第100話 その冒険者、大陸を統べる者。
アーガス。
迷宮都市島とも呼ばれ、『冒険者』を生業とする者たちにとって最前線と同義であった、ウィンダリオン中央王国南端の小島。
だが、その名から人々が想像するモノは、この一年と少しで一変している。
今この大陸に暮らす多くの人々が「アーガス」と聞いて頭に思い浮かべるのは「世界の中心」すなわち『世界連盟』の中枢都市の名として、である。
政治、経済、戦力、そのすべてが集中している、いわば世界の首都。
三大強国と呼ばれたウィンダリオン中央王国の王都ウィンダス、シーズ帝国の帝都八竜の泉、ヴァリス都市連盟の盟主都市国家ラ・サンジェルクら巨大都市をはるかに凌駕する、ラ・ナ大陸を統べる支配者のおわす都。
それが今現在のアーガス島なのだ。
もっとも冒険者たちにとっては、最前線の一つであることに変化はない。
現在ラ・ナ大陸で発見されている他の三つの迷宮も一年以上前に『連鎖逸失』からは解放されており、その攻略も全力を挙げて進められている。
『連鎖逸失』から解放されたのは死んでいた三つの迷宮だけではなく、大陸中に存在する地上の魔物領域も同様である。
結果、ラ・ナ大陸中がそれらの攻略にかけ得る総力を挙げており、いわば『大迷宮時代』の黎明期と言っても差し支えない状況なのである。
そんな中でも「アーガス島迷宮」の攻略を担当しているのは、冒険者ギルドの中では最精鋭、『世界連盟』のもとに集う各国の中でも「大国」の軍、その精鋭たちだ。
絶対者の御膝元、その地に在り、いわば「すべての始まり」ともいえる迷宮の攻略を最優先とするのは当然のことなのかもしれない。
もっとも『天使襲来』を凌いだ人類がその際に手に入れた、人を凌駕する力――『堕天の軍勢』を以ってしても今なお、表向きはアーガス島はもちろん、他の三つの迷宮すべての最下層までは到達できていない。
とはいえ今まで充分なマージンを確保して進めていた迷宮攻略を、危機となれば「変身」して凌げるようになった『堕天化』の力を得た冒険者、兵士たちの効率は圧倒的に向上している。
『堕天化』は憑代のレベルに依存する「強化」であり、その状態では憑代自体のレベルアップが不可能なのが痛し痒しだが、安全の確保という点では相当に信頼できる。
変身前でギリギリの戦い、つまりは「とてとて狩り」を緊急避難可能な状態で続けることが可能となれば、成長効率も向上しようというものである。
男女問わず、『堕天化』→『人化』をすれば全裸化してしまうのが問題と言えば問題だが、まあ大したことでもない。
通常の装備は失われるが、迷宮で獲得できる魔法装備の類が破損することはないのは、さすがはこの世界のベースがゲームであるゆえと言えるかもしれない。
よって『連鎖逸失』があった頃には考えられない速度で迷宮攻略は進められ、それに伴い人の強さは本来の歴史展開における現時点ではありえぬ域に到達し、今なお伸び続けている。
その副産物として、迷宮から持ち帰られるあらゆるアイテムが人の暮らしをも一変させつつある。
超貴重品であったはずの魔法装備群も、低階層で獲得可能なものは手頃な価格で市場に流れるようになり、その結果新人から中堅どころの冒険者の生存率、攻略効率は著しく改善されている。
結果として「冒険者稼業」というものが以前よりも目指しやすい職業となり、冒険者ギルドに登録される人数は大陸中で増加の一途をたどっている。
そして膨大な数となった『冒険者』を必要とする迷宮、魔物領域はいくらでもあり、そこからより一層多くの「富」が持ち帰られるというわけだ。
すでに『天使襲来』前にほぼ攻略が完了している魔物領域は、新人から中堅までの冒険者たちの良い訓練場ともなっている。
また冒険者や兵士といった「戦う力を持った者」だけではなく、市井に暮らす人々にも初級の魔法武具が行きわたることによって、地方での害獣やはぐれの魔物による被害も激減している。
ある意味最も恐ろしい、過ぎた力を手にした一部の人間の犯罪行為に対しては、『世界連盟』が厳格に対処し、『天空城』の力も借りることによって今のところ『天使襲来』以前と同じく抑制は利いている。
そういった「力」のみではなく、インフラストラクチャーや普通の暮らしに便利な魔道具も大量に迷宮から持ち帰られ、街はその姿を大きく変えている。
「魔法使い」は未だ希少職のままだが、「魔法」はそういった魔道具を介して、人の暮らしに急速に溶け込みつつある。
夜に燈されるのは火の灯りのみならず、魔法光による街灯が整備されつつある。
あれだけ高価な代物であった「転移魔法陣」も、気楽に使用する域とまではいかないが個人レベルでも所有可能となり、現状では「大規模転移陣」を主要都市に配置し、定額利用できる仕組みが「あたりまえのもの」として浸透しつつある。
結界魔法の類は「魔法石」という形で広く販売され、緊急避難用のお守りとして誰もが持つようにもなっている。
世界はもはや、ヒイロが現れる前と後で大きく変わったのだ。
景観として言うのであれば、アーガス島で最も変化したものは別にある。
天蓋事件で墜ちた『九柱天蓋』を大改造した空中浮遊要塞『枢軸』もその一部に含まれるが、そこから螺旋状に遙か天空の彼方にまで伸びる、「浮遊島の螺旋階段」とでもいうべき存在である。
これは『天使襲来』解決後姿を消した『天空城』へ繋がっているとまことしやかに市井では囁かれ、実のところそれは真実でもある。
今後人の認識から消えようとしている『天空城』の、ちょっとしたお遊びみたいなものである。
結果として、アーガス島上空から、この星をつきぬける域の高みまで、螺旋状に連なる浮遊島が雲を突きぬけて連なっているという奇観を産んでいる。
その出発点が『枢軸』であるあたり、いつか『天空城』を目指して『螺旋浮遊迷宮群』を攻略する冒険譚なんかを期待しているのかもしれない。
どこかの化け物集団の首魁様が。
とにかくヒイロがいた世界では技術・科学の発達によってなし得た人の便利な暮らしというものが、この世界においては迷宮から持ち帰られる出どころの知れない『魔法道具』によって実現されつつあるのだ。
『天使襲来』前から、積極的に『天空城』も関わっていた「新世界」の構築は、此処に至って一気にラ・ナ大陸中へと広がっている。
ヒイロが目指した、今までに存在しなかった分岐とその先へは、確実に至れていると言っていい状況だろう。
これから先、この世界が辿る未来はヒイロすら知らぬ、正しく未知の未来なのだ。
「マリンさん、依頼の登録お願いします」
アーガス島上空に浮かぶ、再建された『九柱天蓋』を土台とした冒険者ギルド総本部でもある巨大浮遊要塞『枢軸』
そこではなく、ヒイロが最初に訪れた地上のアーガス島冒険者ギルド。
その受付で、ヒイロが現担当者であるマリン嬢に本日こなす予定の依頼登録をお願いしている。
すでに50階層を突破しているヒイロにとって、冒険者ギルドの発行する「最深部階層における依頼」というものは、自分の攻略層へ行く途中にこなすものに過ぎない。
現状、ヒイロの目から見て「最深部攻略組にもちょっとまだ厳しそうな依頼」を選んでこなしているのが実情である。
――なんで30階層にこの薬草が生えてるって情報が出回るんだろうなー
「依頼者」に興味を持たざるを得ないヒイロだが、今のところそういった部分への調査はまだ進めてはいない。
いろいろ落ち着いたら、『T.O.T』が前提となっているとしか思えない、この世界の仕組みについても調査を進めるつもりではあるのだが。
「承知しましたヒイロ様!」
冒険者ギルド総長としての業務が多忙を極め、受付中年の業務を辞さざるを得なくなったポルッカの実務ポジション、つまりヒイロの受付担当者。
その位置を何とか射止めたマリン嬢が、わかりやすい好意をその派手目だが美しい顔に浮かべて登録処理を迅速に行う。
目的は恋であっても、仕事を疎かにすることはない。
貴族出身の変わり種であり、アーガス島冒険者ギルドにおけるトップ3美人受付嬢の一人とされているマリン嬢は、自分でも無理目と自覚しながらヒイロに恋している多くの市井の女性の一人である。
その中では、もっともヒイロに近い位置にいると言っても間違いではないだろうが。
「お、我らが『秘匿級冒険者』殿はこんな時でもマイペースに迷宮攻略ですか(もげろ)」
「とびっきりの花嫁を、一気に三人も娶ろうってな方は胆力が違いますな(もげろ)」
「まあ英雄色を好むっていうし、お相手の方々もそれを望まれてんだから外野が僻むのはみっともねえよ(だがもげろ)」
嬉しそうに、でもどこか憂いの表情も浮かべて受付としての仕事をするマリン嬢。
その作業完了を待っていたヒイロを目ざとく見つけた「冒険者ギルド」に顔を出している多くの古参冒険者たちが次々に声をかけてくる。
『天使襲来』を退けてから、今日まですでに半月ほどが経過している。
その事実と、表示枠を通して目にした「天使」を掃討する『天空城』と『堕天の軍勢』に護られた人々が快哉を叫んでから、『世界連盟』は戦勝宣言とともに、三大強国の三美姫の婚儀を正式に発表した。
相手が誰かは言うまでもない。
その公式とせざるを得ない『同時結婚式』を目前としながら、マイペースにしれっと迷宮攻略を続けているヒイロをやっかんで? の発言である。
マリン嬢のわずかな憂いの原因も間違いなくそれだろう。
女性の目から見てもみな美しく、この一年このアーガス島にてヒイロの側に在りつづけた三美姫。
ウィンダリオン中央王国の幼女王、スフィア・ラ・ウィンダリオン。
シーズ帝国の第一皇女、ユオ・グラン・シーズ。
ヴァリス都市連盟現総統令嬢、アンジェリーナ・ヴォルツ。
その三人を臆面もなく同時に嫁にし、結婚式まで同時にやろうというのだから男であれば「もげろ」の一言くらいは投げつけたくなろうというものである。
マリン嬢に至っては、夢を夢として見ることも難しくなると言ったところか。
ただでさえ、ヒイロの周りにはエヴァンジェリンだとかベアトリクスだとかいう「とびっきり」が侍っていることでもあるし。
今や知らぬものとてない、冒険者ギルドと並び称される世界的組織、巨大傭兵団である『黒旗旅団』の旅団長や、世界企業『黒縄商会』の会長もそれぞれタイプは違えどものすごい美女であり、なぜかヒイロにその二人も傅いているとなればさもありなん。
なまじヒイロのことを深く知れる位置につけたからこそ、戦意をくじかれかねない現実を突きつけられているマリン嬢なのである。
「我が主、最後の小声はなんなのでしょうか?」
「さ、さあ……」
場所さえ選べば人語を話すことをすでに隠してはいない千の獣を統べる黒が、よくわからぬという表情で主であるヒイロに問いかける。
――どう答えろっていうんだよ!
さすがにヒイロも「なぜもげろといわれるのか」を、怪訝な表情をしているシュドナイにすることは憚られる。
自分でも言うだろうなあ、と思っているだけになおさらである。
「さすがはヒイロ君だね、挙式の直前でも迷宮攻略とは恐れ入る。で、もげたのかい?」
いつものように大扉が開き、公的には「アーガス島迷宮」の最深部攻略パーティーとされているギルド『黄金林檎』の幹部、ヴォルフが入ってきつつヒイロに声をかける。
――ヴォルフさん、なんでも爽やかにハキハキ言えば許されると思ってるところあるよな……
それにしたって「もげたのかい?」は無かろうと思うのだ。
「もげてませんよ!」
「……(なんだざんねん)」
数少ない「気を遣わなくてもいい」冒険者の一人であるヴォルフに対しては、ヒイロも遠慮なく好きなことを言いかえすことができる。
――分身体とはいえ、未使用のままもげてなるものか。
さすがにそこまでは口にはしないが、ヴォルフの悪い笑顔での小声に半目で口が横に開かざるを得ない。
ヒイロはこういうやり取りを結構好んではいるが、ヒイロに対して演技込でも「気安く」接する存在が昨今少なくなるのはどうしようもない。
「ヒイロ様の御意向ゆえ、多くは申しませぬが。――少々言葉が過ぎませんか?」
側に仕えることが多くなったセヴァスが、時にこの手の殺気を閃かせるとなればなおさらである。
その声を聴き殺気も浴び、『シュドナイ様』に対して「御モフりさせていただく許可」を得ようとしていた弓使いカティア嬢の隣で、踊り子のリズが腰砕けになっている。
『黄金林檎』一党の女性メンバー二人は、最初から推しが揺らぐことはないようだ、あれだけのことがあってなお。
強い。
だがそんなセヴァスの発言も『天空城』の下僕の方々のある種の冗談だと理解できつつあるヴォルフ一党はまだしも、先の発言をしていた冒険者たちは顔色が悪くなることを止められない。
古参――つまりは『天使襲来』に参戦していた冒険者たちであり、その前で千の獣を統べる黒が人語を口にすることを良しとする程度には『天空城』のことを知っているのだ。
「勘弁してやってください、セヴァス殿。こいつらこんなこと言ってますけどけっこう寂しいんですよ」
その場を取り持つように、もはや当たり前のように「転移陣」を使用してこの場に現れたポルッカ・カペー・エクルズ子爵兼冒険者ギルド総長がフォローを入れる。
「ポルッカさん!」
「ようヒイロの旦那。こっちで逢うのは久しぶりだな」
わりと久しぶりのため、嬉しそうにするヒイロに対して、少々疲れた表情でポルッカが片手をあげて挨拶を返す。
冒険者ギルド総長としての業務量は、増えこそすれ減ることなど今後しばらくないからには、ポルッカの疲労もさもありなんである。
「寂しいとは?」
ポルッカには一目置いているらしいセヴァスが、興味深げにポルッカのフォローをより詳しく話すようにと促す。
ヒイロが認めているとはいえ、度を超えた言動には冗談交じりとはいえ「いいかげんにしろよ?」と言いたくなるのは下僕として性だが、我が主に対する少々歪んでいようが思慕の念がその根幹に在るというのであれば話は変わる。
主を好いているが故の言動に否やを唱えるほど、下僕は偉くはないのである。
それが「ヤンデレ」などと呼ばれる類のモノであれば別だが。
「挙式が終ればヒイロの旦那は『ウィンダリオン中央王国の王配』で、『シーズ帝国皇帝の義兄兼公爵』で、『ヴァリス都市連盟総統の娘婿兼軍事顧問』になっちまう。もう俺ら『冒険者ギルドの秘匿級冒険者』ってだけじゃあなくなっちまいますからね」
この一年の間にシーズ帝国では帝位禅譲が行われており、ユオの弟であるクルス・グラン・シーズが現皇帝となっている。
「そういうものですか」
ポルッカが語る、ヒイロがどこか遠い所に行ってしまう感覚というのは嘘ではない。
セヴァスにしてみれば「なにをいまさら」という気もするが、まあまるで理解できぬと突き放すほどのものでもない。
力においてははじめから超越者。
それでもこの「冒険者ギルド」で冒険をはじめ、この一年と少しこの世界の中心で在りつづけた「冒険者ヒイロ」が、この場所から去ってしまうことが「寂しい」と言われればそういうものなのかと思いもする。
「それこそ口のきき方も気を付けにゃならんようになりますしね。いや嫌味じゃなくて組織の運営ってか、けじめ上」
プライベートではともかく、公的な場ではそれは守られねばならないことでもある。
組織を運営する立場の者にとって、そのあたりをいいかげんにするわけにはいかないのだ。
ざっくばらん、仲間内でこまけぇことはいいんだよ、でやってきた冒険者たちであっても、古参であり今や『堕天の軍勢』の一員ともなればそのあたりの「責任」を感じもする。
これからはいくつもの肩書きを持つことになる、真の意味での絶対者――大陸を統べる者に対する態度が、今のままというわけにはいかないことくらいは理解しているのだ。
ゆえにこそ、この最後の日々に「言い過ぎ」になるのかもしれない。
「僕は気にしないけどね。どんな肩書き付けられようが「冒険者」を止めるつもりはないし」
そう言って屈託なく笑い、しぶしぶカティアに対して「モフる」許可を出している千の獣を統べる黒を悪い表情で見ている。
それに対してシュドナイも、慣れぬ「悪い顔」で応じている。
「いざとなったら抜け出してでも迷宮攻略へ赴く」という、主との他愛無い約束を想い出して、モフられているストレスも雲散霧消しているシュドナイである。
「それはそうですな。宣言しておられましたし」
溜息交じりにヒイロの言を肯定するセヴァスに、冒険者ギルド全体がどこかほっとした空気に包まれる。
――おかしなことです。世界など今すぐにでも滅ぼせる我が主が、私にとって取るに足りぬ者共にこう思われているのを嬉しく感じるとは……
それでも自身の中に生まれたこの想いは本物なのだろうと、セヴァスはらしくない溜息を一つつく。
どうあれ我が主がやりたいようにやっている限りは、不足などあろうはずもない『執事長』なのである。
「それに三美姫だけで済むとも思えませんしな、こうなってまいりますと」
冒険者を止める気はない宣言と違い、『黒の王』が明確に口にしたわけではない。
だが三美姫にきちんと魅力を感じ、「自分の嫁にしたい」という想いを隠さず行動に移すとなれば、三人で済むとはとても思えぬセヴァスである。
英雄色を好む、という言を信じているわけではない。
自身はもはや「枯れている」とはいえ、世の女性体はそれぞれにしかない魅力を持った者が多いことをセヴァスは知悉しているのだ。
立場上、そういう女性体と接する機会が多くなれば「惚れる」機会も増えようと思うだけだ。
それにセヴァスら下僕にしてみればそれを悪いことだなどと、毛ほども思ってなどいないのだ。
――女性体の者共はわかりませんが。
己より序列上位者である『鳳凰』殿や『真祖』殿が最近「対抗策」と称して『天空城』の大浴場に籠ったり、セヴァス配下の侍女式自動人形たちを動員して新衣装作成や化粧の工夫をしているのを知る身としては、要らぬ溜息も出ようというものだろう。
――人に負けてなるものかと、『九尾』殿や『世界蛇』殿も息巻いておられましたしな……
だがまあよかろうと、セヴァスは思う。
『天使襲来』から次の『世界変革事象』までは、分身体の生涯くらいの時間はある。
その間、いままでの百周からは考えられないほど「平和な時代」を、己ら天空城の下僕らが作り出すこともまた良しだ、と。
それが、『黒の王』の分身体、ヒイロが望むことであれば否やなどあろうはずもない。
――その冒険者、大陸を統べる者。
いずれ己ら『天空城』が『黒の王』と共に辿り着く未来において歴史にそう語られる『冒険者王による平和』を、己が全力を挙げて現出させることを心に誓うセヴァスである。
そしてそれは実現される。
その歴史において、最初期を除いて『天空城』と『黒の王』の名が語られることはない。
「あ、あの、一応私も立候補しておいていいです、か?」
セヴァスの発言を受けて、その美しい顔を真っ赤に染めながら、アーガス島冒険者ギルドトップ3と称された美女の中で残された最後の一人(あとの二人、一人はポルッカの嫁となり、一人はこの半月脳筋ヴォルフと何やらいい感じである)、マリン嬢が勇気ある立候補を宣言する。
予想外の宣言にびっくりした表情のヒイロを、さすがにシュドナイとセヴァスも半目で見つめている。
そして冒険者ギルド内にいる男性陣が、誰が音頭を取ることもなく、声にならない「せーの」と同時に一斉にタイミングを合わせて呪詛の言葉をヒイロに投げつける。
『もげろ!!!』
――さすがにこれを咎めるわけにはいきませんな。
我知らず、数千年ぶりに素直な笑顔を浮かべるセヴァスである。
次話 第六章開始予定です。
できるだけはやく投稿します。
第五章完結です。
ここからのいろいろや、『天使襲来』までの一年間は閑話で入れていきたいと思っています。
第六章はもしかしたら別章扱いにするかもしれません。
主人公変更とかは一切考えていませんが、今までの章のような連続性はないので。
当初予定ではもっとゆっくり書くはずだった「迷宮攻略」「ハクスラ要素」あたりにフォーカスしたいと思っています。
一方で世界構築の結果というか答え合わせを見れるような展開も考えています。
書籍版発売までには必ず投稿開始しますので、よろしくお願いします。
書籍版は2/9発売予定です。できましたらこちらもよろしくお願いします。詳細は下記となります。
https://books.tugikuru.jp/#adv_careful
『ヒイロ』と『黒の王』可愛い(同一人物)





