に参加することを拒んだ国が残りの二国。


 この二国は他の四国と似たような国力だが、その在り方が根本から違う。


 その貧しい国が生み出すすべての富を王という名の独裁者に集中させ、国民はそのためだけに存在するという考え方の独裁搾取国家。


 痩せた土地ゆえに他国からの侵略はない。

 もちろん自分から他国を侵略するような武力を整える術もない。


 だが他国との交流もほとんどなく、冒険者ギルドの支部もないがないゆえにこそ、自国内では好き勝手にすることが可能。


 他国からの侵略や、万が一起こり得る魔物(モンスター)の侵攻。

 その二国の軍隊は、それ等から国民を守るために存在するのではない。


 自らの国民を監視し、必要とあれば()()()()を行い、ごく一部の特権階級たちだけが豊かな暮らしを享受するための()()として存在している。


 もっともこれはこの時代のどの国家も本質的には変わりない。

 王や皇帝、それを取り巻く貴族たち特権階級が豊かに暮らすために、市井の者たちが搾取されているという根本は同じ。


 だが程度の問題だ。


 国民を豊かにすることなく、王たちだけが奢侈(しゃし)(ふけ)る、国家とは名ばかりのこの二国も他国からの介入を嫌って『世界会議』への参加を拒否している。


 国民も含めてみなでより豊かになることよりも、今の好き勝手ができる在り方を優先せんとする愚者が君臨する不幸な国。


 そしてどの国にも余裕などないこの時代、他国の国民の暮らしまで気に掛ける御人好しなどいはしない。話に聞けば同情はするが、どうすることもできない他人事なのだ。

 

 それらを合わせて、『世界会議』への不参加国は六国。


 この『世界会議』への参加を拒否した国の王たち六人、その蒼褪めた表情の映像が会議室中央上部の「表示枠」に映しだされている。


 ポルッカの発した言葉に対して、一斉に話し始めた王たちの声が六重につらなり、当然何を言っているか聞き取ることができない。


 それを見て苦笑いしたヒイロが、背後に立つ白姫を肩越しに一瞥する。

 それと同時に白姫の特徴的なアホ毛が動き、六枚の表示枠のうち一つをさす。


 その瞬間、白姫のアホ毛にさされていない他の表示枠は動画の一時停止のごとく静止し、白黒の画像と化した。


 この場にいるもうすでに「表示枠」になれている者たちはみな、六つの「表示枠」のうち一つだけを動作中(アクティブ)とし、他の五つは一時的に中継を切ったと思っている。


 議長であるポルッカは優秀とはいえあくまでもただのヒト。

 六体に分身できるわけでもなければ、脳と耳と口を六つ備えているわけもないからには仕方のない仕儀だと。


 これが通常の参加国であれば「どの国から話をきくか」という序列が問題になるのだが、参加を拒んだ国であるからにはそう気にすることでもない。


 だがごく一部を除いて、本当に他の五つの「表示枠」が示す王たちの空間が部分的に静止させられていることなどわかりはしない。


 本来はこんな使い方をするものでも、していいものでもない『白姫』の独自能力(ユニーク・スキル)である『静止する世界』だが、ヒイロは便利だなあこれ、くらいにしか認識していない。

 当の白姫も『十三愚人』にあっさりと破られた『静止する世界』をすでに過信しておらず、(ヒイロ)が便利に使ってくれるのならまだ価値もあるか、程度の認識である。


 運営の威光も地に落ちたものであるが、それを知る者もほとんどいないのでまあ問題はないだろう。


『ポルッカ殿、これはいったい……』


 白姫のアホ毛に最初にさされた辺境国家、リチェル・マトーヤ王国の国王、ロータラスクムⅢ世が、動揺を抑えきれない声で問うてくる。


 参加を拒否した国の首長へは、強制的に「表示枠」によって『世界会議』の様子を一方的に中継していたのだ。


 それは王がどこに居ようと関係ない。

 必ず目の前に現れ、音と映像を表示する。


 よってロータラスクムⅢ世はポルッカが議長であることも理解しているし、会議で何を語られたかもすべて聞かされている。


「先程からここでの『世界会議』の様子はそちらにすべて中継されていたはずです。その上で参加を拒否した貴国の――」


『我が国は――滅ぼされるのか? ()()()()として』


 そしてそれゆえに、それを説明しようとしたポルッカの言葉に被せるようにして、震える声で確認する。


 『世界会議』への参加の拒否を敵対意志と見做し、宣言の通りに「世界の敵」として滅ぼされる。


 たしかに一方的に参加を拒否した立場ではあれど、せめて弁解の機会くらいは与えてもらえぬものか。


 先のポルッカの提案であれば、参加を拒否するどころか願ってもないことなのだ。

 それを王たる自分の先見の明がないばかりに()()にするばかりか、世界の敵として滅ぼされるとなっては坐して死ぬのを待つわけにはいかない。


 己は愚かであっても王として、己の国の民に対して果たさねばならない責任がある。

 みっともなかろうが情けなかろうが、なんとか自分の首だけで落とし前とできないかと覚悟を決めている。


 自分がどこに居ようとも「表示枠」が現れ、双方向の中継を可能とするような隔絶した力。

 ロータラスクムⅢ世にはこの力が逸失技術(ロスト・テクノロジー)なのか魔法なのかすら区別がつかない。


 ただひとつはっきりわかっていることは、ここまでの力を当たり前のように使いこなす相手に敵と見做されれば、リチェル・マトーヤ王国は一日と持たず滅ぼされるいう事実だけだ。


 それだけはなんとしても避けねばならない。

 たとえ土下座し、王冠を地に擦りつけてもだ。


 たとえ王が死んでも国は滅びないが、民が死ねば王に意味も価値もない。


「いえ? 会議への参加を拒否されたくらいでそんなことは致しませんよ。ただ我々の在り方を聞いていただいた上で、貴国の在り方を決めていただく必要が――」


『リチェル・マトーヤ王国は正式に世界連盟への加入の許可を求めます。――たとえ末席とてまるで厭いませぬ』


 苦笑い気味で答えるポルッカに、再びかぶせるようにロータラスクムⅢ世が告げる。


 仮にも王たるものが、議長とはいえ一子爵にとる態度ではない。

 だがそんなことを言っている場合でもない。


 それで済むなら、済ませてくれるのならばこれ以上望むべくもない結論なのだ。


 王たる権限として、即断で回答する。

 議会だなんだと悠長なことは言っていられない。


 それは王の側に侍る者たちとて充分以上に理解しているはず。

 もしも出来ていない者がいたのなら、その人間はこの後必ず罷免する。


 その答えに対して、ポルッカはもったいぶることも、他の参加各国に文句を言わせることもなく即時承認。

 明日以降も続く実務面での打ち合わせに参加するよう要請し、ロータラスクムⅢ世の「表示枠」を終了する。


 それはロータラスクムⅢ世以外の、他の三国も似たような展開となった。


 『世界連盟(仮称)』の成立をもって各国が受ける恩恵に対して、今はまだなんの貢献もしていない他国が要らぬ介入をすることもない。

 

 実際それどころではないのだ。


 自国に存在する魔物(モンスター)領域、その奥に在る迷宮(ダンジョン)を攻略することに年単位で全力を挙げる必要があり、そこからもたらされる莫大な利益が約束されている以上、他国の足を引っ張るような真似をして絶対者に悪い印象を与えている場合ではない。


 あと残るは二国。


 白姫のアホ毛が、今や二枚しか残っていない『表示枠』の一方をさす。


 その瞬間、肥え太った王とは名ばかりの独裁者の声が会議室へ響く。


『ポルッカとやら! 貴様つい先日まで冒険者ギルドの受付風情だったものが、王たる余と余の聖なる国に向かってその様な物言い――』


 「表示枠」にも映るくらいに唾を飛ばし、一方的にわめきたてる。


 それを見た会議参加者たちは、そんなテンションのままよくも五番目まで我慢していたなと違和を感じるが、喚いている独裁者にとってみれば自分が最初に発言しているという認識だ。


 もちろんそういう状況に置かれた時点で、自分の生殺与奪を握られているということに思い至ってなどいない。

 もしもそうなら、このような口のきき方をするはずもない。

 

 まあ仮にも一国の王である自分を、何の交渉もないまま切り捨てるはずはない、という驕りはあったのだろうが。


 喚き続ける独裁者に困った表情を浮かべるポルッカ。

 いや困ったというよりも、やや慌てていると言った方が正しい。


「いえ、少しお話を聞いては……」


『やかましい! 貴様などでは話にならん。『神殺し』などと嘯いている小僧を――』


 その慌てた様子のポルッカが発する言葉に耳を傾けることをせず、自分の舌で己の死刑執行書に滑らかにサインをしてしまう。


 あー、という表情のポルッカと、苦笑いのヒイロの表情だけを残して、独裁者が喚いていた「表示枠」の映像が()()()と途絶える。


 「表示枠」は消えることなく、乱れた砂嵐のような映像を映し続けているが、がさがさとした雑音に紛れてヒトの絶叫のような音も微かに聞こえる。


 そして砂嵐は漆黒の画像となり、一切の音は途絶え、なにも映さぬただ黒い表示枠が会議室の中央上部にぽつねんと浮かんでいる。


『――グスタヴェルグ王国は現時点をもって『世界連盟(仮称)』預かりの独立自治領となりました。暫定領主の任命はこの後行われる会議の決定に従います。それまでは一時的にこちらで管理いたします』


 誰も声を発せぬまま、漆黒の「表示枠」からどす黒い血が流れ出すのではと戦慄していた『世界会議』参加者たち。


 だがその眼前に、その表示枠が光と音を取り戻して美しい『管制管理意識体(ユビエ)』を映し出し、グスタヴェルグ王国がどう扱われるのかを無表情に告げる。


 だれもグスタヴェルグ王国の独裁者、ガラントーガ二世がどうなったかを問う者は居ない。


 絶対者を侮辱する言葉を吐いた者は、ポルッカがトップである冒険者ギルドでも、幼女王スフィアが君臨するウィンダリオン中央王国でも、これから世界を統べることになるであろう『世界連盟(仮称)』でもない組織の判断によって、今この世から消された。


 それだけを理解していればよく、それ以上を問うことは愚行でしかない。


 誰もが沈黙を維持する中、最後の表示枠に映し出されたもう一人の独裁者は、ガラントーガ二世とは対極の、つまりは賢明な態度を示した。


 無条件の『世界連盟(仮称)』への加入を表明し、自身が王から引く代わりに生命と財産の保全だけを求め、ポルッカにより了承されて胸をなでおろしていた。


 どちらにせよラ・ナ大陸では有名であった二大独裁国の国民たちの暮らしは、これでやっとまともなものになるであろうことは間違いない。


 まつろうものには寛容を、まつろわぬものへは鉄槌を。

 そして迂闊な侮辱は死を招くことをこれ以上ないくらいに示して、『世界会議』への参加を拒否した国々への処置はわりとあっさり完了する。


 多くの国の代表たちにとって、恐ろしい思いをしたものの大筋では問題ない。

 あとは各国官僚たちによる具体論の詰めに入るだけであり、そこにやりがいを見出していない者などいはしない。


 えらいヒトたちが抜けた後、確実に世界を、ヒトの世を豊かにする打ち合わせに入るのみとなった会議室には、今までとは違う活気が満ちだしている。


 だがその中で某十ヶ国の代表たちだけが、傍にいる者が見てもわかるくらい蒼白になっていやな汗を流している。


 先のヒイロを侮辱した言葉と同じく、己の死刑執行書へサインすることと同義の情報。


 それが間もなくもたらされるのを知っている者たちは、すでに死人のような顔をしている。


次話 容赦なき 4/20投稿予定です。


読んで下さると嬉しいです!





次話からやっと外の話になります。

辛気臭い会議の話、連続投稿にお付き合いくださってありがとうございました。


できましたら今後もよろしくお願いします!

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書籍版第2巻 10月10日より発売しております! 電子書籍版は10/23発売となります!
2巻は本編も大量書下ろし、web版第二章完結後の後日談として下僕たちの会話「在り方の変化」を書き下ろしております。何よりもイラスト担当していただけたM.B様による表紙、口絵、挿絵は必見です! 王都の上空に迫る天空城がクッソカッコいい!

書影
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