仲が良いのは良いことだ
すいません。この話も短かったです。
「やっぱり、変態チビジャリはえげつないの。」
「ホントなんよ。とんでもない奴なんよ。」
「良いのよ。あんな奴ら、ちょっとは痛い目に合わなくっちゃ。」
「いや、それでも、先程のは少々やり過ぎだと思うがのう。」
「構わないよ。奴らはもっと酷いことをしてきたに決まってるんだから。自業自得ってもんさ。」
三対二で俺は外道認定だな。
実際問題、あそこまで酷いことをするとは、自分でも思っていなかった。ネグロイドの女の目を抉った時に暗い悦楽のような物が背筋を這い上がって来るのを感じた。
以前、イズモリが言っていた「全チャンネルが開いた。」という言葉が脳裏を過る。
変態度助平かシリアルキラーの影響を受けている可能性はあるな。
犯罪組織との関りをあまり深く持つとヤバいかもしれない。
そう言えば、今日はイズモリ達が静かだな。
何かあったのか気になるが、怖くて聞く気にもならない。
第三副幹人格と第七副幹人格とは、出来れば話したくも、会いたくもない。
リビングには椅子を作っていない。トンナが女の子座をしている膝の上に座り、テーブルに紅茶を再構築する。砂糖をたっぷりと含んだ温かいダージリンだ。
皆の話に答えない俺の様子に、皆が静まり返っている。
「悪かったんよ。別にチビジャリを責めてる訳じゃないんよ。」
アヌヤが口を窄めて、肩を竦めている。
「そ、そうなの。変態チビジャリは変態だから、あれぐらいで丁度良いの。」
ヒャクヤは焦ってフォローにならないフォローを入れてくる。
「我もいつもの主人と違っておるようで、戸惑っただけじゃ。あの者たちの自業自得じゃな。」
珍しくロデムスまでが俺を気遣ってくるが、ロデムスの言葉に俺は頷く。
「そうなんだよな。何だか俺らしくなかったような気がするんだ。」
全員が俺に視線を向ける。
「ズヌークやヘルザース、宿場町でも、結構、酷いことをしたと思ってるんだが、今回のことは俺らしくないような気がする。」
紅茶を一口含む。
全員が、目を逸らすようにして、カップに口をつけるが、オルラだけが俺の頭に手を乗せる。
「気にすることはないよ。お前は、ずっと変わり続けてるんだ。成長しながら、重いものを次から次へと背負い込んでるんだから、自分でも気が付かないような変わり方をするさ。でも、心配しなくても、あたし達が居るんだ。大丈夫だよ。」
オルラの言葉がストンと胸に落ちる。
「そうだね。俺も成長してるんだ。」
トガリは成長している。四十五歳のオッサンの中で一〇歳のトガリは成長を続けているのだ。それに副幹人格が七人も居るのだ。自分の自覚のない意識の変化があってもおかしくはない。
自分の大切な人を本当に大切にすること。
イズモリが言っていた。それが俺の指針になると。
オルラもトンナもアヌヤもヒャクヤもロデムスも俺の羅針盤だ。
「小腹が空いたな。何か食べに行こうか?」
俺の言葉に全員が活気を取り戻す。
やいのやいのと、あの店のケーキが美味しい、食べたことのないケーキ屋に行こうと、途端に煩くなる。
そうだよな。やっぱりこうでなくっちゃ。
俺は騒がしい仲間を見ながら、好ましく感じた。




