第147話 運命の改変
中央暦457年、夏去月。
早朝。
ウィンダリオン中央王国領アーガス島。
そこに存在する迷宮攻略都市、その中心ともいえる冒険者ギルド総本部。
つい最近まではアーガス島支部でしかなかったここが総本部となったのには、もちろん理由がある。
それも一つだけではない。
『天蓋事件』から始まった表裏とものあらゆる出来事によって、支配者階級を自認する者たちからは今やアーガス島こそが、世界の中心と看做されるようにまでなっている。
よって世界組織である冒険者ギルドの総本部が、今までのウィンダリオン中央王国王都ウィンダスからここアーガス島に移ったとて疑問に思う者はそう多くない。
だがそのためにここしばらく、冒険者ギルドのみならず迷宮、遺跡、魔物領域に関わる者たちは多忙を極めている。
経済的な視点でいえばそれら――より正確に言えばそこで狩られる商品としての魔物と、戦闘の結果である成長がもたらす恩恵に関わっていないヒトなど、ただの一人たりともいないのが現代のラ・ナ大陸である。
その意味では「冒険者ギルド」の中枢部とは、少なくとも表の世界にとっての中枢部と同義と言ってもそれほど過言でもない。
そこに新設されたばかりの、真新しい豪奢なギルド総長室。
「これは、これは、秘匿級冒険者殿。昨日は充実した休日を過ごされましたでしょうか? もっともあれだけ美しい女性たちに傅かれているのですから、私などには想像も及ばない、さぞや素晴らしい休日だったのではありましょうな。冒険者ギルドに所属する人間と致しましては、今やこの世界の至宝と言っても過言ではない御身が常に心身ともに健やかであられることを心から祈っておりますよ」
ポルッカ・カペー。
つい最近冒険者登録をしたばかりの新人冒険者の担当者だったおっちゃんである。
「なにをおっしゃいますやら新冒険者ギルド総長代理兼アーガス島支部長殿。非力、菲才の身ではございますが、我が身が冒険者ギルド、ひいてはラ・ナ大陸の繁栄に貢献できるのであれば、粉骨砕身、磨穿鉄硯にて迷宮攻略に総力をあげる決意でございますよ。図々しくもお休みなどいただいて慚愧の念に堪えません」
ヒイロ・シィ。
つい最近冒険者登録をしたばかりの、新人冒険者。
その正体は天空城の絶対的支配者『黒の王』の分身体。
本来は目立たずにこの世界を楽しむために、ありふれた冒険者として生きて行くためにわざわざ生み出されたはずの存在である。
それが今や一方は世界組織である冒険者ギルドの現総長。
もう一方はわざわざ新設された冒険者等級『秘匿』として、少なくともアーガス島の冒険者たちの中では圧倒的な強者と看做されるに至っている。
ヒイロの能力からすれば至極当然の結果ともいえるが、本来の目的からすれば甚だしく逸脱しているとしか言えまい。
その二人がいわば世界の中心で、心にもないシニカルな会話を交わしているのだ。
ヒイロの方は冗談交じりでにこやかに、ポルッカの方は嫌味交じりで乾いた笑いなのは二人の関係がそのまま加害者と被害者ということも出来るが故だろう。
もっともポルッカとて、今の時点であっても誰もが羨むのを通り越して、「絵本かなにかの話かな?」とでも言われかねない立身出世物語の主人公でもある。
ただあくまでもこの世界の内側の住人であり、冒険者思いの気のいいおっちゃんがベースのポルッカには気苦労が絶えないというだけだ。
不幸なのはたまたまヒイロと出逢ったポルッカが実務はもちろんのこと、責任を積み上げれば積み上げるほどより組織運営の能力を発揮してしまうタイプだったことだろう。
ヒイロに出逢うことさえなければ、新人から最新層攻略者に至るまでやたらと冒険者たちからは頼りにされつつ、なぜか出世しないまま記録には残らず、記憶にだけ残る窓口のおっちゃんとしてその生涯を終えたはずだ。
その方が幸せであったのかどうかは、今の時点ではまだわからない。
ただ気苦労という点だけでいうのであれば、確実に今よりも少ない、穏やかな人生になっていたことだけは確かだ。
「……いやまあしょうもねえ嫌味の応酬はおいといてだな。今日はこんな朝っぱらからヒイロの旦那に出向いてもらったのには当然訳がある」
だが誰かがやらねばならない仕事があるとして、それを自分ができるのであれば放り出すことなどできないのがポルッカというおっちゃんの心根、在り方である。
ヒイロが懐いているというか、やたらと応援したがるのはそのあたりが理由なのだ。
自分の中の人よりも有能なおっちゃんが頑張っているのを見ると、無条件でできることはしようと思ってしまうのも無理はないのかもしれない。
こんなゲームが現実化してしまった状況ではそれを楽しむことが最優先になるとはいえ、ポルッカの在り方とはヒイロの中の人が向こうで憧れた在り方であるともいえるのだから。
だが強い責任感と人の好さを持った人間が実務能力まで持ってしまうというのは、ある意味において不幸であるとも言えるのだ。
ゆえに多くの場合、天は人に二物を与えることがないのかもしれない。
そのポルッカは今回も現況に対する嫌味合戦では勝てないことを早々に悟り、わざわざヒイロを早朝に呼び出した理由、その本題へと話題を移す。
――ヒイロの旦那にゃ、悪意なんて欠片もねえからな……だからこそより質が悪いともいえるのかもしれないけどよ。
ただ今やヒイロにこんな気楽に口を利けるのは、アーガス島においてポルッカを除けば唯一の友好同盟ギルド『黄金林檎』所属、『鉄壁』の通り名を持つヴォルフくらいなものである。
ポルッカはそれをきちんと理解した上で、あえて今の距離感、空気感を維持している。
それはただ馬鹿丁寧に心から服従するよりも、よほど難しいことだともいえるだろう。
個人としてならあくまでも年の離れた友人としてそうするだけのことだ。
だが今のポルッカは世界組織の長としてそれが必要だからやっているという、僅かな後ろめたさがなくもない。
もっともポルッカそんな立場になったのもヒイロ絡みなので、遠慮する必要などないのだが。
「そりゃそうでしょうね。この前ポルッカさんの言っていた、アルビオン教の教会騎士団がいよいよやってきましたか?」
「ヒイロはなんでも知ってんだな。いやまあ来ること自体はある程度織り込み済みだったから、いいっちゃいいんだけどよ。その理由が想定とはあまりにもかけ離れててなあ……神様ってのは本当に実在するのかもしれねえな」
「僕を名指しで『依頼申請』でもしてきましたか」
「……勘弁してくれよ。すべてはヒイロの仕込みかよ」
ポルッカとしてはそれなりに重要な情報を開示したつもりだったのだが、ヒイロはしれっとしたものだ。
つまり本当に『主神アルビオン』様とやらが存在していてヒイロの存在を敬虔なる信徒たちに伝えたわけではなく、こうなることもヒイロの想定内――仕込みだということだ。
そしてそのことを、これは喜んでいいことだとは思うのだがポルッカに隠すつもりはヒイロにはさらさらないらしい。
「その名指しがウィンダリオン中央王国王家と被っている、ってところあたりまでならですけどね」
「いやもう、驚くよりもやっぱりそうかと思ってる自分が信じられねえわ」
あまりと言えばあまりなヒイロの返事に、現ギルド総長は思わず天を仰ぐ。
まだ自分が開示していない情報も正確につかんでいるとなれば、これはもう間違いなくヒイロの仕込みだ。
であればその両者が望んでいる冒険者ギルドへの『依頼申請』の内容も、当然掌握しているということだろう。
本来『依頼申請』は市井に生きる者たちからされるものがほとんどで、国や世界宗教が直接冒険者ギルドに出すことは極稀である。
そんなことなどしなくとも、自前の力でなんとかできてしまうのが国家や巨大宗教という存在なのだから。
つまり今回はヒイロという存在をある程度以上詳しく知った上で、自分たちの力では成せないことを依頼せんとしているということになる。
冒険者ギルド総長としてはなかなかに頭の痛い案件であると言えよう。
まあヒイロのこういうのは、今に始まったことでもない。
そもそも『天蓋事件』の翌日にも飄々と迷宮攻略を続けていた豪の者ではあるし、ポルッカが冒険者ギルド総長になることになった原因――『連鎖逸失』の消失と、それに伴う冒険者ギルドを中心とした大量の神隠し――をそれが起こる前にポルッカに教えてくれたのもヒイロだった。
ここは深く突っ込んではいけないところなのだろうが、つまり『連鎖逸失』を消し飛ばしたもの、冒険者ギルド内に潜伏しながらそれを仕掛けていた者たちを一掃したのもヒイロだとしか思えない。
いやヒイロだけではなく、トップ冒険者をも凌駕する圧を持った老紳士や、心に決めている相手がいてさえ見惚れてしまう美女たち――いわばヒイロ一党の手によるものだろうが。
一窓口のおっちゃんが何段飛ばしなのか数えるのもバカバカしい跳躍によって頂点に就いた人事も、冒険者ギルドの旧中枢部がすでに完全にヒイロの支配下に入ってでもいなければありえない。
さすがに異を唱えるだろうと思っていたウィンダリオン中央王国は、まさかの王家も国家としてもポルッカの総長就任に全面承認を即座にしてくれている。
ヒイロは得体が知れない。
それこそ『天蓋事件』を起こした天空の城と同じくらい。
そして現れた時期もほぼ同じと来ている。
同時に顕れた勇者と魔王か。
あるいは自作自演の人側担当か。
ポルッカとて、他の多くの人たちよりも知っていることが多いだけに、それくらいは疑ってはいるのだ。
「おかげで弛み始めていたお腹が引っ込んでいいじゃないですか」
だが今、そう言って自分の目の前で悪い笑顔でにやにやしている美少年を見ていると、そんな警戒がバカバカしくなってくるのだ。
世界を救う英雄だの、逆に世界を滅びに導く魔王だのというより、自分と場末の酒屋で酒でもかっくらって仕事の愚痴を言い合っている方がしっくりきそうな気さえする。
これだけ美少年で、トップギルド『黄金林檎』が一目も二目も置く、とんでもない『魔法使い』様だというのにだ。
まあそんな感覚でもなければ、とてもヒイロには付き合えないなあとも思うポルッカである。
「その分、デコの進行がはやまりそうで怖えよ」
それがあっても気苦労で、ここ数年気にしている進行がはやまりそうで憂鬱だが。
「おやそれはいけませんな、ポルッカ・カペー冒険者ギルド総長殿。我が家には良い育毛剤がありますがご入用ですかな?」
「ヒイロにそういう借りをつくるのは、禿げるより怖えかなあ」
そう言って己の若い頃よりは確実に広くなったデコを撫でながら苦笑いするポルッカ。
できればそうはなりたくはないが、人とはらしく歳をとってこそのものだとも思ってもいる。
――デスクワーカーが歳とともに体がやれたり腹が出たり、心労で少々デコが広くなるのもまあらしいっちゃらしいしな。
それに友好同盟を結んだお礼と称して、ヒイロがヴォルフにポンと渡した『盾』は今や、主に商人たちの間でものすごい話題になっている。
一見しただけでもとんでもないシロモノだとは思われてはいたが、ここしばらくヴォルフのパーティーが、それこそヒイロの如く連日の迷宮攻略を可能としていることはかなりの注目を集めているのだ。
迷宮での目撃報告などでは、ヴォルフが人ならざる者のように光っていたという話まである。
いかな強者の集団である『黄金林檎』のトップ・パーティーであっても、いきなりそんな無茶苦茶ができるようになる理由など一つしかありえない。
あの『盾』だ。
アレをヒイロがヴォルフに手渡した場所には、ポルッカもいた。
その時も確か、「我が家にあった」などという言い方をしていたはずだ。
あれと同様の流れで受け取った『育毛剤』などを自分の頭に振りかけた日には、なにがどうなるかなどわかったものではない。
いきなりロン毛になるくらいであればまだしも、若い頃憧れていた金髪碧眼になって若返ったとしても、言うほど驚かないかもしれないほどだ。
実際ヒイロが、ポルッカが望めば渡そうと思っていた「育毛剤」とはゲーム時代は有料アイテムであったP.Cアバターの見た目を変更するためのものである。
N.P.C――世界の中の人であるポルッカに作用するかどうかはまだ未知だが、するのであれば髪を生やすどころか、年齢や性別まで望むがままになるシロモノなのだ。
その実験をポルッカでやってみたくてにやにやしているヒイロは確かに人が悪いと言えるだろう。
分身体のヒイロとしては、「理想の自分になってみた」仲間が欲しいだけかもしれないが。
「そんなこと言っている場合ですか? せっかく出世して手に入れた職権を乱用してヘンリエッタさんを専属秘書にできたのに、禿げ散らかしている場合じゃないでしょう?」
「ななななんのことでしょうか? へへへヘンリエッタ嬢の実績はアーガス島冒険者ギルド職員のみながよく知るところだし、ヒイロのおかげで急に総責任者になっちまった俺の補佐をしてくれるには一番適任だってことは女性陣の総意とも聞いている。実績だけではなくて職員としての等級号俸も総長秘書、支部長秘書として任命されるのになんの問題もないものであってだな――」
「はやい。多い。早口すぎて目が泳いでいて言い訳にしか聞こえない」
また髪の話をしやがる、と思っていたら意外な角度から爆弾を放り込まれて挙動不審に陥るポルッカである。
ささやかな特権行使として、ヘンリエッタを総長専属秘書に、マリンをヒイロ担当窓口に、リコを『黄金林檎』窓口に配属している。
ヒイロが現れて以降、何度かは一緒に飲みに行くようになっていたし、きちんと本人たちの意思確認もした上でだ。
マリンとリコは彼女らの望んだ通りだし、ヘンリエッタもポルッカ専属どうこう以前に「出世」という点だけは間違いないので喜んでくれている――はずだ。
それくらいの役得がなければやっていられないと言いたいところだが、ヒイロ本人にそれを指摘されるとさすがに慌てる。
若者に老いらくの恋を気付かれるのはなかなかに厳しい。
「とにかくヘンリエッタ嬢が冒険者ギルドの総長専属秘書となることにゃなんの問題もないんだよ。どっちが問題かっていや、俺が総長兼支部長って方だろうが」
「だ、そうですよヘンリエッタさん」
「……あ、ありがとうございます。お、お茶をお持ちしました」
ヒイロの言葉に続いて扉を開け、真っ赤になってお茶を置いてぱたぱたと退出するヘンリエッタの後姿を見て、天を仰ぐポルッカ。
――そりゃそうだ、重要な客が来ているんだから茶くらい出すわな。
総長という立場にいまだ慣れていないことと、そこをうまくヒイロに突かれて遊ばれたことを理解して脱力する。
――いやもとより目があるなんて思っちゃいねえがよ。
それでも男は出世すると、一縷の望みを抱いてしまったりするものなのだ。
「僕はどっちも問題ないと思いますけどね」
どちらともとれる言葉を悪い顔でしているヒイロを半目で一瞥し、嘆息する。
仕事も想いも、自分からは放り出す気もなければ出せもしないのだ。
であれば、どちらも周囲や相手の評価にまかせるしかない。
ポルッカとしては、自分にできることを一つ一つ、こつこつとこなしていくしかない。
それは一窓口だった時も、総長となった今もなにも変わることはない。
そうでなければ、ヒイロの口から「大量の神隠し」の本当の理由を聞かされた上でなお、冒険者ギルドに残って踏ん張ろうとは思えなかった。
長い付き合いだったディケンスだけではなく、ヘンリエッタも「あちら側」だったとしたらさすがに挫けていたかもしれないが。
「ある程度の事情を知ってなきゃ、意外とかそういう域を超えた驚天動地の人事なんだよなあ……」
「それが通ることの意味を理解できない人はそういないんじゃないんですか?」
ヒイロの言っていることは確かにもっともだ。
とんでもない、ありえない人事だからこそ、それを通し得る巨大な力が必ずその背後には存在しているのだ。
それすら理解できない人間は、組織の中では生きて行けない。
少なくとも上へはいけない。
「それが意外と多いんだよこれが。ま、気持ちもわかるし、俺ぁ与えられた立場に恥ずかしくないよう頑張るだけだがな。ヒイロの言葉じゃねえが粉骨砕身、磨穿鉄硯ってやつだな」
「信頼していますよ」
「圧かけるのはやめてくれ」
確かにやりがいは充分にあるのだ。
『連鎖逸失』から解放された冒険者たちはこれまでにない黄金期を迎えるだろうし、その力を以って迷宮、遺跡、魔物領域からもたらされる利益は膨大なものとなり、人の世界がいまだ経験したことの無い大拡大期を迎えることは想像に難くない。
その礎となるべく馬車馬のように働くのは、心楽しいものなのだ。
すでにその空気におされてか、戦う力には恵まれなかった優秀な人材たちの多くが冒険者ギルドに就職することを希望し始めている。
中でもやたら優秀な若い女性が多いのは、ヒイロ人気というわけでもあるまいがありがたいことである。
書類で見ただけだが、正直「嘘だろ?」と思うほど優秀で別嬪さんが多いことはちょっと引っかからなくもないのだが。
まさかいかなヒイロとはいえ、眉目秀麗な才女を量産することなど不可能だろうし、さすがに自分の穿ち過ぎだとポルッカは思っているのだが。
「ああ、意外といや、ヒイロがパーティーを組んだのは意外だったな。てっきり単独攻略を続けるもんだと思ってたが」
「……意外だったのはそれだけじゃないでしょう?」
話の流れから、反撃の糸口を見つけて今度はポルッカが悪い顔で笑う。
それを受けたヒイロは、珍しいことに本気で閉口している。
口をへの字に曲げているヒイロなど、早々お目にかかれるものではない。
「ご明察。まさかあの新人踊り子と二人組を結成するとはな。あのこえー別嬪さん方はなにも言わねえのか?」
「そんなわけないでしょ……」
「はっは、オモテになる方は苦労の種類も違いますなあ」
そうなのだ。
あろうことかヒイロは、『連鎖逸失』の消失をポルッカに知らせに来た日に冒険者登録した新人美女冒険者――あの「踊り子」と二人組のパーティーを結成し、ギルドに正式登録も行っているのである。
今日は一緒にはいないが、ここ最近はほぼ常に一緒に行動していた。
ただ肉感的な美女というだけではなく、あっけらかんとした性格から人気もかなりあるのだが、ヒイロと組んだ瞬間から
「四人目かあ……」
などと口にして勝手に諦める男衆が多数発生している状況である。
ポルッカにしてみれば自分も知っている白い別嬪さんと黒い別嬪さん、その後増えた小さめの別嬪さんたちの反応が気になるが、この手の話題でヒイロをいじりすぎるとお付きの御猫様の機嫌が目にみえて悪くなるのでほどほどにしている。
ヒイロの反応からするとこのパーティー結成は本意ではないのだろうが、それでも解消しないということは、先の話ではないがそうせざるを得ない理由があるということだ。
あんな別嬪が一人増えるんならいいじゃねえかとポルッカなどは思うのだが、ハーレムはハーレムで凡人には計り知れない苦労があるのかもしれんとも笑う。
「さてと。まもなく同時にヒイロへの客が来る。誰に先に会うかの判断は任せていいよな?」
「冒険者ギルドとしては、どっちを優先した方が得ですか?」
「ヒイロにお任せだな。一番得なのは冒険者ギルドではなく、ヒイロの意志でその順序を決めたと明言してもらえることかな。こっちの意図は知らんふりをしてもらえればなおいい」
「承知致しました総長殿」
ポルッカが自分の態勢を仕事モードに切り替える。
自分がどう思っていようとも、受けたからには冒険者ギルド総長としてのらしさもまた必要なのだ。
必要とあれば似合わぬ背伸びもできる限りはするし、厳しい判断もする。
狡く聞こえようが、それが組織のために最善と判断すれば躊躇するつもりもない。
普通であれば組織に所属する冒険者を御しきれていないなど百害あって一利なし、ましてやそれを外部に明言するなどもってのほかだが、ヒイロまでくると話は別だ。
冒険者ギルドほどの巨大組織であっても、すでにヒイロの手札のひとつだと思ってもらった方が、大国や世界宗教と駆け引きをするのであれば今は有利だろう。
そのあたりはヒイロも理解してくれているらしく、旨くやってくれることを期待してもいいはずだ。
偉い人にはすこぶる強いのだ、ヒイロというこの不思議な冒険者は。
思えば今は旧本部の責任者を意気揚々と受け入れてくれた、元アーガス島支部長もヒイロをものすごく苦手としていた。
「それとどっちじゃないんだこれが。同時に来るのは三組でな」
「アルビオン教の教会騎士団と、ウィンダリオン中央王国王家の使者以外にも?」
珍しく、本当にヒイロはなにも知らなかったようだ。
演技ではなく意外そうな顔をポルッカに晒している。
「ヒイロが現在唯一友好同盟を結んでいる相手だよ」
「ヴォルフさんですか。だったら最初に逢う相手は決まっているじゃないですか」
「……言うと思ったよ」
大国の使者と世界宗教の使者よりも、自分と友好同盟を結んでいるギルドの一冒険者を優先する。
できる。
それこそが本当の意味での、強者にのみ許された特権なのだ。
新章開始です。
読んでいただいたとおり、変わった展開になっております。
ここへのつなぎ方も含めて、旨く書けるといいのですが。
次話 第147話 プレイヤー&プレイヤー
できるだけ早いタイミングで投稿したいです。
「カルネアデス・パラドクス」が4月上旬に完結予定なので、その後になると思います。
こちらの方も出来ましたらよろしくお願いします。もうあと数話で決着します。
本日コミックス3巻発売していただいております!
満月シオン先生によるコミカライズと、三巻の表紙の出来は素晴らしいです。
書き下ろしSSもありますので是非ともお手に取ってみていただければ嬉しいです。
第二章の展開、漫画にしてもらえるとわかりやすくて面白んですよね。
まあコミックスはすごいところで終わっているので、続きはここで読んでいただければと思います。
よろしくお願いします。
現在
『カルネアデス・パラドクス ~残酷な現実とやらを蹴り飛ばすためにこそチートは行使される~』
https://ncode.syosetu.com/n0631gt/
を投稿しております。
本日4/9(金)に四話連続投稿して完結となります。
出来ましたらそちらも読んでいただければ嬉しいです。よろしくお願いします。
また先日「シン・エヴァンゲリオン劇場版」を見たオタクとしての魂の叫びを
『【ネタばれアリ感想】四半世紀エヴァンゲリオン ~草臥れたおっさんの慟哭~』
https://ncode.syosetu.com/n4911gv/
として投稿しております。
すでに観られた方は覗いていただければありがたいです。
同好の士とは、酒でも呑んだくれながら、あーだこーだと語り合いたい気持ちです。
よろしくお願いいたします。
※まだ観ておられない方はご注意ください。クリティカルなネタバレが含まれております!
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ここ「小説家になろう」での人気が三巻以降の続刊可否に影響するのは間違いありませんので、なにとぞどうかよろしくお願いいたします!





