ウチが、ウチが一番、ルビーちゃんを上手く使えるの!!
少し短めです。
「いい、うっく、アイ、アイディアだと、ヒック、お、思った、んよっ。」
トンナにも拳骨を落とされ、アヌヤが泣きながら弁解する。
着陸して、巨大お盆から一人ずつ降ろしたのだが、全員が、全員ともガクブル状態だった。
そりゃそうだ。
命の保証のないジェットコースター状態だったんだから、俺もそんなのは絶対にゴメンだ。
地面の上だと、また、他の避難民が取り付きに来るので、避難民を下ろした後は、とにかく航空母艦へと戻ることになり、今は、飛行甲板の上だ。
で、凄い勢いで、トンナがアヌヤに走り寄り、拳骨を一発落したところだ。
「まったく。トガリの手を煩わせるんじゃないよっ!」
いや、トンナ、怒るポイント、そこ違う。
「アヌヤ、良いアイディアかもしれないが、物事を単純に考え過ぎだ。安全性は、最低限でも確保しないと。」
「だ、だからああ、縁の所をおおお、た、高くすればああ、だ、大丈夫ううううう…」
一応は考えてたわけだ。
「でも、お前、元々、お盆で、まともに物を運べないじゃないか。」
「うえええええええええええええええええええっ!」
あ~、うるさい。
なんか、小っさい女の子を泣かしてるみたいで、もう良いかって気になってくる。そう思ってると、良い音をさせて、トンナの拳骨がアヌヤに落とされる。
「いい加減に泣き止みナ!鬱陶しいよ!」
アヌヤが頭を押さえて、必死に声を殺してる。
俺はヒャクヤのルビーちゃんに目をやる。
ヒャクヤは、いまだに竜騎士から降りて来てない。
怒られるってわかってるからだ。
俺はルビーちゃんにニッコリ笑って、ヒャクヤに話し掛ける。
「ヒャクヤ、危ない所をよく頑張ったな。お前も降りて来て、アヌヤに一言いってやれ。」
俺の言葉が終わると同時にルビーちゃんのコックピットハッチが開き、ヒャクヤがご機嫌の顔で、こっちに近付いて来る。
跳ねるような走り方に、俺はイラっとくるが、それは、顔には出さない。
「もう、大変だったの。アヌヤのフォ、ギャン!」
取敢えず一発、拳骨を落とす。
「な、なにをンッギャ!!」
続けてトンナも拳骨を落とす。
「…」
どうやら、声も出せないぐらいに痛かったらしい。
無言のまま、頭を押さえて転げ回ってる。
「ひ、酷いの、騙しのプロフェッショナル隊長なの。」
なんだ、その隊長って。
「酷いの、じゃない。アヌヤが、お盆で人を運ぶなんて無理だって、お前が一番よくわかってるだろう?」
頭を押さえながら、ヒャクヤが口を尖がらせる。
「だって、知らなかったの…」
こいつ、嘘つきやがった。
もう一発、拳骨を落とす。加減無しの一発だ。
「痛いのおおっ!!」
ヒャクヤが俺に大声で抗議するが、ヒャクヤの動きが止まる。
俺が真剣な眼差しで怒っているからだ。
「知らなかっただと?」
ヒャクヤが震えるように首を竦める。
「お前…いつからそんな嘘吐きになった?」
ヒャクヤが視線を逸らせて、口を尖らせる。
「ヒャ、ヒャクヤ!謝んなさい!ね?トガリ、ちゃんと、ヒャクヤに謝らせるからさ。そんなに怒んないで?ね?」
トンナが俺とヒャクヤの間に割って入るが、俺はトンナを押しのけ、られないので、俺がトンナを避けて、ヒャクヤの前に立つ。
「チビジャリ!あたしが悪かったんよ!だから、ヒャクヤのことをそんなに怒らないで欲しいんよ!ゴメンなんよ!」
今度はアヌヤが割って入る。俺はアヌヤを、やっぱり押しのけられなかったので、アヌヤを避けてヒャクヤの前に立つ。何だよ、なんか情けねえな。
「トガリ…」
「うるさいっ!!お前ら!命令だ!俺の邪魔をするな!!」
俺は、コイツらに命令するのが嫌いだ。
だから、さっきもアヌヤに命令しなかった。
俺が命令するのが嫌いだとわかっているからこそ、トンナとアヌヤは押し黙った。
「ヒャクヤ、こっち向け。」
ヒャクヤは、こちらを見ようとしない。いつものお拗ねさんだ。でも、今回のことは許さない。
「ヒャクヤッ!」
俺の怒鳴り声にヒャクヤが肩を跳ね上げる。
「もう一度言うぞ。ヒャクヤ、こっちを向け。」
ゆっくりと拗ねたヒャクヤがこっちを向く。目が挑むような目をしている。
「お前、俺に嘘を吐いたな?」
ヒャクヤは答えない。
「答えろ。嘘を吐いたな?」
「…それがどうしたの…」
ヒャクヤは挑むような目のままだ。
「だって!そう言わないと、怒りんぼマスターはウチを怒るの!!いっつも!いっつも!ウチだけ苛めて!チビリとか!おしっこモラシーヌとか!ウチはアヌヤのお姉ちゃんなのにっ!いっつもアヌヤを先に呼ぶの!!なんでもかんでも!アヌヤ!ヒャクヤと一緒にアレしてくれ!アヌヤ!ヒャクヤを連れて、コレしてくれ!ウチはアヌヤのオマケじゃないの!アヌヤのお姉ちゃんなのっ!!」
「お姉ちゃんなら!お姉ちゃんらしくしろ!!」
俺の怒鳴り声で、ヒャクヤが口を噤む。
「今回の件だって、お前がお姉ちゃんだって言うなら、なんでアヌヤを止めない!アヌヤの金魚の糞みたいになってるのはお前自身の所為だろうが!!」
ヒャクヤが下を向いて涙を溜める。でも、視線を逸らしていない。挑むような視線は、そのままだ。
「それを俺の所為みたいに責任転嫁しやがって!あまつさえ知らなかっただ?!よくもそんなことが言えるな!!」
俺は、飛び上がって、ヒャクヤのカチューシャを毟り取る。
俺がヒャクヤのために作ってやった連なる星々の印だ。ヒャクヤ専用の印だ。
「ルビーちゃんはお前にくれてやる!!そんなに俺のことが嫌いなら、どこへでも好きなところに行っちまえ!!」
俺はそのまま、ヒャクヤに背を向け、霊子バイクの方へと歩き出す。
「ヒャクヤ!早く謝んな!トガリが、あんなこと本気で言うはずがないじゃないか!早く謝るんだよ!!」
「そうなんよ!ヒャクヤが、ちゃんと謝れば、チビジャリだって許してくれるんよ!」
俺が離れたので、トンナとアヌヤがヒャクヤに謝るように促し始める。
俺は霊子バイクのキングシートに座って、踏ん反り返る。
よしよし。とっと謝りに来なさい。そしたら、また、このカチューシャをヒャクヤの頭に付けてやって、慰めてあげるから。
そう思ってると、霊子エンジンの起動音が響いてくる。
「ヒャクヤ!何処に行くんだい!!いい加減にしなよ!」
「ヒャクヤ!降りるんよ!」
あれ?
『このまま、どっかに行っちまうんじゃないか?』
え?
『行くねぇ。俺の呼び掛けにも答えないし、かなり本気っぽいけど?』
嘘。
え?使徒だよね?ヒャクヤって?使徒じゃなかった?あれ?
ルビーちゃんの霊子エンジンの音が遠ざかって行く。
トンナが、俺の元まで走って泣きついてくる。
「トガリィ!どうしよう?!ヒャクヤがどっかに行っちゃったよ?!」
アヌヤが俺の腕を握って揺すりながら泣きつく。
「チビジャリ!ヒャクヤを追い掛けるんよ!お願いなんよ!どうしたらいいんよ?!」
ホント、どうしたらいいんでしょう?
俺は二秒ほど固まって、ヒャクヤを完全に見失った。




